2011年7月9日
東日本大震災の復興に巨額な予算が必要とされている中で、八ッ場ダムをはじめとする全国のダム事業はこれまで通りに進められています。
これは短期的に見ても問題がありますが、長期的に見たとき、わが国の将来にとって、大きな問題であることがより一層明らかになります。
昨年度の国土交通白書(H21年度版)(H22年度版は今年8月の予定)には、次のように書かれています。↓
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h21/hakusho/h22/pdf/kp121000.pdf
34ページ
http://yambasaitama.web.fc2.com/pdf/2011/07/0706-1.pdf
「これまで我が国で蓄積されてきた社会資本ストックは、私たちの日々の生活を支えるとともに、産業活動の基盤となってきた。これらのストックは、高度経済成長期に集中的に整備されており、今後老朽化は急速に進む。図表63は、50年以上経過する社会資本の割合を示したものであるが、現在(2009年)と20年後を比較すると、例えば、道路橋(約8 %→約51%)、水門等河川管理施設(約11%→約51%)、下水道管きょ(約3 %→約22%)、港湾岸壁(約5 %→約48%)などと急増し、今後、維持管理費・更新費が増大することが見込まれる。」
35ページ
http://yambasaitama.web.fc2.com/pdf/2011/07/0706-2.pdf
「図表66は、国土交通省所管の社会資本を対象に、過去の投資実績等を基に今後の維持管理・更新費を推計したものである。今後の投資可能総額の伸びが2010年度以降対前年度比± 0 %で、維持管理・更新に関して今まで通りの対応をした場合は、維持管理・更新費が投資総額に占める割合は2010年度時点で約50%であるが、2037年度時点で投資可能総額を上回る。」
要するに、つくりすぎた社会資本ストックの維持管理と更新に必要な費用が年々膨らんでいき、2037年度にはその費用が投資可能総額を上回り、新しい社会資本投資ができなくなってしまうという話です。
人々の生活を支えていくために必要な新しい社会資本投資は、将来とも続けなければなりません。河川に関しても、洪水時に決壊の危険がある脆弱な堤防が各所にあり、その対策工事が喫緊の課題になっています。
しかし、今までのように野放図に、ダムのような不要不急の公共事業に巨額の投資を続けていくと、将来は生活を支えるための社会資本の投資ができなくなってしまうのです。
今まさに、将来において持続的な社会をつくれるかどうか、そのための賢明な判断が行えるかどうかの瀬戸際にあると言えます。
7月1日付の日経新聞には、わが国の人口推計についての記事が掲載されていました。ここでも、ダムなどのインフラ整備が将来、大きな負担となることが示唆されています。
◆2011年7月1日 日本経済新聞
-社会保障審、人口推計の議論開始 見直し小幅の可能性-
厚生労働省は1日、社会保障審議会の人口部会を開き、将来人口推計の作成に向けた話し合いを始めた。来年1月をめどに推計結果を公表する。
足元で合計特殊出生率が回復しているため、人口推計は上方修正になる公算が大きいが、少子高齢化の傾向は変わらず、見直し幅はわずかにとどまりそうだ。人口推計を踏まえて今後必要な政策のあり方についても報告書などに盛り込むかどうか議論する。
将来人口推計は国勢調査を踏まえ、5年に一度国立社会保障・人口問題研究所が推計する。前回の推計は足元の合計特殊出生率が1.25前後で推移するとの想定だったが、実際は2010年に1.39になるなど回復している。
この効果を織り込むことで、出生数はわずかながら前回推計よりも上昇すると見込まれる。ただ、もともと子どもを生む女性が減っており、出生率の水準自体も非常に低いことから、人口減少のトレンドは前回推計とほとんど変わらない。
会議の席上、厚労省の大塚耕平副大臣は「(人口が減り続けるのに)ダムなどの社会インフラを整備して良いかなど、今後の政策的な留意点を示しても良いのでは」と提案。有識者を中心に、今後人口推計を基にどういった社会像を描くかも議論していく。
—転載終わり—
なお、国土交通省関東地方整備局のホームページに掲載されている「東日本大震災による関東地方整備局管内の直轄河川の被災状況及び復旧状況」についての情報が、さる7月1日に更新されましたので、参考までにお知らせします。国交省はダム予算はそのままにして、第一次補正予算でこれら河川被災箇所の復旧予算をしっかりとっており、焼け太りしているといわれています。
○国土交通省関東地方整備局の記者発表資料
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kyoku_00000327.html
平成23年 07月01日
・平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による河川被災状況[第6報]
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000041403.pdf