八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

吾妻川上流開発事業についてのニュース

2011年10月5日

 9月26日に開かれた国土交通省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」において、八ッ場ダム予定地上流に計画されていた「吾妻川上流開発事業」の中止が報告されました。

 この有識者会議では、これ以外のダム事業ー吉野瀬川ダム(福井県)、河内川ダム(福井県)、玉来ダム(大分県)は推進の報告が出されています。「吾妻川上流開発事業」は中止とされましたが、他のダムとは中止の意味が違います。

 八ッ場ダムが計画されている利根川支流の吾妻川は、上流にある硫黄の山、草津白根山の影響を受ける酸性河川です。八ッ場ダム計画は当初、吾妻川の酸性問題で一旦頓挫しましたが、1960年代に吾妻川上流の中和事業が軌道に乗ったことにより、復活しました。「吾妻川上流総合開発事業」も、八ッ場ダム計画との関連の深い事業です。
 「吾妻川上流総合開発事業」はもともとはダム事業として始まりました。現在の中和事業における品木ダム方式を拡大していくため、石灰液注入箇所を増やし、品木ダムを嵩上げするとともに、さらに吾妻川支流の万座川にダムをつくって、中和生成物の沈澱池にする計画でした。

 ところが、地質面で品木ダムの嵩上げや万座川でのダム建設が困難にあることが分かり、「吾妻川上流総合開発事業」は現在の中和・品木ダム方式をプラント方式に変えることを検討する事業になりました。

 この事業は始まりがダム事業であったので、ダム事業として位置付けられ、民主党政権下のダム検証の対象になりました。しかし、実際にはダム事業ではなくなっているので、今回のダム検証を機会に、ダム事業としては中止し、プラント方式の事業化を目指す事業とすることになりました。

 プラント方式の中和とは、工場の中で中和して生成物を取り出し、それをセメントの原料として使おうというもので、それにより、中和性生物によって堆砂が進む品木ダムの寿命の問題を解決しようというものです。

 プラント方式の中和は、草津の実験プラントで実験が行われてきていますが、まだ実用化のめどは立っていないようです。

◆2011年10月1日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581110010002

 ー吾妻川上流開発 事業中止を決定ー

 吾妻川の水質改善を目的に品木ダム(中之条町)をかさ上げし、上流の万座川にダムを新設する「吾妻川上流総合開発事業」の中止が決まった。国土交通省関東地方整備局が中止の対応方針をまとめ、国交省の有識者会議で報告した。

 この事業は1992年度に実施計画の調査を開始。水質改善とともに発電も目的としていたが、品木ダムのかさ上げには大幅な事業費増加が見込まれることが判明した。八ツ場ダムとともに、政権交代直後に国交相だった前原誠司氏が再検証を指示した事業の一つに含まれた。

 整備局は、代替案として、河川から水をくみ上げて中和処理し、再び河川に戻すプラント方式を提示した。意見聴取を受けた県知事も代替案の速やかな実施を条件に了承していた。