高木仁三郎さんと八ッ場ダム

2011年7月11日

 福島原発事故の収束が見通せない中、原子力の大事故の危険性と放射性廃棄物の末路を危惧した核化学者、故高木仁三郎さんの言論活動が今、改めて注目されています。
 さる7月3日には、高木仁三郎さんの人生をわかり易くまとめた番組がテレビ朝日で報道されました。動画がこちらにアップされています。
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http://www.dailymotion.com/video/xjp8gn_yyyyyyyyyyyyyyyyy_shortfilms
 テレビ朝日 サンデーフロントライン 発掘人物秘話 伝説の扉 「反原発のカリスマ 高木仁三郎」

 群馬県前橋市出身の高木仁三郎さんは、2000年に逝去されましたが、亡くなる直前まで執筆に精魂を傾けていた『鳥たちの舞うとき』(工作舎)は、八ッ場ダムをモデルに構想を練られたとされます。高木仁三郎さんのご伴侶であった高木久仁子さんは、市民の視点から専門的批判のできる市民科学者育成基金の設立を、という仁三郎さんのご遺志に沿って設立された「高木仁三郎市民科学基金」の事務局長であるとともに、八ッ場あしたの会のアドヴァイザーでもあります。
 本年5月末に発行したあしたの会の会報にご寄稿くださった巻頭言を全文転載します。

 「原発と八ッ場ダムに共通するもの」
             高木久仁子(高木仁三郎市民科学基金事務局長、八ッ場あしたの会アドヴァイザー)

 「一つの原発の建設は、その他の選択肢をすべて圧殺してしまう。巨大な資本が投入され、地域経済も支配される。電力産業が基幹になり、すべてエネルギーが電力によって支配されるような、巨大権力集中型のエネルギー社会システムを否応なしに生み出していく。人間と自然の関係も一方的になり、人間がなんの権利もないのに、動物や植物に対して絶大な危害を及ぼしていく。…人間と他の生物が共生すべき21世紀に向かっては、そういう人間の側の一方的な押しつけになる技術を減らしていくのが、われわれのなすべきことではないか」は高木仁三郎著『鳥たちの舞うとき』の主人公、草野浩平のO(オー)原発の認可取消を求める裁判での証言です。

 3月11日の巨大地震、とりわけ福島原発震災は、核の巨大エネルギーを制御できなくなった原発の恐ろしさを、私たちに突きつけています。

 東京電力の福島10基の原発も、新潟の柏崎・刈羽7基の原発も、地元の要請で建てられたものではありません。政府も電力会社も、首都圏の電力需要のためと称して、カネの力で長年にわたり地元住民の反対を切り崩し抑え込み、迷惑施設を押しつけて来たのです。

 そこには、八ッ場ダム事業との共通点が見られます。いずれも地元民が求めた事業ではありません。首都圏の電力と水需要のための、政府と利権政治家、原発企業、ゼネコンの利益のための事業です。原発は地域振興に寄与するどころか、結局は自治体の財政悪化や過疎化をもたらし、地元は原発依存から脱出困難なアリ地獄状態です。ウラン、石油、石炭、天然ガス等も水資源も地球上の限られた資源なのですから、需要に応じてむやみに開発できるものではありません。その上、日本では電力需要も、水需要もかつての右肩上がりの時代は終わったのです。

 自然が発する再三の警告を無視し、過酷事故を想定外と決めつけ何らの対策もなしに日本の原子力政策を推進してきた政府、原子力や地震の専門家たちは過酷事故を前にうろたえるばかりです。M9の大地震が現実となった今、八ッ場ダムやダム周辺の付替道路、鉄道、造成地の地盤や湖面橋の安全性、浅間山の噴火の危険等、地元民の安全は果たしてどれほど考慮されているのでしょうか? 一番被害をうけるのは地元です。予想される東京直下型地震に備えるためにも、首都機能の分散は急がれます。一極集中の首都圏のためのダム開発に伴う工事に莫大な予算をつぎ込む愚は早急に改められるべきです。