八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

ダム銀座と水害(福島豪雨から一年)

 福島県では昨夏、豪雨による水害が只見川流域を襲いました。 
 高齢化が進む現地は、原発事故と水害のダブルパンチでさらに追い詰められた状態になっています。災害の原因は、いずれも都市に電気を送るための施設です。  

 只見川流域の水害は、只見川にある10基のダムが原因といわれます。これらのダムはすべて水力発電専用のダムです。只見川はこれらのダムが連なっていることから、「ダム銀座」と呼ばれてきました。  
 10基のうち9基のダムは、戦後復興期の1940~60年代に造られたものです。以下のブログにこれらのダムについての詳しい解説があります。↓  
 http://blogs.yahoo.co.jp/spmpy497/6551586.html  

 水害の責任を認めようとしない東北電力(ダム設置者)と「洪水調整機能のない発電専用ダム群が水害を拡大させた」と主張する被災者との対立を伝える記事を転載します。

◆2012年7月29日 毎日新聞福島版
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20120729ddlk07040016000c.html  
 -新潟・福島豪雨:金山の被災者団体、損賠請求を決定 東北電など相手に /福島ー  

 昨年7月の新潟・福島豪雨で被災した金山町民約150人でつくる被災者団体の総会が28日、被災から1年を機に開かれ、只見川にダムを設置する東北電力などへの損害賠償請求を決めた。  
 昨年の豪雨では、川がはんらんし民家や鉄橋などが流出した。同会の集計では、被害額は少なくとも10億円。  
 同会は「洪水調整機能のない発電専用ダム群が水害を拡大させた」と主張する。一方、東北電力などは因果関係について認めていない。町に対し賠償や安全対策などを盛り込んだ協定書を東北電力などと締結するまで再稼働を認めないよう申し入れることも決めた。  
 来賓で出席した長谷川律夫町長は、町の要請で停止中の「第二沼沢発電所」(同町)の再稼働を条件に、東北電力に対し支援金を求める交渉をしていることを明らかにした。長谷川町長は「被災した人は生活再建できずに困っている。今冬までに決めたい」と話した。【蓬田正志】

◆2012年7月30日 河北新報 http://www.kahoku.co.jp/news/2012/07/20120730t61013.htm  
 -氾濫原因めぐり今も深い溝 新潟・福島豪雨から1年ー  

 福島県会津地方を襲った昨年7月末の新潟・福島豪雨から1年がたった。同県只見、金山両町などを流れる只見川が氾濫し、1人が行方不明となり、住宅233棟が全半壊した。  
 「氾濫はダムの放水が原因」と訴える被災者と、因果関係を否定するダム設置者。両者の対立は今も深まっている。JR只見線も全線再開のめどが立たず、生活再建の歩みは遅い。(会津若松支局・阿部信男)  
 「ダムが出来る前は洪水はなかった」。13日、金山町の公共施設。町の被災者154人でつくる「只見川ダム災害金山町被災者の会」が、ダム設置者の東北電力の社員に詰め寄った。  
 只見川のダムは10基。水力発電用などで東北電力が5基を持つほか、電源開発が同数のダムを設けている。豪雨で水位が上がり、全基が放水した。会は「放水で川の水量が増し、氾濫した」と主張し、両社と国、福島県に質問状を出した。  
 東北電力などの回答は「放水は国の規定通りで不適切な点はない」「ダムの設計洪水量を超えた豪雨が原因」とダムの影響を否定し、双方の溝は埋まっていない。  会の斎藤勇一会長(72)は前金山町長。戦後に次々とダムが設置される経過を見てきた。自宅は10基の一つの本名ダム(金山町)の近くにあり、床上浸水の被害に遭った。  
 「町は首都圏、仙台圏への電力供給に協力してきた。災害時のリスクが地域に押し付けられる構図は福島第1原発事故と同じだ」と憤る。  
 町は町民の意向を受け、独自にダムの専門家に調査を依頼するなど、ダムと水害の因果関係の検証に乗り出した。  
 豪雨が交通網に残した爪痕もいまだに深い。只見線は只見川の鉄橋3本が流失し、復旧工事が続いている。只見(只見町)-大白川(新潟県魚沼市)は秋に運行再開するめどが立ったが、会津川口(金山町)-只見は工事も未着手で全線再開の見通しは立っていない。  
 只見町には、只見線がこのまま廃線になるのではないかという危機感が漂う。昨年度の町内の観光客は原発事故の風評被害とのダブルパンチで前年度の3分の2の約15万人にとどまった。  
 町は「観光への影響もさることながら、町は高齢化率が4割を超え、地域医療圏の中心の福島県会津若松市への公共の足が必要だ」と国や県、JR東日本に早期復旧の要望活動を続けている。  
 [新潟・福島豪雨] 2011年7月26~30日に大雨が降り、只見町で総雨量が711ミリに達した。只見川が氾濫し、福島県内では流域の喜多方市、只見町、昭和村など1市8町2村で1人が行方不明になり、住宅33棟が全壊、200棟が半壊、77棟が床上浸水した。

 ~~~転載終わり~~~

 被災者からお送りいただいたメールを再掲します。

 ◆被災者からのメッセージ(2011年9月22日付)

 私は7月29日新潟福島豪雨で被災しました。金山町に住んでおりましたが、その夜は、濁流の只見川の轟音のみが聞こえ、避難先の高台の友人宅で、停電で何も見えない中、水位を心配しながら過ごしました。近くの本名ダムが決壊の恐れもあり、橋は流され、鉄橋も流されました。
 金山町のダムは、水門が壊れて開いたまま、只見町のダムでは今も亀裂が入ったままです。私が住んでいた家も一階が全部浸水し、住めなくなりました。近所の方で、一人暮らしをしていた高齢者の方も引っ越したそうです。ダムが近くにある限りは、また水害に遭うかもしれないからということです。
 豪雨災害の後、全国から多くの方々がボランティアに来て下さいました。
被災者の殆どが高齢者だったこともあり、私達みんな感謝の気持ちで一杯でした。その中には、福島第一原発事故で避難中の方々も来て下さいました。まさに津波の爪痕と同じような光景だと、おっしゃった方もいました。それほど、ダムによる水害もひどいのです。

 台風12号、15号でも、様々な地域で大きな被害がでていますが、その度に、ダム決壊の危険性の中、地元民は過ごさなければなりません。
 数ヶ月前、東北電力の方が仕事場にいらした時、ダム決壊やダムによる大災害は想定しておりませんとおっしゃっていました。
 しかし、起こりました。

 そこに住む者が経済的に恩恵を受けられる点はダムも原発も同じでしょう。そして、一度事故が起これば、命にかかわる事故へとつながることも同じです。
 原発、大規模ダムと大規模水力発電、これを止めない限りは、日本の未来はありません。今後またどんな自然災害や人災が起こるかわかりません。今、そんなリスクを負う世界をストップする時だと思います。