2011年11月21日
本日、国交省関東地方整備局が八ッ場ダム検証の「検討の場」において、「八ッ場ダム事業の継続、本体工事の再開方針」を提示し、利根川流域一都五県の幹事らがこれを了承するというセレモニーが行われました。
ダム推進を目指してきた国交省と一都五県にとっては、予定通りの筋書きです。9月にも同様のセレモニーが報道されました。その後、ダムへの批判が続出した公聴会、パブリックコメントを経ても、行政の方針は何ら影響を受けなかったというのが、今日のセレモニーの意味するところです。
ニュースの内容を見ると、国交省側はダムを完成させるには事業費が予定より増大し、工期も延長になると言っているのに、一都五県はこれまでの事業費と工期でダムを完成させろと要求しているという、互いに矛盾した主張をしています。
八ッ場ダムは年内にも結論が出ると言われていますが、ゴーサインの結論が出たとしても、実は事態は何も変わりません。「八ッ場ダム中止」を選挙公約に掲げた民主党政権が誕生しても、ダム関連事業はこれまで通り、関東地方整備局によって進められてきたからです。少なくともダム行政においては、これまでのところ与党は政治権力を全く行使できていません。
この間、もともとのダム計画に無理があるという八ッ場ダム事業が抱える問題は、殆ど俎上に乗らず、ひたすら国と関係都県の官僚体制による組織防衛と、八ッ場ダムを政局として利用しようとする旧政権のアピールばかりが目立ちました。
手を携えてダム行政を進めてきた国交省関東地方整備局と利根川流域一都五県が「ダム本体工事の着工」を目指すのは当然のことですが、問題は政治判断がどうなるかということです。
「ダム事業の中止」と「ダム予定地住民の生活再建のための法整備」を国民に約束した民主党政権ですが、政策実現能力には他のテーマでも疑問符がついています。普天間やTPPのように外圧という言い訳も成り立たない「八ッ場ダム」は、官僚組織と自民党のご機嫌取りーつまり政権維持が自己目的化した議員かどうかのリトマス紙になりそうです。
特に埼玉県では、自民党県議に頭の上がらない上田知事らの働き掛けにより、民主党系の国会議員、県会議員らの大勢が早々と白旗を掲げているとされます。先頃行われた公聴会、パブリックコメントにおいても、「ダム推進」の意見が埼玉県のみから大量に出されたという異常な状況が明らかになっています。
こうした中、民主党内では「八ッ場ダムの分科会」が開催されるなど、八ッ場ダムをめぐる党内の様々な声がニュースで取り沙汰さています。政党や議員への評価は、次の総選挙における有権者の投票行動で明らかになるでしょう。
◆2011年11月21日 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111121/k10014099371000.html
-八ッ場ダム“建設継続が妥当”-
群馬県の八ッ場ダムが必要かどうかを検証する検討会が開かれ、国土交通省関東地方整備局は「ダム建設を継続するのが妥当」という対応方針の案を初めて示しました。今後、この方針は国土交通省に報告され、大臣が年内をめどに最終的な結論を出すことになります。
さいたま市で開かれた21日の検討会には、利根川流域の1都5県の担当者が参加しました。八ッ場ダムは、全国各地の82のダムとともに、流域の治水と利水の対策を、ダムを建設する場合とほかの方法で行う場合をコストを最重視して比較・検証する作業が行われ、「ダムを建設したほうが総合的に優位性が高い」という評価結果がことし9月に示されました。この評価結果と、地域住民や学識経験者からの意見を踏まえ、関東地方整備局は「ダム建設を継続するのが妥当」という対応方針の案をまとめ、21日の検討会で初めて示しました。検討会の中で、埼玉県の担当者は「基本計画どおり平成27年度に完成できるように、大臣は早く結論を出してほしい」と話しました。関東地方整備局は、近くこの対応方針を決定したうえで国土交通省に報告し、有識者会議の審議を経て、前田大臣が年内をめどに最終的な結論を出すことになります。
国土交通省関東地方整備局が「ダム建設を継続するのが妥当」という対応方針の案を初めて示したことについて、群馬県の笹森秀樹県土整備部長は「判断は妥当だと思う。国土交通大臣が早く本体工事の着工を決定し、コストを縮減するなどして、計画どおり、平成27年度中に完成できるようにしてほしい」と述べ、ダム本体工事の早期着工を求める考えを示しました。また、建設中止の方針が示されてから2年余りが経過したことについて「住民にとってみれば、非常にむだな時間だった」と述べ、国の対応に不満を示しました。
◆2011年11月21日 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111121/k10014102471000.html
-民主 八ッ場ダム継続案に批判ー
群馬県の八ッ場ダムについて、国土交通省関東地方整備局が「建設を継続するのが妥当」という対応方針の案をまとめたのに対し、21日に開かれた民主党の分科会では、出席した議員から「継続とするには説明が不十分だ」などと批判的な意見が相次ぎました。
国土交通省関東地方整備局は、21日、八ッ場ダムについて「建設を継続するのが妥当」という対応方針の案を示しました。これを受けて、民主党の分科会が開かれ、国土交通省側から説明を受けたあと、議論が行われました。松崎哲久座長は、分科会後の記者会見で「ダム建設の継続を党や政府の方針するには、建設の中止を求める側を納得させる内容が盛り込まれておらず、もっと十分な説明が必要だ」として、対応方針の案に批判的な意見が相次いだことを明らかにしました。分科会は、24日も会合を開き、建設継続の判断の基になった利根川流域の自治体の水の需要予測が妥当かどうかや、ダムを建設すると周辺で地すべりが起きやすくなるという意見があることに対する対応が十分かどうかなどを巡って、改めて議論を行うことになりました。この問題で、前田国土交通大臣は、年内をめどに最終的な結論を出す考えを示しており、民主党としては分科会での議論を踏まえて対応を決めることにしています。
◆2011年11月21日 時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2011112100844
-八ツ場ダム、建設容認=輿石民主幹事長ー
民主党の輿石東幹事長は21日の記者会見で、2009年衆院選マニフェスト(政権公約)で中止と明記された八ツ場ダム(群馬県長野原町)に関し、国土交通省関東地方整備局が建設を最も有利とする対応方針案を示したことについて「国交省の一つの見解として、前田武志国交相を中心にそういう結論を出したということになる。それに対し、党が一つ一つ異議を唱える話でない」と述べ、容認する姿勢を示した。
◆2011年11月21日 日本経済新聞
http://p.tl/YDPH
-八ツ場ダム建設、民主党は静観 輿石幹事長ー
民主党の輿石東幹事長は21日の記者会見で、国土交通省関東地方整備局が八ツ場ダムの事業継続を妥当とする方針をまとめたことに「前田武志国交相を中心にそういう結論を出した。党が一つ一つ異議を唱える話でない」と述べた。一方、藤村修官房長官は同日の記者会見で「地方段階でのとりまとめだ。今の時点で方向付けたということでは全くない」と述べ、最終決定ではないとの認識を示した。
◆2011年11月21日 日本経済新聞
http://p.tl/Ve7E
-八ツ場の事業継続、最終決定ではない 官房長官ー
藤村修官房長官は21日の記者会見で、国土交通省関東地方整備局が八ツ場ダム(群馬県長野原町)の事業継続を妥当とする方針を関係自治体に提示したことに関して「地方段階でのとりまとめだ。今の時点で方向付けたということでは全くない」と述べ、最終決定ではないとの認識を示した。同整備局は自治体の意見を踏まえて報告書を作成し、国交省本省に提出する予定。前田武志国交相が年内に最終判断する見通しだ。
◆2011年11月21日 日本経済新聞
http://p.tl/Khhq
ー国交省、年内に八ツ場ダム最終判断 整備局は建設続行方針ー
八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設の是非をめぐり、国土交通省関東地方整備局は21日、「建設の続行が妥当」とする方針案を公表した。
月内にも本省に報告書を提出。前田武志国交相が年内に最終判断を下す見通し。民主党内には建設再開への反発も根強く、政府・与党間の調整は難航しそうだ。
民主党は2009年の総選挙で八ツ場ダムの建設中止を政権公約の目玉の一つに掲げた。しかし10年秋に馬淵澄夫国交相(当時)が「建設中止」の棚上げを表明。今年10月に前田国交相が「12年度予算案に反映できるよう最大限努力する」と述べ、年内に結論を出す考えを示した。
政権交代後、国交省は八ツ場を含む83のダム事業の必要性を検証している。これまで最終判断を下した19のダムのうち、地方整備局や自治体の判断が本省での検討で覆った例はない。
ただ、この「既定路線」に八ツ場ダムを乗せると政権公約の取り下げとなるため民主党は警戒感を強めている。同日開いた党の「八ツ場ダム問題分科会」では、「建設中止派を納得させるだけの説明がない」と原案を批判する声が相次いだ。
前田国交相は省内や分科会の議論を踏まえて対応を決める方針だが、9月に藤村修官房長官が「政府・民主三役会議で具体的に決める」と発言するなど、今後の手続きには不透明さが残っている。
◆2011年11月22日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20111122-OYT8T00026.htm
-整備局八ッ場「継続」 県・地元歓迎 政府は冷静 官房長官「方向づけ、全くない」ー
八ッ場ダム(長野原町)の再検証を巡り、検証主体の国土交通省関東地方整備局が21日に示した検証報告の案は「建設継続が妥当」だった。初めて明確に示された道筋を、県や地元は評価したが、政府側は「途中の段階」と冷静な反応。建設反対派は、中止をマニフェストに掲げている民主党サイドによる巻き返しを期待しており、前田国交相の最終判断に向けて、激しい綱引きが予想される。
同日、さいたま市の同整備局で開かれた、関係自治体と国が協議する「検討の場」幹事会。同整備局は、「原案の案」と断りを入れた上で、「総合的な評価の結果としては、最も有利な案は現行計画案(八ッ場ダム案)」などと記した検証報告書案を示した。
また、八ッ場ダムに付随して建設される県営の水力発電所を巡り、下流の東京電力の水力発電所も含めた総発電量の試算を公表。ダムが水を使うことで、東電の発電量が年間1400万キロ・ワット減少すると明らかにした。反対派は年間2億2400万キロ・ワットの発電量低下が懸念され、数百億円規模の補償を東電に行う必要があると主張しているが、同整備局は「補償費は残事業費に含まれる」とした。
国民からの意見募集では、「事業主体が検証するのはおかしい」「水需要予測が過大」など、多くの疑問も寄せられていたが、同整備局は「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」が決めた検証ルールに従って行った結果と回答し、検証の正当性を強調した。
同日の全国知事会議に出席した大沢知事は「妥当な判断と高く評価する。検証結果を最大限に尊重し、国交相は一刻も早く対応を」と要請したが、前田国交相は「ご迷惑をかけて申し訳ない。大震災の教訓を有識者会議に評価してもらった後で対応したい」と述べるにとどまった。
高山欣也・長野原町長は「信じていたが、ホッとした。国交相が推進の結論を出すことを願っている」と語り、萩原昭朗・水没関係5地区連合対策委員長は「当たり前の結果だが、八ッ場は民主党の目玉政策。(中止を)撤回できるのか、まだ安心できない」と不安ものぞかせた。
一方、藤村官房長官は同日の定例記者会見で「まだ、整備局の取りまとめの段階。何かを方向づけたということでは全くない」と指摘。
同日開かれた民主党の国土交通部門会議の八ッ場ダム問題分科会では、「検証は不十分」との声が続出しており、反対派の「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」会長の角倉邦良県議は「本省に報告が上がってからが肝心で、民主党国会議員への働きかけを強めたい」としている。
◆2011年11月22日 上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/news/a/2011/11/22/news01.htm
-八ツ場「建設継続」 6都県に方針案示すー
国交省整備局 八ツ場ダム建設の是非を決める検証作業で、国土交通省関東地方整備局は21日、本県など関係6都県と意見を交わす「検討の場」第10回幹事会を開き、国交省本省に報告する対応方針案を「建設継続」とする考えを初めて示した。今後、関係自治体の首長から意見聴取や公共事業の妥当性を民間有識者が判断する事業評価監視委員会の審査を経て正式な案として決定する。
同整備局は、作成中の検討報告書原案の中で対応方針案を「継続が妥当」としていることを説明。理由としてコスト、実現性などからダム建設を「最も有利」とした9月の総合評価、洪水被害軽減などで建設・維持管理費の6・3倍の便益があるとした費用対効果を挙げた。
ダム建設後、貯水量を維持するために吾妻川流域の東京電力の水力発電所6カ所の取水が一部制限され、一時的に発電量が減る可能性についても試算。6発電所の発電量は1時間当たり5億7700万キロワットから5億6300万キロワットに減るが、本県がダム直下に設置予定の水力発電所の4100万キロワットを加えると、逆に6億400万キロワットに増えるとした。建設見直し派は「発電量が大幅に減る」と指摘していた。
幹事会に出席した6都県の担当部長らは「妥当な判断」と評価し、ダム本体の早期建設を要望した。大沢正明知事は取材に対し、「考えていた通りの方向性が出て非常に喜んでいる。前田大臣はこの方針を堅持してほしい」と述べた。
藤村修官房長官は21日の記者会見で、「まだ地方での取りまとめの段階だ。今の時点で方向付けたということでは全くない」とし、政府としての最終決定ではないとの認識を強調した。
前田武志国交相は整備局から報告を受けた後、ダムの検証手順を定めた有識者会議の意見などを踏まえ、年内に建設の是非を最終判断する考えを示している。
2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)で建設中止を掲げた民主党の国会議員やダム見直しを求める市民団体は、整備局の検証手法などに対する批判を強めている。
◆2011年11月22日 下野新聞
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20111121/664189
-八ツ場ダム「事業継続が妥当」 関東地方整備局が方針ー
八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設の是非をめぐる検証で、国土交通省関東地方整備局は21日、さいたま市内で「検討の場・第10回幹事会」を開き、本県を含む参画6都県に「事業の継続が妥当」との方針を示した。近く本省に報告書を提出し、年内に前田武志国交相が最終判断する見通し。同整備局が「継続」を打ち出したことで、建設中止を明記した民主党マニフェスト(政権公約)との整合性が問われそうだ。
同整備局はこれまで、「洪水調節」「新規利水」「流水の正常な機能の維持」について、ダム建設と複数の代替案を作成。完成までのコストの安さや早期実現性などを重視し、比較検討した。9月にはダム建設が「最も有利」とする検証結果を提示。今回の方針は関係住民や学識経験者からの意見聴取、パブリックコメントを踏まえ判断した。
幹事会では6都県の担当者から「ダム事業継続の結果は当然。速やかに対応方針を決定し、(計画通り)2015年度の完成に向け全力を尽くしてもらいたい」(栃木県)、「検証に費やした2年間の遅れを取り戻すため、予算を集中投下してほしい」(埼玉県)など早期完成を求める意見が相次いだ。
今後は関係自治体の首長や同整備局の事業評価監視委員会の意見を聞いた上で、異論が無ければ事業継続の方針を盛り込んだ報告書を本省に提出。本省の有識者会議で検証手順が適切だったがどうかを審議する。最終的には前田国交相が判断する。
一連のダム論争の象徴となっている八ツ場ダムの最終判断は、同じく凍結状態にある思川開発(南摩ダム、鹿沼市)への影響も見込まれ、成り行きが注目される。
◆2011年11月22日 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111122/stt11112219340014-n1.htm
-前原氏、八ツ場ダム「中止」強調 「継続容認」の輿石氏発言は「そうではない」ー
民主党の前原誠司政調会長は22日の記者会見で、群馬県の八ツ場ダム建設計画を「継続が妥当」とした国土交通省関東地方整備局に対する党内の異論に輿石東幹事長が不快感を示したことについて「私はそうは思っていない」と述べ、輿石氏は今後の党内論議を否定してはいないとの見解を示した。
前原氏は八ツ場ダムについて「今までの治水計画はふんだんにお金がある中で作られてきた。それがもうできる状況ではなくなった」と重ねて事業を中止すべきだとの見解を示した。
関東地方整備局の対応方針には「国交省本省が考えをまとめたわけではない」と指摘。その上で「党として地方整備局の議論をチェックしなければならない」と語り、党国交部門会議の分科会などで監視を強める考えを示した。