八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムを疑問視する1都5県議員の会、羽田大臣に要請文

2012年6月23日

 昨日、羽田国交大臣に対して、八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会が要請文を提出しました。

 関連記事を転載します。

◆2012年6月23日 上毛新聞

 -国交相に八ッ場本体工事再考要請 1都5県議の会ー

 八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会(角倉邦良会長)は22日、羽田雄一郎国土交通相宛てに、建設再開方針が決まった八ッ場ダムについて、本体工事の是非を再考するよう求める要請書を提出した。
 このほか要請書では、本体着工条件の一つになっている利根川水系の河川整備計画の策定で、有識者会議にダムに批判的な識者を入れること、地元住民の生活再建や地域振興に早急に取り組むことを求めた。
 国交省は5月25日から今月23日まで河川整備計画の意見募集を行っている。

◆2012年6月23日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20120623/CK2012062302000143.html

 -八ッ場ダム 本体工事再考を 1都5県議の会 国交相に要請書ー

 八ッ場(やんば)ダムを考える一都五県議会議員の会は二十二日、八ッ場ダム本体工事の再考などを羽田雄一郎国土交通相に要請した。

 要請書では、本体工事の再開条件の一つである「利根川・江戸川河川整備計画」の民主的な策定や、ダム事業の遅れにとらわれずに地元住民の生活再建を早急に実施することを求めた。 (伊藤弘喜)

◆2012年6月23日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581206230001

 -「裁定」巡り進展探るー

 八ツ場ダム(長野原町)の建設再開が決まって、22日で半年がたった。昨年12月22日、再開の条件として藤村修官房長官が示した「裁定」が本体工事着手への重しとなり、大きな進展はないままだ。この裁定をめぐり、賛否両派が再び動き始めた。

 「このままでは河川行政が国民の理解を得ることは到底不可能」。22日、見直し派の67人でつくる「八ツ場ダムを考える1都5県議会議員の会」は民主党政権5代目の国土交通相、羽田雄一郎氏に要請書を出した。前任の前田武志氏を激しく批判する内容だった。

 総事業費4600億円の国内最大のダム計画。国と6都県が負担し合うが、国交省はさらに183億円の費用膨張と3年の工期延長という試算を出している。

 その八ツ場ダム問題にこの半年、目立った進展はない。背景にあるのが、建設再開表明時に藤村修官房長官が示した「裁定」だ。

 裁定は、ダムを中止した地域の生活再建を支援する法案の国会提出と、利根川水系河川整備計画策定の2点を踏まえ、本体工事着手を判断するとした。生活再建法案は3月に閣議決定された後、政局の混迷でたなざらしになっている。

 さらに厄介なのが、20~30年後の治水や利水の目標と必要な事業を盛り込む河川整備計画の策定だ。

 全国では策定済みの水系が多いが、利根川水系は2006年に始めた作業が関係都県の対立などで08年に中断。国交省関東地方整備局が5月に始めた意見募集も準備段階のもので、策定のめどはたっていない。

 議員の会代表世話人の角倉邦良県議(リベラル群馬)は「裁定を武器に、事態を動かさないよう頑張っている国会議員もいる。治水・利水の両面で、『八ツ場は不要』と改めて訴えたい」と話す。

 地元でも、生まれ育った地の水没に心を痛める人は多い。政権交代でダム反対が明確になったという女性は言う。「今ならまだ間に合うのでは。何とか貴重な自然を残してもらいたい」

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 「前と全く変わっていない」。ダムができれば水没する川原湯温泉で生まれ育った長野原町の高山欣也町長(69)は、特段の変化がないまま時が過ぎることにいらだち始めている。

 昨年12月22日には、建設再開を表明して現地入りした前田氏と万歳三唱。自宅で「祝杯」もあげたという。「羽田さんは前田さんの路線を『継承する』と発言した。裁定は政治の世界の話で、住民には関係ないこと。約束通り、早く着工してもらわないと困る」

 計画が浮上して60年。賛否両派に割れた町は、激しい対立の末、受け入れた。代替地に移転した住民の多くは、ダムを観光資源とする生活再建を描く。

 「ダムがない限り生活再建はできない。羽田さんに衰退を続ける地区を見てほしい」。高山町長は、現地視察を求めて「直談判」することも検討している。

 県は、負担金を出す下流の5都県とともに「事業の遅れは民主党政権の責任」として、基本計画通りの予算と工期での完成を求めてきた。ある幹部は「裁定なんて国交相の気持ち次第。今年度中に本体着工に入れるはずだ」と、「見切り発車」を求めている。(牛尾梓、小林誠一)

◆2012年6月23日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20120623ddlk10010283000c.html

 -八ッ場ダム建設:再考求め、1都5県議員の会が要請書 /群馬ー

 八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会は22日、ダム本体工事の再考などを求める要請書を羽田雄一郎国土交通相に提出した。

 要請書では、利根川水系河川整備計画の策定では有識者会議にダムに批判的な識者を入れることや、地元住民を救済するための生活再建対策や地域振興策に早急に取り組むことなどを求めている。【喜屋武真之介】

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 要請文の全文を転載します。

 2012年6月22日
 国土交通大臣 羽田 雄一郎 様

                八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会
                 代表世話人 角倉邦良群馬県議会議員
              〒370-2132 高崎市吉井町吉井547-3 サトカンビル3F
                      電話 027-387-1432  ファックス 027-387-1433
  
 利根川水系河川整備計画の民主的な策定、地元住民の真の生活再建策、
      八ッ場ダム本体工事の再考を求める要請書

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 私たちは八ッ場ダム事業の見直しを求める利根川流域一都五県の都県議会議員の会です。
 八ッ場ダム事業は1952年に最初の構想が発表されました。爾来60年、ダム予定地に大きな犠牲を強いてきたこのダム事業は、自民党政権における利権構造の象徴とされてきました。八ッ場ダム事業は「治水」、「利水」の必要性が失われる一方で、地滑りなどの災害を誘発する危険性が顕在化し、杜撰な計画によって事業費の増額と工期の延長を繰り返してきました。
 民主党は2009年の総選挙マニフェストの筆頭に「八ッ場ダムの中止」を掲げ、多くの国民の支持を得て政権が発足しました。しかしながら、2010年から2011年にかけて国土交通省関東地方整備局が実施したダム検証は、ダムの必要性について客観的、科学的な根拠を示すことなく「事業継続」という検証結果をまとめ、前田武志前大臣は昨年暮れに民主党の反対意見を無視して八ッ場ダム本体工事の予算案計上を決定しました。
 このままでは、河川行政が国民の理解を得ることは到底不可能です。

 こうした経緯を踏まえ、私たちは羽田大臣に次の三点を要請します。

1.12月22日に藤村修官房長官が八ッ場ダム本体予算執行の条件として提示した、利根川水系河川整備計画を民主的な手続きによって策定すること。
利根川水系河川整備計画の策定に当たり、淀川水系河川整備計画の策定作業と同様、有識者会議にダムに批判的な識者を入れ、事務局を国交省とは別の第三者機関が務めるなど、客観的、科学的な審議が可能となるよう配慮して下さい。
 パブリックコメント、公聴会等の実施に際しても、単に流域住民の意見を「聞きおく」だけでなく、流域住民と十分に議論をする場を設け、流域住民の意見を河川整備計画に反映させるように努めてください。
 現在、国交省関東地方整備局は、有識者会議の枠組み、人選が未定の段階で、河川整備計画の全体像も示さないまま、治水安全度だけを取り上げてパブリックコメントを募集中です(6月23日締切)。パブリックコメントの募集要項には、同局の提案する治水安全度のために、どのような事業が必要で、どれだけの経費がかかるかという基本的な情報が書かれていません。情報が少ない中で「安全度は高い方がいい」という意見へと流域住民を誘導し、八ッ場ダム等の大規模河川事業につながるようにする意図を疑わざるを得ません。
 関東地方整備局では昨秋、八ッ場ダムのパブリックコメントを実施しました。この時、埼玉県の八ッ場ダム推進議連会長である自民党県議が大量の同一書式をコピーして議会事務局を通して提出するという、所謂「やらせパブコメ事件」が発覚し、大きな社会問題として新聞紙上でも取り上げられましたが、同局はこれを問題視せず、多くの国民がパブリックコメントに寄せた八ッ場ダムに反対する意見を黙殺しました。このような不誠実なパブコメを繰り返す関東地方整備局に対して、国民の不信はかつてない程高まっています。
 利根川には堤防が脆弱な箇所が少なくありません。治水効果が少なく、不確実なダム計画に偏重するのではなく、堤防強化など、真に利根川流域住民の安全を確保するために何が必要かを流域住民ともに考え、流域住民との協働作業で河川整備計画を策定するようにしてください。

2.八ッ場ダム事業によって大きな犠牲を強いられてきた地元住民を救済するため、生活再建対策、地域振興策に早急に取り組むこと。
 これまで国土交通省、関係都県はダム事業によって地元住民の生活再建を実現するとしてきましたが、ダム事業の進展とともに水没予定地は疲弊し、衰退の一途を辿っているのが実状です。ダム事業によって真の生活再建を実現することはもはや不可能です。八ッ場ダム予定地では、住民が移転する代替地の整備事業が大規模に行われていますが、工期の遅れ、安全性への懸念などから、代替地へ移転する住民は当初予定を大きく下回り、地域は急激な人口減少に見舞われています。
 また、工事現場に取り囲まれた水没予定地では、観光業の維持が困難となっており、地域経済の破壊が著しく進行しています。八ッ場ダムは、国交省の検証では2019年以降の完成とされており、実際には工期はさらに延びる可能性が高いとされています。地元住民をこうした困窮した状態にそのまま放置することは、許されないことです。
 ダム事業と切り離して、地元住民を救済するための生活再建対策、地域振興策に早急に取り組んでください。

3.八ッ場ダムの本体工事を再考すること。
 利根川水系河川整備計画の策定において、八ッ場ダムが治水面で必要か否かがあらためて問われることになっています。事実に基づく真っ当な議論、検討が行われれば、八ッ場ダムは不要な事業だという結論が出ることが予想されます。一方で、2で述べたように、地元はむしろダム事業によって衰退の一途をたどっており、地元のためにダム事業を進めるべきだという話は現実を踏まえない虚構です。
 昨年暮の民主党の反対に対して出された藤村修官房長官の裁定の条件がクリアされていないので、八ッ場ダム事業の平成24年度当初予算は、本体工事費が含まれていません。八ッ場ダムを位置づける利根川水系河川整備計画が策定されない限り、この状態が続きます。
 これらの状況を鑑み、八ッ場ダムの本体工事の是非を改めてお考えください。

 これらの諸課題について羽田大臣が真摯に取り組まれ、政治への信頼を回復されることを心より期待しております。