八ッ場ダムの「利水」目的に疑問

◆2011年10月19日 毎日新聞朝刊 政治面
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111019ddm002010058000c.html

 -群馬・八ッ場ダム建設:検証「ダム案優位な試算」 利水でも市民団体が疑問ー

 国土交通省関東地方整備局による八ッ場(やんば)ダム(群馬県)の検証では、利水面の検討手法についても問題視する声がある。

 関東地整は検証で、5都県が求める新たな利水策を検討した。ダム案のほかに、別の4案を加え、費用を比べる手法が柱だった。

 その結果、ダム案の費用を約600億円と試算。ほかの4案を約1700億~1兆3000億円と評価し「コストで最も有利な案は『ダム案』」と結論づけた。

 しかしこの手法を疑問視する意見もある。

 例えば、関東地整が約1兆3000億円かかるとした案は、約200キロ先にある静岡県を流れる富士川から水を引く構想だ。ダムに反対する市民団体「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は「高コストの案を出すことで、ダムの優位性を浮き立たせた」と主張する。

 もう一つは「完成までに要する費用」を比べた点だ。八ッ場ダムは総事業費約4600億円のうち約7割を既にかけている。新規事業4案と比べることで割安に見せる「仕掛け」とも映る。

 新たな水がめが必要なほど水需要は伸びるのか、との見方もある。例えば、最も大口の東京都の水需要は減少傾向にある。92年度に617万立方メートルだった1日最大配水量は09年度、2割減の495万立方メートルになった。ところが、関東地整は、都が03年にまとめた2013年の需要予測約600万立方メートルを検証で使っている。

 一方、都水道局は水需要について「異常気象が地球規模で生じており水源の確保は必要だ」と説明している。

 09年9月、前原誠司国土交通相(当時)は建設中か、計画段階のダムの必要性を検証するよう指示した。歴代の国交相は検証の結果、これまでに84ダムのうち10ダムの事業を「継続」と決め、5ダムを「中止」にした。

 中止の5ダムのうち4ダムは地元自治体の事業だったため、国が主体となって検証したのは直轄の七滝ダム(熊本県)だけ。しかし、七滝ダムに関しては03年の時点で水余りの状況になり、地元は新たな水利は不要だと国に伝えていた。【樋岡徹也、奥山はるな】