八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム検証のやり直し求める学者声明記者発表

2011年10月28日

 さる10月26日、参議院議員会館において科学者らによる「八ッ場ダム検証の抜本的なやり直しを求める求める声明」の記者発表がありました。
 声明文、呼びかけ人、賛同人についてはこちらに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1402

 関連記事を転載します。

◆2011年10月27日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111027k0000m040074000c.html

 -八ッ場ダム:建設最良の検証結果に学者11人異議ー

 建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)について国土交通省関東地方整備局が「コスト面などからダム建設が最良」との検証結果をまとめたことに関し、河川工学や環境人文学などの学者11人が26日、「科学性・客観性が欠如したものと言わざるを得ない」として抜本的なやり直しを求める声明を発表した。

 声明を出したのは大熊孝新潟大名誉教授(河川工学)、今本博健京都大名誉教授(同)、川村晃生慶応大教授(環境人文学)ら。賛同者も66人に上る。声明文は近く、野田佳彦首相と前田武志国交相に提出する。

 関東地整は、ダム建設に加え四つの代替案を比較検証した結果を9月13日に発表。コスト面ではダム案が約8300億円で最も安く、10年後の治水効果を一番見込めると判断した。利水面でも必要性があるとした。

 これに対し、声明で川村教授らは「ダムの効果を過大に評価した上での代替案との比較しか行っておらず、本質的な議論は皆無。水需要の減少傾向が明らかであるにもかかわらず、現実と乖離(かいり)したデータを用いての検証は科学的と言えるはずがない」と指摘。第三者機関を設置し、従来の河川行政に批判的な専門家も加えて公開の場で検証することを要請した。【樋岡徹也】

◆2011年10月27日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581110270001

 ーやり直し求め声明文 八ツ場ダム再検証ー

 八ツ場ダムの再検証をめぐり、全国の学者11人が26日、国にやり直しを求める声明文を公表した。前田武志国土交通相は、年内にも建設是非を最終判断する見通しだが、再検証の中身や進め方に対し、賛否両派から反発が強まっている。

 見直し派の学者11人は26日、東京都内で記者会見して声明文を公表。「科学性・客観性が欠如している」として、第三者機関での再検証やり直しを求めた。別に学者66人も賛同。野田佳彦首相と前田国交相に近く提出するという。

 八ツ場ダムの再検証では、整備局が9月13日に代替案と比較して「八ツ場が最善」との総合評価を公表。前田国交相は8日の県内視察で、来年度予算編成に間に合うよう判断する意向を示した。だが、検証手続きのほか、政府・民主三役会議の関与といった不透明な要素が多い。

 声明文は、水需要の減少を無視し、非現実的な代替案との比較しかしていない▽カスリーン台風(級の)豪雨に洪水調節効果がないことを認識しているにもかかわらず検証していない▽国内有数の活火山である浅間山と草津白根山といった災害対策が不問の3点をあげ、総合評価を批判した。

 会見した川村晃生・慶大教授は「国交省は議論を密室でやって結果だけ公表している。ダム推進の暴走を許してはいけない」と強調。冨永靖徳・お茶の水女子大名誉教授は「ダム建設が自己目的化した検証は科学的でない」と主張した。

 呼びかけ人は、国土交通相の諮問機関「淀川水系流域委員会」委員長をつとめた今本博健・京大名誉教授(河川工学)ら各分野の一線の研究者たちだ。

 今本教授は、朝日新聞の取材に「再検証の枠組みをつくった国交省の有識者会議は、河川局(当時)の役人の言いなりで動くダム推進の学者ばかり」と批判。「八ツ場の再検証結果は、日本の治水の未来を決める。賛成・反対・中立すべての学者を入れて検証をやり直すべきだ」と訴える。
     ◇

 大沢正明知事は26日、国交省関東地方整備局の総合評価について「客観的で妥当だと考えている」と述べた。学者の批判の動きについても「科学的に行われた検証に対し、さらに科学的な検証を加える必要はないのではないか」とした。定例記者会見で報道陣の質問に答えた。

     ◇
 「八ツ場ダムの再検証は何をやっているのか、意味が分からない」

 長野原町川原湯地区のダム対策委員長をつとめる老舗旅館・山木館の樋田洋二さん(64)は、国交省の再検証を批判する。

 同省関東地方整備局は11月6日から3日間、関係住民の意見聴取を地元で行うが、対策委の役員は参加しない予定という。水没5地区でつくる連合対策委員会の幹部も不参加の見込みだ。水没5地区は、長い意見対立を経て、大半が賛成派になったとされる。町幹部は「地元住民の不参加は国に原因がある」と言う。

 意見聴取に参加するには、応募用紙を入手し、意見の概要を記述するといった事前手続きが必要だ。この町幹部には「高齢者が多い地元住民には、ハードルが高すぎる」と映る。

 2009年9月、国交相だった前原誠司氏の「中止宣言」で始まったダムの再検証で、民主党政権や国交省に対する地元の不信感が生まれた。再検証でも過程説明がなく、怒りが募っている。

 整備局は再検証のパブリックコメント(国民の意見)の募集に際し、300ページ余りある検討報告書だけを公表。見直し派から「必要な資料が探せない」「嫌がらせだ」と批判を受けた後、簡易版を公表した。賛否両派から不満が出る現状について、進め方に問題があるとの声が出ている。(小林誠一)

◆2011年10月27日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111027-OYT8T00022.htm

 -八ッ場ダム 学者「検証、科学性ない」 知事反論「追加検証必要ない」ー

 八ッ場ダム(長野原町)の再検証を巡り、国土交通省関東地方整備局の検証手法に異議を唱える学者有志が26日、都内で記者会見を開き、「八ッ場ダム検証の抜本的なやり見直しを求める声明」を発表した。

 声明への賛同者は計77人。河川工学など理工系の専門家のほか、文学や政治学などの学者も名前を連ねており、野田首相と前田国交相に声明文の提出を申し入れている。

 声明文では、同整備局の検証について「予断なき検証とは程遠く、科学性・客観性が欠如したものと言わざるを得ない」と批判。

 理由として、〈1〉利水について、水需要の減少傾向を無視〈2〉治水について、八ッ場ダムの効果を過大に評価〈3〉浅間山大噴火による泥流の影響を考慮せず、東日本大震災のような巨大地震にダム本体が耐えられるか議論していない――などを挙げた。

 その上で、第三者機関を設置し、ダムに批判的な専門家を交えて検証をやり直すよう要求した。記者会見した川村晃生(てるお)・慶大教授(環境人文学)は「どちらが正しいか互いに理解するまで議論し合うべきだ」と訴えた。

 こうした動きに対し、大沢知事は同日の定例記者会見で「検証は科学的に行われた。さらに検証を加える必要はない」と批判した。

 一方、国交省は同日の衆院国土交通委員会で、同整備局から検証内容の報告を受ける時期について、11月末から12月上旬になるとの見通しを示した。前田国交相の最終判断の前に、震災を踏まえた検証を新たに実施し、有識者会議の判断を仰ぐため、結論は来年度の政府予算編成作業が大詰めを迎える12月中旬までずれ込む可能性がある。

◆2011年10月28日 東京新聞群馬版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20111027/CK2011102702000088.html

 -八ッ場ダム検証 やり直し求め声明 学者グループ「科学性、客観性が欠如」ー

 八ッ場(やんば)ダムを建設する案が代替案より有利とした国土交通省関東地方整備局の検証結果について、検証の抜本的なやり直しを求める声明を学者グループが二十六日発表した。 (伊藤弘喜)

 声明は「八ッ場ダムの検証過程は予断なき検証とは程遠く、科学性・客観性が欠如したもの」と批判。

やり直しを求める理由に(1)水需要の減少傾向を無視している(2)(ダムの)洪水調節効果を過大評価している(3)ダム本体や周辺で懸念されている災害対策が不問-を挙げた。

 グループは、慶応大の川村晃生教授(環境人文学)や京都大の今本博健名誉教授(河川工学)ら十一人が呼び掛け人。今月初旬から賛同者を募ったところ、二十六日現在で学者六十六人が集まった。

 この日、川村教授含め三人の呼び掛け人が参議院議員会館(東京)で会見した。野田佳彦首相と前田武志国交相に近く声明を提出する。関係都県に提出することも「ありうる」とした。