八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

埼玉の”やらせ”パブコメ事件

 八ッ場ダムのパブリックコメントで埼玉県の自民党県議が音頭をとった”やらせ”が発覚し、マスコミ各社が取り上げています。
 
 パブコメは10月6日から11月4日の期間、国交省関東地方整備局がまとめた八ッ場ダムの検証結果の素案について、一般国民の意見聴取を目的に実施されたものです。同局の素案は、八ッ場ダム建設を求める内容でした。〆切り間際に大量の意見が一斉に届いたことで、当初からパブコメの中身が注目されていました。
 11月25日に関東地方整備局のホームページに掲載された「パブリックコメントの結果」によれば、全体の96%以上が埼玉県民からの提出で、しかも同じく96%以上が同一の印刷文にただ署名しただけの代物であることがわかりました。

 関東地方整備局のホームページでは、提出意見の原紙も見られます。

 国交省関東地方整備局のホームページ「パブリックコメントの結果」 
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000190.html

 同一意見の印刷に署名しただけのパブコメ原紙
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000049954.pdf

 一般意見が記入されたパブコメ原紙
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000049953.pdf

 上記の一般意見のパブコメを見ると、圧倒的多数が八ッ場ダム建設を求める関東地方整備局の結論に怒りや批判を表明していることがわかります。

 パブコメと並行して実施された公聴会においても、八ッ場ダムの受益者とされる地域では、東京都、千葉県、茨城県からは賛成意見が一つも出ず、県関係者が埼玉県の日頃の見解をそのまま述べた埼玉県民からのみ賛成意見が出されるという異常な状況でした。このことは、国交省、関係都県の多額の広報費、世論工作にも関わらず、受益都県とされる地域での一般住民からの意見聴取では、”やらせ”でもやらなければ、殆どが八ッ場ダムへの反対意見で占められたことを示唆しています。

 東京新聞等の報道によれば、埼玉県民からの”やらせ”パブコメは、佐久間実県議が埼玉県の八ッ場ダム推進議連の会長名で1人100名のノルマを課して署名を呼びかけたもので、あらかじめ賛成意見を印刷したパブコメ用紙の配布は、埼玉県が後援した推進議連の大会で行われました。また、パブコメ用紙の作成、とりまとめには埼玉県職員が勤める県議会事務局が関わっていたことも明らかになっています。埼玉県がこれまで主張してきた意見が印刷されていたことから見ても、埼玉県が”やらせ”に関与した疑いが濃厚ですが、埼玉県はこれを認めておらず、国交省も問題ないとしています。

 埼玉県における今回の”やらせ”パブコメの首謀者である佐久間実県議は、これまでに受託収賄罪の逮捕歴、公費によるタイ売春ツアーなどがマスコミを賑わせたこともある人物ですが、現在も埼玉県政において隠然たる力を誇っているといわれます。
 佐久間県議のホームページでは、上田知事が顔写真入りで推薦文を寄せており、佐久間県議との親密な関係を誇示しているかのようです。
 ↓
 http://www.sakumaminoru.com/goaisatsu.html
 佐久間実県議のホームページ ごあいさつ

 八ッ場ダム推進の闇は深く、今回のパブコメ”やらせ”事件は氷山の一角に過ぎません。全国紙の中でいち早くこの問題を取り上げた毎日新聞が続報を載せず、12月3日に同紙の朝比奈社長が地方紙幹部らと共に国交省の案内で八ッ場ダム予定地を視察し、地元町長と面談しているのも不可解です。

 八ッ場ダムをストップさせる会は12月10日に”やらせ”パブコメの業務を代行した埼玉県議会事務局に抗議に行き、そこでわかったことを同会のブログでレポートしています。↓
 http://p.tl/uutZ

 埼玉県ホームページより
 http://p.tl/6pMc
 同一文をあらかじめ印刷したパブコメ用紙が配布された八ッ場ダム建設推進埼玉大会(10月24日)
 http:/

◆2011年11月26日 毎日新聞東京夕刊
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111126dde041010020000c.html

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111126dde041010033000c.html

 -群馬・八ッ場ダム建設:パブリックコメント、96%同一文書に署名--推進意見ー

 建設の是非を検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)を巡り、国土交通省関東地方整備局が集めたパブリックコメント(意見公募)で、寄せられた意見の約96%が同一文書に署名だけ手書きしたものだったことが分かった。「八ッ場ダムは必要不可欠」などと印刷され、ダム推進派が組織的に署名を呼びかけた可能性が高い。ダム反対派は「世論誘導の狙いがあるのではないか」と反発。専門家は「パブリックコメントの趣旨から逸脱した行為」と批判している。

 同整備局が25日にまとめた「パブリックコメントの結果」によると、寄せられた5963件のうち5739件は全く同じ内容だった。「八ッ場ダムは利根川水系における治水、利水の安全度を高める対策として、もっとも現実的、かつ確実に効果を見込める事業」「速やかにダム本体工事に着手し、計画通りに事業を完成すべきだ」などと推進を求める意見がパソコン文字で印刷されており、署名だけが異なっていた。

 パブコメは10月6日~11月4日に全国から募集。集まった5963件のうち埼玉県在住者の意見が5738件に上っており、同一文書の大半は同県在住者が寄せたとみられる。

 同整備局は「パブコメは多数決ではないので、特に問題はない」と説明しているが、八ッ場ダム建設に反対する市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は「世論誘導のため組織的に署名を集めたと思われる。非常に問題だ」と話している。【奥山はるな】

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■ことば

◇パブリックコメント

 国民の意見を広く政策に反映させるための行政手続きで99年に閣議決定、05年の改正行政手続法で明文化された。行政機関が政令、省令などの命令を定めたり、大規模な公共事業を予定している場合に行う。行政機関は事前に案を示し、提出された意見は「十分に考慮しなければならない」と規定されている。

 -群馬・八ッ場ダム建設:パブリックコメント、96%同一文書に署名 五十嵐敬喜氏の話ー

◇法の趣旨に反する--五十嵐敬喜・法政大教授(公共事業論)

 同一文書に署名だけ求めて提出することは違法とまでは言えないが、広く国民の意見を集めるための手続きを定めた法の趣旨に反している。世論形成のために制度を悪用したものと言っていいだろう。

◆2011年11月27日 上毛新聞

 -意見公募の96% 同一文書に署名 見直し派は反発ー

 八ッ場ダム建設の是非を決める検証の一環として国土交通省関東地方整備局が4日まで行ったパブリックコメント(意見公募)で、本県を含む利根川流域6都県などから寄せられた意見の96%はダムの早期完成を求める全く同じ文言の意見が印刷された文書に署名する形式で提出されていたことが26日分かった。ダム見直し派から反発の声が上がっている。
 同整備局が公開した意見を見ると、メールや郵便で寄せられた5963件は「八ッ場ダム建設は必要不可欠」などダムの早期建設を訴える3項目の同一意見が印刷された用紙に、手書きで住所や名前などを書き込む形式だった。
 同整備局によると、意見は締め切り前日の3日の130件から急増した。整備局は意見以外の個人情報を黒塗りにして公開しているが、別に公表した都県別意見数では埼玉県が5738件に及ぶ。このため、署名の大半は埼玉県在住者で、最終日に一斉に届いたとみられる。
 八ッ場ダム建設見直しを求める「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之共同代表は「ダム推進の意見が多数と見せかけるため、組織的に署名を集めたのではないか。極めて問題だ」と批判している。

◆2011年12月6日 東京新聞一面
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011120690071251.html

 -埼玉県議連が動員 「八ッ場建設」賛成意見ー

 八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)建設の是非をめぐる国土交通省関東地方整備局のパブリックコメント(意見公募)で、建設賛成の同一文面が印刷された大量の意見文書が寄せられていたが、埼玉県議会の建設推進派が組織的に動員していたことが分かった。利根川流域の一都五県の住民の意見の大半が建設賛成とも受け取られる恐れもあり、識者は「世論誘導にもつながりかねないやらせだ」と指摘している。

 同整備局は「なるべくダムに頼らない治水」を目指して、八ッ場ダム建設事業の検証を進めてきた。意見公募は「ダムは治水、利水面で最も有利」と結論付けた検討報告書素案に対して住民から意見を聞くために募集。

 十月六日~十一月四日までの三十日間で延べ五千九百六十三件が寄せられた。このうち同一文面の賛成意見への署名が96%にあたる五千七百三十九件で、ほぼすべて埼玉県在住者からのものだった。

 提出された文書の用紙は、「八ッ場ダム建設事業の推進を求める埼玉県議会議員連盟」(会長・佐久間実同県議)が作成。治水や利水面で三種類の賛成意見が印刷され、五人分の署名欄がある。同議連は、会長名の通知で会員一人当たり百人分の提出を要請したほか、十月二十四日にさいたま市で開いた「建設推進埼玉大会」で来場者に用紙を配り、協力を求めた。

 本紙の取材に佐久間会長は「多くの人が建設に賛成しているということを知ってもらいたかった」と釈明。同整備局は「提出する人の自由であり、とやかくいうことではない」としている。

 意見公募はすべて名前や住所などを黒塗りにして同整備局のホームページで公開しているが、動員された用紙分の中には同一筆跡とみられるものも多い。

 意見公募に詳しい川上和久・明治学院大教授(政治心理学)は「声なき多数者から多様な意見を集める、といった本来の趣旨に反している。違法でないとはいえ、『建設推進という結論に向けて圧力をかけよう』との手法は不適切だ」と話している。

(写真)八ッ場ダムをめぐる意見公募で建設賛成の意見提出を呼びかける通知

◆2011年12月6日 東京新聞「特報部」

 ー「1人100人」ノルマ課す 「八ッ場賛成」埼玉県議連が動員 署名に同一筆跡も 推進派も苦言「民意とは言えない」-

 八ッ場ダム(群馬県長野原町)建設の是非をめぐる国土交通省関東地方整備局のパブリックコメント(意見公募)で明るみに出た賛成意見の大量動員問題は、推進派の埼玉県議の旗振りによるものだった。事業に関わる六都県のうち、費用負担がトップクラスの同県。なりふり構わぬ姿勢が見え隠れするが、強引な手法には推進派内部からも疑問の声が上がっている。(小倉定俊)

 「自分も八ッ場ダム建設には賛成だが、このやり方は一種のやらせではないか。九州電力のやらせメール事件がよぎった」。晃はなすのは、自民、公明両党などの差今県議七十四人でつくる「八ッ場ダム建設事業の推進を求める県議会議員連盟」の男性県議だ。
 動員に使われた問題の用紙は住所、氏名、年齢のほか、職業や性別の記入欄があり、ダム建設について「治水、利水の安全度を高める最も現実的な事業」「速やかに完成させ、暫定水利権を解消することは国の責務」など三種類の賛成意見が印刷されている。
 この用紙二十枚が十月中旬、議連会長の佐久間実県議から各会員に通知文とともに渡された。
 通知は会長名で「八ッ場ダム本体工事に速やかに着手すべきだという県民の意思を、国土交通省に明確に示すべきだ」とした上で「二十枚(百人)以上の意見提出をお願いします」と記されている。
 男性県議は「ノルマを課しており、事実上の強制だ。県民に『自分で賛成意思を書いて提出して』と訴えるならまだしも、これでは民意とはいえない。後援会員から署名を集めた人もいる」と明かした。
 一方、同議連が十月二十四日にさいたま市で開いた「建設推進埼玉退会」。ダム中止宣言の白紙撤回や、二〇一五年度までの本体工事完成を国に求める決議がなされたが、用紙はここでも各種資料とともに配られた。
 参加者は上田清司知事をはじめ県内首長、土地関係者ら約二百三十人。あいさつに立った自民、公明両党の議員が「(署名への)ご協力をお願いします」と呼びかけた。
 関係者によると、用紙のひな型を作ったのは佐久間会長らで、県議会事務局が体裁や言い回しなどを確認した。同事務局の担当者は「議連は超党派の政策のため活動し、事務局はそれを手伝う役割。政治活動であり問題ない」と説明する。
 ただ、同議連の封筒がないため、大会では県議会事務局の封筒で代用したという。
 佐久間会長は「県の介入は一切ない。賛成の人に賛成という意見を出してもらっただけ」と強調する。しかし、公開された用紙の中には同じ筆跡で署名されているものもあり、県議側で名簿を写すなどした疑いも拭えない。
 中央大大学院の佐々木信夫教授(行政学)は「意見公募は行政が決める政策に対し、個人が自由な意見を述べる制度。もともと署名活動をするものではない」と指摘してこう話す。「たとえ強要していなくても、組織的、運動的な動員を認めてしまえば、趣旨が歪められてしまう」
 明治学院大法学部の川上和久教授は「世論をミスリードしないためにも、せめて関東地方整備局は『どんな組織からどういう体裁で意見が出されたか』まで、明確に公表するべきではないか」と苦言を呈した。

◆2011年12月6日 しんぶん赤旗 
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-12-06/2011120614_01_1.html

 -八ツ場ダム意見公募 印刷した賛成 推進大会で配る 埼玉県が後援 自公県議主催ー

 八ツ場(やんば)ダム(群馬県)推進の意見があらかじめ印刷された用紙がパブリックコメント(意見公募)に“賛成”意見として大量に国土交通省関東地方整備局に送られていた問題で、この用紙が埼玉県が後援するダム推進派の大会で参加者に配られていたことが5日、関係者の話でわかりました。(矢野昌弘)

(写真)埼玉県が後援した推進派の大会で配られた、あらかじめ賛成意見が書き込まれた用紙

 この大会は、10月24日にさいたま市内で行われた「八ツ場ダム建設推進埼玉大会」。主催は自民、公明など74人の県議でつくる「八ツ場ダム建設事業の推進を求める県議会議員連盟」です。

 埼玉県のホームページなどによると、この大会には上田清司県知事や県内の市町村長、県議など約280人が参加していました。

 関係者の話によると、この大会会場で参加者に「『八ツ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)』に対する意見」と題した用紙が配布されました。5人分の名前や住所などの書き込みができるこの用紙には、「計画通りに事業を完成すべき」などと八ツ場ダムの建設を求める意見が印刷されています。

 用紙には5739人分の名前などが書き込まれ、国交省関東地方整備局が公募したパブリックコメントに提出。この数は全体の96%になります。

 大会に参加したある保守系の埼玉県議は「大会で配っていた。有効なやり方とは思わないが、八ツ場ダムが県にとってそれだけ重要なことだということだと思う。『やらせ』の批判は当たらないと思うが、『赤旗』が『やり過ぎ』と批判するのはわからんでもない」といいます。

“賛成”意見を大量動員する方式は、パブリックコメントの趣旨に背くものです。さらに埼玉県は、同整備局が行った八ツ場ダムの検討会の一員でもあります。パブリックコメントで本来、検証される側の県の関与がなかったのか、解明が求められます。

◆2011年12月6日 TBS news
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4895177.html

 -八ッ場巡り埼玉県議連が「賛成」動員-

 国土交通省の関東地方整備局が八ッ場ダムの建設是非を巡り住民の意見を募るパブリックコメントで、埼玉県議会の議員連盟が賛成の意見を動員していたことがわかりました。

 凍結されている八ッ場ダムの建設を巡っては、国交省の関東地方整備局がコスト面や治水の観点から「建設継続が妥当」とする最終報告書を提出しています。

 整備局は、ことし10月6日から11月4日にかけて、住民の意見を広く聞くためパブリックコメントを募集していますが、埼玉県議会の事務局によりますと、議員連盟会長が議員74人に対して建設に賛成する署名を1議員あたり100人分集めて提出するよう要請したということです。

 「国交省として調査するとかいう立場ではない。しかし、パブリックコメントそのものについては、 まったくオープンにしっかりやった」(前田武志 国交相)

 前田国交大臣はこのように述べて、国交省として調査は行わないとしています。

◆2011年12月7日 朝日新聞埼玉版
http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000001112070002

 -八ツ場ダム推進派 組織的に賛成意見ー

◇県内分96%占める/整備局の募集に県議連

 八ツ場(やんば)ダム(群馬県)建設の是非について国土交通省関東地方整備局が実施したパブリックコメント(国民の意見)の募集に対し、埼玉県議会の建設推進派が組織的に賛成意見を集めていたことが分かった。応募全体の96%を県内分が占める事態となったが、整備局は「多数決ではない」としている。

 整備局によると、募集は全国を対象として10月6日~11月4日に実施。5963件が集まったが、うち5738件が県内からだった。

 整備局のホームページ(HP)で公開された意見の原本(個人情報部分は墨塗り)は、同じ文面と書式の賛成意見が大多数を占めた。いずれも、治水や利水など三つの賛成理由に5人分の署名が書かれていた。

 この用紙は、県議93人のうち74人でつくる「八ツ場ダム建設事業の推進を求める埼玉県議会議員連盟」の佐久間実会長が会員に配布。10月24日にさいたま市浦和区で開かれた「建設推進埼玉大会」でも関係者に配られた。

 佐久間会長は「これまで投じられた県税も多い。治水・利水とも県民に必要なダムと考え、広く賛同を呼びかけた」と説明。県議会事務局は「超党派の議員による自由な政治活動」としている。

 整備局はHPに居住地、年齢、性別の内訳をグラフで掲載したが、賛否数は示していない。「パブリックコメントは広く意見を求めるのが目的。同じ論旨はまとめている」と説明している。

◆2011年12月7日 スポーツ報知
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20111207-OHT1T00182.htm

 -埼玉県議連が八ツ場ダム賛成意見集めるー

 群馬県の八ツ場ダム建設の是非について関東地方整備局が実施したパブリックコメント(意見公募)で、寄せられた5963件の意見のうち、96%にあたる5739件が埼玉県議の建設推進議員連盟が組織的に集めた賛成意見だったことが7日、議連への取材で分かった。賛成意見はいずれも同じ文面だった。

 議連は「推進を目的につくった団体の行動として、不自然なことではない」と説明。一方、専門家は「意見公募制度の趣旨を理解していない稚拙なやり方」と指摘している。

 意見募集は10月6日~11月4日に実施。議連は3種類の賛成意見と5人分の署名欄がある文書を作成し、参加する74人の議員に、1人当たり100人分の提出を要請したほか、推進派の会合で出席者に配り協力を呼び掛けた。

 同一文面の賛成意見の署名者はほとんどが埼玉県在住者で、同じ筆跡とみられるものもある。

 整備局は「数ではなく内容を重視しているので問題はない」とし、氏名や住所を墨塗りにして全意見をホームページで公開している。

 山梨大の藤原真史准教授(地方自治論)は「数を集めたいのであれば署名運動や陳情にすればよく、無駄な行為。整備局も意見の確認に労力が必要で、行政コストもかかる」と話している。

 八ツ場ダム建設をめぐっては、整備局が「事業継続が妥当」との対応方針を国土交通省に報告しており、前田武志国交相が年内に最終判断する見通し。