八ッ場ダム検証に異議、関与の専門家が質問状

2011年10月19日

 国土交通省は今年1月、八ッ場ダム検証に関わりの深い「基本高水」検証を日本学術会議にゆだね、9月にはこれまで国土交通省が採用してきた「基本高水」はおおむね妥当であるとの結論が出た、とされました。
 しかし、「基本高水」の検証を行った日本学術会議の委員から、国交省の手法に疑問を投げかける公開質問状が7月9日付で出されていました。質問書の全文は分科会委員長が国交省に回答を求める要請文(8月25日付)の別紙として、学術会議のホームページに第12回分科会の配布資料として掲載されています。
 ↓ http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/takamizu/pdf/haifusiryou12-2.pdf

 これに対する国交省の回答(8月28日付)も掲載されています。 http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/takamizu/pdf/haifusiryou12-3.pdf

 今朝の新聞報道によれば、公開質問状を提出した委員から、八ッ場ダムの検証は「ダム建設ありきだった」との批判が出ているとのことです。

◆2011年10月19日 毎日新聞政治面
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111019ddm002010058000c.html

 -群馬・八ッ場ダム建設:検証手法に異議 関与の専門家が質問状ー

 建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)について国土交通省関東地方整備局が9月に公表した「ダム建設が最良」との検証結果に対し、検証作業にかかわった専門家から「ダム建設ありきだった」との批判が出ている。民主党政権は事業の必要性を予断なく検討するとしてきたが、「国交省のお手盛り」との指摘もあり、検証の手法が問われそうだ。

 「なすべき計画が先にあって、それを根拠に決めている。(自分たちに)依頼する必要があったのか」。日本学術会議の検証に関する分科会委員を務めた京都大学の谷誠教授(森林水文学)は8月下旬、国交省に質問状を送った。

 治水計画の根拠となる利根川の基本高水(200年に1回の大雨で基準地点を1秒間に流れる水量)について、見直し過程で算出の根拠を確認できないことが分かり、同省は省内で再試算した「2万1100立方メートル」という数字について、学術会議に検証を依頼。6月に「妥当」との回答を得た。この数字は利根川で戦後最大の洪水となったカスリーン台風(1947年)時の流量が基にされている。

 しかし関東地整はこの回答が出た直後、八ッ場ダムを中心とする進行中の事業を進めることで達成可能な「1万7000立方メートル」を目標と設定した。谷教授がその根拠をただしたところ、国交省は「2万1100立方メートルの洪水対策は今後20~30年間では不可能」と回答。谷教授は「これで予断なき検証と言えるのか」と批判する。

 2万1100立方メートルから差し引かれた流量はどのように算出されたのか。国側は「カスリーン台風時は上流部で氾濫などがあり、基準地点の流量が相当減ったと推定される」と説明する。分科会のヒアリングに招かれた大熊孝・新潟大名誉教授(河川工学)は「そのような大規模氾濫を記録する資料はない」と指摘。「2万1100立方メートルの水害に備えるならば、新たにダムを10カ所以上造らなければならない。ダムに頼らない治水を目指すべきだ」と話す。

 五十嵐敬喜・法政大教授(公共事業論)は「川辺川ダム(熊本県)などでは賛否双方が公開の場で議論したが、今回の検証過程は市民の目が入っていないことが問題だ」と指摘する。【樋岡徹也、奥山はるな】