八ッ場ダムの水没予定地にある川原湯温泉では、8月7日の集中豪雨で土砂災害が発生し、温泉街でも被害がありました。その影響で、観光スポットである足湯や温泉卵をゆでる源泉がしばらく使えなくなっていました。
これは集中豪雨で砂防ダムにつまった流木の撤去に時間がかかったためです。予算がないからと流木の撤去をしぶる営林局に対して、川原湯温泉のホームページでは行政の怠慢を批判する発信が8月29日にあったのですが、その後も状況が改善しないため、当会では9月4日、ホームページを通して、行政の対応を求めました(事務局だよりー「前田武志国交大臣の就任に際して」)。
さらに当会会員である角倉邦良群馬県議(八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会会長)が翌5日、八ッ場ダムの生活再建事業を担当している群馬県特定ダム対策課にヒアリングを行いました。
同課によれば、問題となっている川原湯温泉の砂防ダムは、営林局が管理しているため、群馬県としては地元要望を受けて営林局に対策を求めたのであるが、予算がないとのことであった、という説明でした。この時点では、群馬県が問題解決に積極的に乗り出す気配が見えなかったため、角倉県議は群馬県の姿勢を厳しく問いただし、早期の取り組みを求めました。
以下の記事によれば、この二日後には地元住民と行政(国交省八ッ場ダム工事事務所、長野原町)との話し合いがついたとのことで、翌8日には足湯は暫定再開されました。
八ッ場ダム事業には巨額の予算が投ぜられ、目を見張るような橋やトンネルが次々とつくられています。これらはすべて生活再建関連事業と呼ばれており、一見、地元住民が優遇されているような印象を与えますが、水没予定地の人々の暮らしは実際にはダム計画前、つまり半世紀前の生活基盤そのままで不便を強いられているケースが多いのです。土木技術を駆使したダム関連の巨大な橋脚は、まるでこうした人々の暮らしを威圧するかのように水没予定地にそびえています。
かつて群馬県内でも泉質の良さで人気の高かった川原湯温泉は、観光資源である吾妻渓谷と源泉をダム事業で脅かされ、温泉街の存続すら厳しい状況に追い込まれています。
群馬県は国と共にダム予定地住民の生活再建に責任を負う立場ですが、今回の足湯をめぐる対応のように動きが鈍くては、責任を半ば放棄しているも同然です。
◆2011年9月8日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20110908-OYT8T00073.htm
-川原湯「足湯」1か月ぶり 予算不足国交省など大木撤去―
8月7日に県北部を襲った大雨の影響で使用を中止していた長野原町・川原湯温泉の「足湯」が7日、1か月ぶりに再開した。
使用中止は、背後の治山えん堤に大木などが引っかかり、決壊の恐れが生じたため。しかし、えん堤を所有する吾妻森林管理署は予算不足で大木の撤去に手を付けられず、再開が長引いていた。7日の話し合いで、国土交通省八ッ場ダム工事事務所や町などが代わりに請け負うことで決着。撤去終了までは好天時限定だが、地元では「ようやくめどが立った」と一安心している。
足湯は温泉街で数少ない無料の観光施設。6、7人入れる足湯のほか、約80度と高温のお湯で温泉卵作りが楽しめる。2004年に県が整備し、昨年、町に無償譲渡され、地元の川原湯地区が管理している。
先月7日の大雨で、足湯の背後にある国有林内の二つのえん堤(各高さ約5メートル)に複数の大木が引っかかり、大量の土砂が堆積した。さらに大雨が降れば、決壊して足湯や近接する国土交通省の貯湯タンクを破壊しかねず、観光客の安全確保のため、同地区や町は直後から使用を中止し、同管理署に早期撤去を要望してきた。
しかし、同管理署は一部の流木などは撤去したが、懸案の大木などは「予算の裏付けが出来ない」などとして未着手だった。
写真=川原湯温泉の足湯の規制ロープを外す町職員ら(7日、長野原町で)