2011年10月19日
9月13日に国交省関東地方整備局では「八ッ場ダムが治水・利水上ベスト」との検証結果を出しましたが、これに対して学者らが「科学的検証になっていない」と声明文を出すことになりました。
声明文についての記者会見は10月26日に国会議員会館で開かれる予定です。この声明に賛同する学者・研究者も相当数にのぼると見られ、記者会見では声明文と共に26日時点での賛同人のリストも公表されるとのことです。
呼びかけ人は以下の方々です。(あいうえお順・敬称略)
今本健博(京都大学名誉教授・河川工学)
宇沢弘文(東京大学名誉教授・経済学)
牛山積(早稲田大学名誉教授・法学)
大熊孝(新潟大学名誉教授・河川工学)
奥西一夫(京都大学名誉教授・防災地形学)
川村晃生(慶応大学教授・環境人文学)
関良基(拓殖大学准教授・森林政策学)
冨永靖徳(お茶の水女子大学名誉教授・物理学)
西薗大実(群馬大学教授・地球環境学)
原科幸彦(東京工業大学教授・社会工学)
湯浅欽史(元都立大学教授・土質力学)
10月26日の記者会見のお知らせはこちらに掲載しています。
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1388
◆毎日新聞 2011年10月15日 15時00分(最終更新 10月15日 15時44分)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111015k0000e040069000c.html
-八ッ場ダム:「建設が最良」に学者10人反論 声明文
八ッ場ダムの建設予定地を視察する前田武志国交相(左)=群馬県長野原町で2011年10月8日、久保玲撮影 建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)について国土交通省関東地方整備局が「コスト面などからダム建設が最良」との結果をまとめたことを受け、河川工学や防災地形学の学者10人が近く、野田佳彦首相や前田武志国交相に検証の抜本的なやり直しを求める声明文を提出する。検証結果について「科学性・客観性が欠如したものと言わざるを得ない」として、公開の場で公正な検証を行うことを求める方針。
声明を出すのは大熊孝・新潟大名誉教授(河川工学)、奥西一夫・京都大名誉教授(防災地形学)、今本博健・京都大名誉教授(河川工学)ら。
関東地整は利根川の治水対策にあたり、今後20~30年で達成可能な毎秒1万7000立方メートルを河川整備計画相当の目標流量に設定。ダム建設に加え四つの代替案を比較検証した結果、コスト面ではダム案が約8300億円で最も安く、10年後の治水効果を一番見込めると判断した。利水面でも必要性があるとした。
これに対し、今本名誉教授は「治水面では科学的な裏付けがないまま、ダムを造ることを前提に目標流量を設定している。八ッ場の洪水調節効果量は少なく、全く役に立たない。利水面も流域自治体の意見を追認しただけで、現状とかけ離れた過大な水需要予測になっている。河川行政に批判的な専門家も入れた第三者機関を設置し、公開の場で検証してほしい」と話す。
関東地整は現在、検証結果について一般から意見を募るパブリックコメントを実施しており、終了後に対応方針案を国交省に報告し、国交相が有識者会議の意見などを踏まえて最終判断する。【樋岡徹也、奥山はるな】
◆2011年10月19日 東京新聞社会面
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20111019/CK2011101902000069.html
-八ッ場ダム建設 「公開の場で再検証を」50人超の学者ー
八ッ場(やんば)ダム(長野原町)を建設することがコスト面などで最良とした国土交通省関東地方整備局の検証結果は科学性や客観性に欠けているとして、
「検証の抜本的なやり直し」を求める声明文を、五十人を超える学者が連名で二十六日に野田佳彦首相や前田武志国交相に提出する。 (伊藤弘喜)
呼び掛け人は、京都大の今本博健名誉教授(河川工学)や東京大の宇沢弘文名誉教授(経済学)、群馬大の西薗大実教授(地球環境学)ら十一人。
声明に賛同する学者は、専門分野を問わず広がりを見せており、四十人を超える見込み。二十六日にリストを公表する。
声明は、水没予定地の住民が移転する代替地の地滑りの危険性や、八ッ場ダムの利水・治水面の必要性をあらためて公開の場で検証することを要求。
東日本大震災並みの大災害や浅間山の噴火の可能性を踏まえることも求める。
今本名誉教授は「従来の河川行政に批判的な専門家も入った第三者機関で公開の場で再検証すべきだ」と話している。
◆2011年10月21日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111021-OYT8T00102.htm
-八ッ場推進・反対綱引き 来月に住民意見聴取 学者ら声明で異議 首相宛て26日にー
八ッ場ダム(長野原町)の再検証を巡り、国土交通省関東地方整備局は20日、検証手続きの一環として、11月6~8日に利根川流域1都5県の住民からの意見聴取を行うと発表した。希望者の抽選は行わない方針で、ダム推進、反対派双方の参加が予想される。26日には、検証手法に異議を唱える学者グループが、野田首相や前田国土交通相に検証のやり直しを求める声明文を提出する予定で、検証のヤマ場を控え、ダムを巡る論議が活発になっている。
意見聴取は、同整備局が「ダム建設が最も有利」と明記した「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」について、1人15分を目安に陳述してもらう形で実施する。会場は、国交省八ッ場ダム工事事務所川原湯総合相談センター(長野原町)、国交省利根川上流河川事務所(埼玉県久喜市)など、群馬、埼玉、千葉の3県に計4か所用意。3日間とも午前10時~午後5時まで時間を確保した。
意見陳述を行うには、所定の応募用紙に必要事項を記入し、郵送、ファクス、電子メールのいずれかで10月29日午後6時までに申し込む必要がある。同整備局のホームページ(http://www.ktr.mlit.go.jp/)で応募方法を紹介しており、問い合わせは、同整備局河川計画課(048・601・3151、内線3616か3641)で受け付ける。
集まった意見は、同整備局から本省への報告に反映される予定で、前田国交相の最終判断の材料の一つになる。ダム推進派の星河由紀子・長野原町議は「反対派がどんなことを言うか聞きたい。みんなと相談して参加するかどうか決めたい」とし、ダム反対派の市民団体「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は「会のホームページで周知し、参加を呼びかけることになると思う」と話している。
一方、「検証は科学性、客観性が欠如している」と主張する学者グループは26日、東京都内で「八ッ場ダムの危険性」と題した勉強会と記者会見を開く。
ダム反対派の河川工学者として知られる今本健博・京大名誉教授や大熊孝・新潟大名誉教授ら11人が呼びかけ人で、今本教授によると、賛同する学者は50人を超える見通し。今本教授は「『ダムに頼らない治水』を目指すはずが、見せかけだけの検証になった。事業主体の整備局が検証すること自体が間違いで、有識者会議のメンバーも学者としての良心を失っているのではないか」と批判している。