短時間の局地的な大雨(いわゆるゲリラ豪雨)に備えるため、国交省は100mm/h安心プランをを2013年度から始めています。
http://www.mlit.go.jp/river/kasen/main/100mm/
市町村および河川管理者、下水道管理者等が、特定流域を対象に100㎜/h降雨に対応するプランを策定して、国交省に登録の申請を行い、登録されれば、登録地域について、流域貯留浸透事業の交付要件が緩和され〔注〕、社会資本整備総合交付金の重点配分を受けられるというものです。
〔注〕流域貯留浸透事業において500 ㎥以上の貯留機能を持つ構造を300㎥以上に緩和するというものです。社会資本整備総合交付金の交付対象事業の要件は、こちらをご覧ください。⇒ http://www.mlit.go.jp/common/001197130.pdf
今までに100mm/h安心プランに登録された流域は21カ所で、全国的にみれば、ほんの一部です。
http://www.mlit.go.jp/common/001219561.pdf
国交省サイトの上記ページによれば、さる1月30日に新たに茨城県水戸市(那珂川水系・桜川)と愛知県名古屋市(庄内川水系・堀川)が新たに登録されています。
いわば経済特区のようにほんの一部の流域だけ、優遇して100㎜/h降雨に対応するようにしようというものです。
しかし、本当に求められているのは、ほんの一部の流域ではなく、ゲリラ豪雨に対して各地域で対応できるような全体の底上げをするような雨水排水対策です。
無用なダムに巨額の公費を使うのをやめて、その公費を喫緊の課題である、このような雨水排水対策の実施に回すべきです。
最近は都市部のヒートアイランド現象と、地球温暖化の影響のためか、ゲリラ降雨がしばしば発生するようになりました。東京でも時間雨量70~100㎜以上の雨が降ることもあるようになりました。
確率降雨と時間あたり雨量との関係は地域によって異なりますが、たとえば、東京都清瀬市下水道の資料(公共下水道雨水新規事業評
価)には、次のように書かれています。
http://www.city.kiyose.lg.jp/s002/030/040/110/2306.pdf
1年確率降雨:時間あたり30mm降雨(現況の排水能力)
5年確率降雨:時間あたり50mm降雨(下水道の計画排水能力の目標値、計画降雨)
10年確率降雨:時間あたり75mm降雨
30年確率降雨:時間あたり90mm降雨
50年確率降雨:時間あたり95mm降雨
一般に都市の下水道の雨水排水計画は清瀬市と同様、時間あたり50㎜程度が目標値であって、現状はそれを下回っているところが多いので、上記のようなゲリラ豪雨が降れば、確実にあふれることになります。いわゆる内水氾濫です。
ダムは100年確率降雨に対応して計画され、下流域を1/100の降雨の洪水から守るためにダムが必要とされていますが、下流域の都市の下水道の雨水排水計画は50㎜程度を目標としていることが多いので、ダムで洪水調節をしても、1/100の雨が降れば、ダムがあろうがなかろうが、下流域は内水氾濫で溢れることになります。
石木ダムで氾濫を防ぐという川棚川下流域、安威川ダムで氾濫を防ぐという安威川下流域がまさしくそうです。1/100の雨に対応するために石木ダムや安威川ダムが必要とされているにもかかわらず、実際に1/100の雨が降れば、ダムがあっても、下流域は内水氾濫で溢れてしまうことになります。
ダム事業者が宣伝するダムの治水効果は虚構であって、誇大宣伝です。