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ダム中止に伴う地域振興に関する特措法についての政府答弁

 中島隆利衆議院議員(社民党)が「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案」に関する質問主意書を3月15日に提出し、3月23日に政府答弁書が出ました。
 質問と答弁を質問項目ごとに整理したものを以下に掲載します。
 

【質問】一の1及び2
一 対象となるダム事業
1 過去に事業中止の判断がされたダム事業、たとえば、直轄の清津川ダム(新潟県)や細川内ダム(徳島県)が本法案の対象となるかどうかを明らかにされたい。

2 過去に中止の判断がされたダム事業が本法案の対象となることがあれば、その条件を明らかにされたい。

【答弁】一の1及び2について
 ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別格置法案(以下「本法案」という。)第四条の規定は、本法案附則第二項の規定により、本法案の施工の日以降にダム事業の廃止等(本法案第二条第二項に規定するダム事業の廃止等をいう。以下同じ。)があった場合について適用するものとされており、御指摘の「細川内ダム」については、既にダム事業の廃止等かされていることから、同条の規定は適用さないが、その他のダム事業については、現時点においてお答えすることは困難である。

【質問】二の1及び2
二 ダム予定地の非移転者への生活再建支援金の支給及び家屋・営業用建物新改築への助成について

1 ダム予定地の住民はダム事業により、地域の産業が衰退して多大な経済的損失を受けてきたので、非移転住民には生活再建支援金の支給が必要と考える。非移転者への生活再建支援金の支給が本法案に含まれているかどうかを明らかにされたい。

2 ダム予定地の住民は、移転を前提としていたため、家屋、営業用建物の改築ができず、著しく老朽化した家屋等で生活し、営業することを余儀なくされてきたので、家屋等の新改築費用の助成も必要と考える。非移転者の家屋等の新改築費用への助成が本法案に含まれているかどうかを明らかにされたい。

【答弁】二の1及び2について    
 御指摘の「非移転者への生活再建支援金の支給」及び「非移転者の家屋等の新改築費用への助成」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本法案は、個人に対する金銭の支給については規定していない。

【質問】二の3
3 同法案の第五条(特定地域振興計画)第三項で「都道府県は、特定地域振興計画の作成に当たっては、ダム事業の廃止等に伴い水没しないこととなる土地の区域の住民の生活環境の整備に特に配慮しなければならない。」と記されているが、この条項によって、都道府県がダム予定地の非移転者住民に対して具体的にどのような救済措置をとることが可能となるかを明らかにされたい。

【答弁】二の3にづいて 
 御指摘の「非移転者住民」に該当する者を含め、ダム事業の廃止等に伴い水没しないこととなる土地の区域の住民の生活環境の整備については、特定地域振興計画(本法案第五条第一項に規定する特定地域振興計画をいう。以下同じ。)の作成に当たり、都道府県において適切に配慮されるものと考えている。

 
【質問】三の1、2及び5
三 地域振興計画の策定における地元住民の合意形成について
1 地域振興計画の策定にダム予定地の地元住民の大多数の意見を反映できるように、地元住民の合意形成を図ることは是非とも必要なことである。本法案では、特定地域振興計画の策定においてダム予定地の地元住民の合意形成が配慮されているのかどうか。配慮されているならば、具体的にどのような措置が取られるのかを明らかにされたい。

2 本法案の第五条(特定地域振興計画)第八項で、「都道府県は、特定地域振興計画を作成しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催その他の住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」となっているが、公聴会での意見陳述だけでは、言いっぱなし、聞きっぱなしになる可能性が高く、住民の意見反映を保証するものとならないと考えるが、このことについて政府の見解を明らかにされたい。

5 地域振興計画に地元住民の意見を確実に反映させるためには、①当該特定地域における住民の意向に関する調査、②特定地域振興計画案の住民への説明と意見聴取、③住民の意見を踏まえた計画案の修正とその説明、④地元住民の大多数の意見が反映されるまで③を繰り返し実施といった手順が必要と考えるが、このことについて政府の見解を明らかにされたい。

【答弁】三の1、2及び5について 
 特定地域振興計画への住民の意見の反映については、本法案第五条第八項において、「都道府県は、特定地域振興計画を作成しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催その他の住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と規定しており、具体的な措置の内容及び方法については、特定地域振興計画を作成する都道府県において適切に判断されるものと考えている。

【質問】三の3
3 本法案の第六条(特定地域振興協議会)第三項で、「第一項の規定により協議会を組織する都道府県は、必要があると認めるときは、前項各号に掲げる者のほか、協議会に、次に掲げる者を構成員として加えることができる。 一 当該都道府県が作成しようとする特定地域振興計画及びその実施に関し密接な関係を有する者 二 その他当該都道府県が必要と認める者」となっているが、ここでいう「加えることができる構成員」にダム予定地の地元住民が含まれるか否かを明らかにされたい。 

【答弁】三の3について 
 御指摘の「ダム予定地の地元住民」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本法案第六条第三項各号に掲げる者であれば、附条第一項に規定する特定地域振興協議会(以下「協議会」という。)に構成員として加えることができる。 

【質問】三の4
4 本法案の第六条(特定地域振興協議会)第七項で、「第四項各号に掲げる者であって協議会の構成員でないものは、第一項の規定により協議会を組織する都道府県に対して、自己を協議会の構成員として加えるよう申し出ることができる。」となっているが、この「構成員として加えるよう申し出ることができるもの」にダム予定地の地元住民が含まれるか否かを明らかにされたい。

【答弁】三の4について     
 御指摘の「ダム予定地の地元住民」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本法案第六条第四項各号に掲げる者であって協議会の構成員でないものは、同条第七項の規定により自己を協議会の構成員として加えるよう申し出ることができる。 

【質問】四の1
四 既買収地の活用について
1 ダム中止後の地域振興を図る上で、水没予定地などの既買収地を活用していくことが非常に重要である。このことに関して本法案では既買収地は当該ダム事業に要した費用を負担した地方公共団体に、負担した費用の範囲内で譲与されるが、それ以外は売却となっている。すなわち、本法案の第七条(国有財産の譲与等)第一項で次のとおり記されている。「国は、国有財産法第二十八条の規定にかかわらず、特定地域内に存するダム事業の廃止等に伴い不用となった土地、工作物その他の物件のうち、普通財産である国有財産を、特定地域振興計画に記載された第五条第二項第四号に規定する土地の利用に供するため、当該ダム事業に要した費用を負担した地方公共団体に、その負担した費用の額の範囲内において譲与することができる。」 ここでいう「当該ダム事業に要した費用を負担した地方公共団体」とは川辺川ダムを例にとった場合、どの地方公共団体になるのかを明らかにされたい。

【答弁】四の1について  
 川辺川ダムの建設に関する特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第四条第一項に規定する基本計画に基づく事業の場合には、、本法案第七条第一項の「当該ダム事業に要した費用を負担した地方公共団体」は、熊本県である。

【質問】四の2及び5
2 川辺川ダムを例にとった場合、譲与の相手となる地方公共団体が既買収地の全面積に対して最大でどれくらいの割合の面積を譲与されることになるのかを明らかにされたい。

5 本法案の第七条第一項により、「当該ダム事業に要した費用を負担した地方公共団体」に既買収地を譲与する際、地方公共団体が負担した費用の額の範囲内において譲与することが可能な面積をどのように算定するのかを明らかにされたい。また、この算定において、既買収地の地価をどのように設定するのか、周辺の実勢地価とするのか、あるいは買収時の買収地価にするのかを明らかにされたい。

【答弁】四の2及び5について
 本法案第七条第一項の規定により土地を地方公共団体に譲与するに当だっては、その譲与しようとする土地の価格の総和が当該地方公共団体の負担した費用の額の範囲内であることが必要であり、その面積が一義的に定まるものではない。また、その際に用いる土地の価格については、譲与に係る合意が行われる時点における正常な取引価格によることとなる。

【質問】四の3
3 川辺川ダムを例にとった場合、熊本県が本法案の第七条第一項で既買収地の譲渡を受けた場合、その土地を熊本県の判断で五木村等に無償で譲与または貸与することが可能かを明らかにされたい。

【答弁】四の3について 
 地方公共団体の所有する財産の譲与、貸付けその他の処分については、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)その他の関係法令の定めるところによる。

【質問】四の4
4 本法案の第七条第一項の「当該ダム事業に要した費用を負担した地方公共団体」に当該ダムの利水予定者等のダム使用権設定予定者が含まれるか否かを明らかにされたい。

【答弁】四の4について
 特定多目的ダム法第五条に規定するダム使用権の設定予定者(以下「ダム使用権設定予定者」という。)が同法第七条第一項の規定により負担した負担金の取扱いは、同法及び同法に基づく命令の定めるところによることとなり、ダム使用権設定予定者については、本法案第七条第一項の譲与の対象となることは想定していない。

【質問】四の6
6 本法案の第七条第二項で、地方公共団体、特定地域の住民に対して優先的に既買収地を売却することが可能とされている。すなわち、次のように記されている。「国は、特定地域内に存するダム事業の廃止等に伴い不用となった土地、工作物その他の物件のうち、普通財産である国有財産を売り払おうとする場合において、次に掲げる者からその買受けの申請があったときは、国土交通省令で定めるところにより、これを他に優先させなければならない。 一 当該国有財産を特定地域振興計画に基づぐ事業の用に供する地方公共団体、特定地域の住民その他の者 二 当該国有財産に特別の縁故がある者であって国土交通省令で定めるもの」 この売却において、売却地価をどのように設定するのか、周辺の実勢地価とするのか、あるいは買収時の買収地価にするのかを明らかにされたい。

【答弁】四の6について
本法案第七条第二項の規定により国有財産を売り払おうとする場合の予定価格については、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)その他の関係法令の定めるところにより設定されることとなる。

【質問】五の1、2及び3
五 川辺川ダムへの本特別措置法の適用について
1 八ッ場ダム本体工事費の予算案計上に関して昨年十二月二十二日に藤村修内閣官房長官が示した裁定条件の一つは、「ダム建設予定だった地域に対する生活再建の法律を、川辺川ダム建設予定地を一つのモデルとしてとりまとめる」ことであり、本法案はそのために策定されたものである。本法案の第二条によれば、本特別措置法は当該ダムを必要としない河川整備計画を策定するか、あるいは当該ダムの基本計画を廃止したときに適用されるものであるが、川辺川ダムに関してはそれらの見通しが明らかにされていない。
 川辺川ダムに関しては国土交通省、熊本県、市町村による「ダムによらない治水を検討する場」が設置され、川辺川ダムの代替案が検討されてきているが、そこで示された代替案はまだ最終のものには至っていないと聞く。国土交通省はこの「検討の場」でいつまでに最終的な代替案を示す考えであるかを明らかにされたい。

2 昨年十二月二十一日に開催された「検討の場」第二回幹事会の資料では球磨川水系河川整備計画は平成二十四度中の策定が目標と記されている。平成二十四度中の策定が可能か否かを明らかにされたい。

3 国土交通省は上記の「検討の場」のあと、球磨川水系河川整備計画をどのようなスケジュールで策定する考えであるのかを明らかにされたい。

【答弁】五の1、2及び3について
 御指摘の「ダムによらない治水を検討する場」(以下「検討する場」という。)における検討の結果を取りまとめる具体的な時期及び球磨川水系に係る河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十六条の二第一項に規定する河川整備計画の策定に係るスケジュールについては、現時点では未定である。
 なお、平成二十三年十二月二十一目に開催された、検討する場の「第二回幹事会」において、当該河川整備計画について、検討する場における検討の結果を取りまとめた後に、当該結果をその原案に反映した上で、平成二十四年度中に策定することを目標とする旨について、提示しているところである。