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霞ヶ浦導水裁判控訴審の最終口頭弁論-4/27、東京高裁

 那珂川の漁協が霞ヶ浦導水事業の工事差し止めを求める控訴審において、3月30日、東京高裁で和解協議が行われ、高裁から和解案(最終案)が示されました。漁協側と国がこの和解案を受け入れれば、4月27日の口頭弁論で和解が成立することになります。

 4月27日(金)の口頭弁論は東京高裁812号法廷で、午後3時からです。
 おそらく和解が成立すると思います。霞ヶ浦導水裁判は長い闘いでした。今年で10年目になります。

◆2018年3月31日 朝日新聞茨城版
ー「国側、最大限の譲歩」 霞ケ浦導水、高裁が和解案 /茨城県ー

 霞ヶ浦導水事業をめぐり、茨城、栃木両県の漁協関係者らが国に対して建設差し止めを求めている訴訟の控訴審は30日、東京高裁で和解協議があり、高裁が和解案を示した。漁協側か「一方的」と批判してきた国側から、かなりの程度の譲歩を得て決着しそうだ。

 漁協側弁護団長の谷萩陽一弁護士は、和解案について、「応じるかは組合の意向だが、かなり踏み込んだ和解案になった」と話し、「高裁は国側から最大限の譲歩を得たという認識を持っている」という。

 控訴審で主に争われているのは、那珂川からの夜間の取水の停止期間や、霞ヶ浦から河川への「逆送水」についての運用方法だ。

 漁協側は、取水の停止期間について、アユの産卵期に取水すると、孵化(ふか)したばかりのアユが吸い込まれ数が減り、生態系に影響を及ばす恐れがあるとして、10~4月の停止を主張。一方、国側は10、11月を主張していた。

 和解案は、夜間の取水の停止期間について、「毎年10月1日から翌年1月末日」とした。アユの数に関する調査も国側に求めている。

 渇水対策などを目的として霞ヶ浦から那珂川に送る「逆送水」については、漁協側は水に含まれるカビ臭物質が涸沼(ひぬま)のシジミに付着し、それに伴う漁業被害が出ると主張。「逆送水」の運用に関する何らかの条件を求めたが、国側は条件なしの運用を求めていた。

 和解案は、国側がシジミヘの被害を与えない方法を検討した上で、「逆送水」の運用を那珂川の「渇水時」として、水道や農業用水の「水利利用者から送水の要請があった場合」に限り、漁協側の意見を聴きながら段階的に実施するとした。

 また、国側が一定期間、少量の試験的な「逆送水」を実施し、シジミヘ付着する恐れのあるカビ臭物質が那珂川の水質に与える影響の調査も求めている。

 一方で、これらの運用方法は、「本格運用」の方法を決定するまでのもので、「変更することができる」としている。ただ、実際に「本格運用」が始まる時期などは定められておらず、和解案で示された運用方法は暫定的なものになる可能性もある。

 はかにも、和解案は事業の実施について、国側か「漁業への影響に配慮し、意見を尊重」し、両者が「本格運用」について意見を交換する機会などを提示している。

 次回期日は来月27日に設定され、漁協側の各組合は和解案を受け入れるかを検討し、高裁に通知する。

 霞ヶ浦導水事業に関する訴訟は、那珂川流域の漁協などが2009年、事業か漁業権を侵害するとして水戸地裁に訴訟を起こしたのが始まり。地裁は15年に訴えを棄却している。  

 事業は那珂川と利根川の渇水対策、霞ケ浦の浄化などを目的として、総延長約45.6㌔の地下トンネルで両河川と霞ケ湘を結び水を相互にやり取りし合う巨大公共事業。(比留間陽介)