八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場検証に関する利根川流域住民公聴会

2011年10月21日

 昨日、国土交通省関東地方整備局は、八ッ場ダム検証について利根川流域住民を対象とした公聴会を実施することを発表しました。

 これは、さる9月に同局が公表した「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」についての意見を聴くものです。「八ッ場ダム・・・報告書(素案)」は、「治水利水の上で、八ッ場ダムがベスト」という同局の意見をまとめたものです。
 八ッ場ダムを推進してきた同局が、共同で事業を進めてきた関係都県の意見を聴いてまとめた「八ッ場ダム・・・検討報告書(素案)」は、「お手盛りの検証」とか「これまでダム推進の理由としてきた同局の意見をまとめるのになぜ1年もかかったのか」などと批判されています。
 さらに様式からして典型的なお役所文書で、あまりにページ数が多く、わかりにくいと各方面で評判が悪かったからか、昨日、概要版が公表されました。

 それでも50ページ余りもあって決して一般的な読みやすい文書ではなく、↓
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000045652.pdf

 16ページの巻末資料もついていますが、↓
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000045653.pdf

 以下の元版とくらべると、少しはマシかもしれません。
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000184.html

 公聴会については、同局のホームページに詳しい説明が載っています。
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000185.html

 以下、一部抜粋です。

●「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)」に対する関係住民の意見聴取

▼日程:11月6、7,8日の三日間、

▼会場:
1.水辺交流センター(千葉県香取市)
2.川原湯温泉駅前の国交省相談センター
3.さいたま新都心合同庁舎
4.国交省利根川上流河川事務所

*意見発表の希望者は、10月29日必着で応募用紙を提出。

【応募用紙の提出先】
国交省関東地方整備局 河川部河川計画課
「八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)に対する意見聴取」事務局
 ①郵送の場合 〒330-9724 埼玉県さいたま市中央区新都心2-1
 ②ファックスの場合 048-600-1378
 ③メールの場合 yambadam-iken@ktr.mlit.go.jp
     件名に「意見発表応募用紙」と記載

【問い合わせ】
国土交通省関東地方整備局 河川部河川計画課(藤田 又は 内田)
TEL048-601-3151(内線3616,3641)

—転載終わり—

 9月に関東地方整備局が「八ッ場ダムがベスト」という案を公表した時は、これを歓迎する関係都県知事の声もマスコミで大きく報道され、八ッ場ダム建設にすぐにもゴーサインが出されるようなイメージが先行しましたが、行政内部だけで作業が行われた検証結果については、関係住民の意見を聴くというステップがあらかじめ決まっていました。
 すでに募集が始まっているパブリックコメント(パブコメ)、公聴会はいずれも検証作業に予定されていた手続きです。これらも国交省関東地方整備局みずからが募集や調整を行うものですから、マスコミの多くは「結論ありき」と見たのかもしれませんし、「どうせガス抜きだろう」とか「また推進派を大量動員してアリバイ作りをするのだろう」とも言われていますが、黙っていれば「八ッ場ダムはベスト」という同局の案を容認したことになります。
 八ッ場ダムの推進派は、集会などでしきりに関東地方整備局の案に賛意を表明するよう呼び掛けているとのことですから、反対意見を持つ人も意見表明をする機会を生かす必要があるでしょう。

 公聴会は文字通り公開で行われ、希望者は傍聴できるとのことですが、詳細の公表は意見募集が終わってからということです。仕事や生活を抱えている流域住民を対象とする公聴会の傍聴について、直前まで詳細を公表しないというのも、いかにもお役所仕事です。
 関西の淀川流域では、10年以上前から国交省近畿地方整備局自らが流域住民の意見を幅広く聴く姿勢を打ち出し、「淀川方式」と呼ばれる河川行政の改革が試みられてきました。その後、守旧派官僚の巻き返しで、関西も決して改革が順調に進んでいるわけではありませんが、霞が関のおひざ元である関東の遅れぶりは、淀川とはくらべものにならないほど酷いものです。
 行政の都合で流域住民が分断され、下流の「受益者」のために上流が「犠牲者」となることが当たり前とされてきたダム計画を、今こそ見直す時です。