2012年5月3日
4月26日に開かれた国交省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の議事要旨が国交省のホームページに掲載されました。↓
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/dai22kai/dai22kai_gijiyousi.pdf
議事要旨は議事録と同様、この有識者会議の事務方を務める国交省の水管理・国土保全局(旧河川局)河川計画課によって作成されます。
有識者会議は、もとはといえば河川行政の改革を目指して前原誠司元国交大臣の私的諮問機関として設置されたのですが、議事要旨を読むと、座長をはじめ大多数の委員(有識者)が当初の目的から180度転換し、現状の河川行政を高く評価し、その改革を目指す姿勢を失っていることがわかります。
議事録の全文を国交省ホームページより転載します。
第22回 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議 議事要旨
平成24 年4 月26 日(木)18:00~20:30
中央合同庁舎3 号館 11 階特別会議室
【出席者】
中川座長、宇野委員、三本木委員、鈴木委員、田中委員、道上委員、山田
委員、奥田副大臣、関水管理・国土保全局長
【ダム事業の検証の検討結果について】
○今回は、検討主体から国土交通大臣に報告された内ヶ谷ダム、安威川ダム、石木ダム、タイ原ダムの検討結果について説明を受け、有識者会議から意見等を述べた。
○委員の主な発言は以下のとおり。
・内ヶ谷ダムについて、長良川本川に対する効果が小さいように見えるのではないか。この点については、長良川は、昭和51年に計画高水位に近い水位が長く続き、破堤に至るような洪水を経験しており、治水安全度を向上するためにこれまでも他の河川に比べて厳しい苦労を積み重ねてきており、様々な工夫を今後も続けて行く必要がある川だということではないか。
・内ヶ谷ダムについて、緊急性や重要性が高いならば、15年という工期は長いのではないか。この点については、県の裁量の範囲であり、岐阜県において4ダムが事業中、うち1ダムが本体に着工している状況を反映していると推察されるのではないか。
・岐阜県が「サプライチェーン化による波及被害」などの評価軸を独自に設けて評価を行ってきていること等は、水害に永年苦労し、対処していこうとする姿勢が現れていると思う。
・安威川ダムについて、費用対効果が17.5という高い値となっていると思う。安威川ダムより下流は市街地であり、被害軽減の効果が大きいということではないか。
・石木ダムについて、評価軸「実現性」の「土地所有者等の協力の見通しはどうか」について記載されておらず、「中間とりまとめ」に沿っていないのではないか。この点については、実現性を立証していくことは困難であり、このような意見は「中間とりまとめ」のパブリックコメントでも寄せられてきており、それに対しては、地域の様々な場で見通しを得ていくよう努力をするしかなく、長崎県はそのような努力を重ねてきたのではないか。相手があり、様々な経緯がある中で、どのように表現するのか難しい問題であるが、今回の報告書では可能な範囲で記載されており、「中間とりまとめ」に沿っていると解釈できるのではないか。
・石木ダムについて、平成28年に完成という工程が示されているが、実現性を踏まえているか疑問だと思う。この点については、県としての予定を示したものであり、これまで知事が4回地権者と話し合うなど、積極的な取組みが行われてきているのではないか。
・岐阜県の内ヶ谷ダム、大阪府の安威川ダム、長崎県の石木ダムは「継続」という内容であり、沖縄県のタイ原ダムは「中止」という内容であった。これら4つのダムについては、基本的には、中間とりまとめで示した「共通的な考え方」に沿って検討されたものであると理解できる。石木ダムに関しては、事業に関して様々な意見があることに鑑み、地域の方々の理解が得られるよう努力することを希望する。
【その他】
○議事に先立ち、座長より次のような話があった。
これまでも、座長あてあるいは委員あてに様々な団体等から御意見や御質問を頂くことがあり、これらについては拝見している。このような御質問等に関して、過去の当有識者会議でも申し上げたことがあるが、本日、あらためてお話を申し上げる。
まず、当有識者会議の公開について申し上げる。当有識者会議は原則として非公開としているが、第12回の会議以降は、報道関係者に公開してきている。先ほど述べたとおり、今回も、報道関係者に公開することとしたところである。当有識者会議は、会議資料、議事要旨、議事録を公開し、透明性を確保している。当有識者会議については、平成11年に閣議決定された「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」に違反するものではないとの政府の見解が示されていると承知している。
次に、当有識者会議の役割について申し上げる。今回のダム事業の検証において、「中止」や「継続」といった各ダムの対応方針を決定するのは、当有識者会議ではない。いわゆる「補助ダム」であれば、ダム事業の「対応方針」を決定するのは都道府県であり、国土交通省は当該ダムの「補助金交付に係る対応方針」を決定することとなっている。当有識者会議は、国土交通省に対し、中間とりまとめで示した「共通的な考え方に沿って検討されたかどうか」について意見を述べることとしている。これらのことは当有識者会議の「中間とりまとめ」に明記している。
また、これまでの有識者会議で意見を述べたダムに関して御質問等を頂く場合があるが、これらのダムについては、「中間とりまとめで示す共通的な考え方に沿って検討されたかどうか」について意見を述べており、当有識者会議としての役割はすでに果たしているものと考えている。
○委員の主な発言は次のとおり。
・新しい治水を国民に広く知っていただくために、もっと開かれた場で議論することが重要ではないか。
・静穏な環境の下で初めて自由な議論ができるのではないか。前回はそのような環境ではなかったと思う。
・冷静に議論ができるような場とすることが重要である。研究者であれば、治水について学会等で発表したり、しかるべきメディアを通じて自分の意見を述べることもできる。