2012年10月31日
ダム問題を追うジャーナリスト、まさのあつこさんによる『水資源開発促進法 立法と公共事業」がこのほど刊行されました。
◆築地書館ホームページより
http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1450-7.html
本のタイトルは地味ですが、内容はかなり刺激的で、八ッ場ダムをはじめとするダム事業がなぜ止まらないのかが、これまで明かされてこなかった数々の事実とともに詳述されています。
民主党政権が政権公約で掲げた「八ッ場ダム中止」と「全国のダム事業の見直し」は、戦後、河川行政を進めるために築かれてきた体制を根底から覆さない限りなし得ないものでした。
この三年の間に、民主党政権の政策は、当初の理想からかけ離れたものとなり、失望した国民の多くから「できもしない公約を掲げて、国民の歓心を買った」と批判されていますが、民主党を叩き、マスコミがもてはやす”第三極”に期待しても、事態は何も変わりません。
問題は、本書で取り上げられている状況のままでは、社会が衰退する一方で、未来に希望を見出せず、その皺寄せが地方や弱者に押しつけられるということです。
あきらめと無関心が蔓延する中、どうしたら事態を改善できるのか、河川行政に関する豊富な知識と具体的な情報をもとに、わかりやすく解説している本書は多くの示唆を与えてくれます。
序章より一部抜粋します。
~~~
「河川行政では混迷が続いていた。
1997年の河川法で計画決定時に住民参加を可能とする手続が加わったが、旧来型の事業者主導の事業の進め方や計画の策定方法は、一部の例外を除いてほとんど変わらなかった。
今度こそは河川行政を転換させ、長期化して必要性を失ったダム事業を中止させ、住民の生活再建も含めて軌道に乗せる必要がある。
そのためには、要のポストにその職責にふさわしい人物を念のために推す必要があった。
「念のため」というのは、民主党のマニフェストを読めば、必ずやこの人が起用されるだろうと思う人物がいたからである。」