2012年11月22日
10月16日に開かれた利根川・江戸川有識者会議の議事録が国土交通省関東地方整備局のホームページに昨日掲載されました。
◆国交省関東地方整備局ホームページ
第7回利根川・江戸川有識者会議(2012年10月16日) http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000069766.pdf
有識者会議は概して、行政に重用されてきたいわゆる”御用学者”が委員の大半を占めますが、9月に再開されたこの有識者会議では、ダム行政に批判的な大熊孝氏、関良基氏、それに東京新聞論説委員の野呂法夫氏が正論を述べ、白熱した議論が展開されています。議事録がその様子を伝えています。
利根川・江戸川有識者会議の開催目的は、利根川水系の河川整備計画を策定することですが、民主党政権ではダム計画の上位計画である河川整備計画に八ッ場ダム計画を位置づけることが八ッ場ダム本体工事着工の条件とされたため、河川整備計画の議論は八ッ場ダム本体着工の是非に直結します。
10月16日の後、国交省は10月に一回、11月に三回有識者会議を予定していましたが、いずれもキャンセルとなりました。忙しい委員らに日程を抑えて貰っていながら、四回続けて会議が流れるというのは、異例のことです。
国交省は八ッ場ダム事業を正当化するために、科学的検証に耐えない治水計画を提示せざるをえず、上記の議事録を見てもわかるように、会議では具体的な問題を挙げて追及する大熊委員らの前で、守勢に立たされています。国交省の意向通りに議事を運ぼうする宮村忠座長は、10月16日の会議後のぶら下がりで、新聞記者らに議論の打ち切りを示唆しました。これは国交省の見解には説得力がなく、議論をすればするほど、綻びが見えてくることを恐れているためです。
宮村座長は日ごろから、政策(八ッ場ダム事業)を前に進める必要性を説いており、科学者として議論する必要性を認めていません。
有識者会議では、国交省を擁護する役目を負う小池俊雄東大教授が議論をそらそうと努めていますが、小池氏の説明も専門用語を駆使していかにも科学的であるように見えて、科学的論理性からは遠いものです。
民主党政権が失墜し、ダム行政に批判的な政治勢力が弱体化する中、国交省は次に有識者会議を開くタイミングを見計らっているのでしょう。これまでの有識者会議では、国交省の議論の進め方があまりに強引なことから、民主党から厳しい批判が出されて国交省の暴走を食い止めていましたが、ダム推進勢力が与党に返り咲けば、国交省はこれまで以上に強引な手法をとることが予想されます。