6月7~8日にニホンウナギの保護策を協議する非公式の国際会議が都内で開かれました。この会議には日本、韓国、台湾が参加し、シラスウナギを養殖池に入れる量の上限は現状を維持することを確認しました。上限を減らす案もあったのですが、中国の欠席や、科学的な根拠による資源量の把握ができていないことを理由に見送られました。
関連記事をお伝えします。
◆2018年6月6日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20180607/k00/00m/020/163000c
ーシラスウナギ不漁 ウナギ高騰、打開なるか 日韓台協議へー
7、8の両日、非公式協議を都内で 中国が欠席
ウナギが高値となっている。今漁期は稚魚のシラスウナギが不漁で取引価格が上昇しているのに加え、来年以降の品薄懸念も強まり成魚を買いだめする動きも広がっているからだ。7、8の両日には、養殖に使う稚魚の年間上限量を決める周辺国・地域との非公式協議があり、日本は資源保護を強化する方向で議論をリードしたい考えだ。【加藤明子】
「ウナギの仕入れ値が高く、確保に苦労した。今年は特売を縮小せざるを得ないかもしれない」。東京都練馬区などが地盤のスーパー「アキダイ」の秋葉弘道社長は7月20日と8月1日の土用の丑(うし)の日を前に渋い表情だ。在庫が尽きたら、追加発注ができるかが不安だという。
ウナギ養殖生産者でつくる日本養鰻漁業協同組合連合会の聞き取り調査によると、今年3月中旬以降の成魚の取引価格は1キロ(標準サイズ=5匹)当たり5300円と過去最高水準だ。同連合会では3月にウナギの問屋や専門店に「今年はサイズを大きくして出荷するので、例年なら1匹で1人前のうな重にするところを今年は1匹で2人前にしてほしい」と異例の要請をした。標準サイズは1匹約200グラムだが、今年は時間をかけて約350グラムまで大きく育て、“資源”を有効活用するという苦肉の策。品薄だけに、おおむね了承を得たという。
シラスウナギ漁は11月から翌年4月にかけて行われる。今漁期は1月までの漁獲量が前年同期の13%と極度の不漁。2月以降は持ち直したものの、最終的には前期比29%減の約14トンだった。漁期前半が不漁だったため、シラスウナギや成魚を急いで確保する動きが強まり、取引価格は高止まりしている。
水産庁などによると、2000年代前半には1キロ当たり20万円前後が相場だったシラスウナギの取引価格は、近年では100万~200万円台。輸入を含むウナギの国内供給量は00年の16万トンをピークに減少し近年は3万~5万トンにとどまる。
日本や韓国、台湾は7、8の両日、ウナギの資源管理に関する非公式協議を東京都内で開き、養殖に使う稚魚の年間上限量について話し合う方針。来年5~6月には、ワシントン条約締約国会議が開催され、ウナギなどの資源保護が議論される可能性がある。水産庁はワシントン条約による国際取引制限などを回避するため、今回の非公式協議で資源保護を強化する方向で議論を主導したい考えだ。ただ、規制強化に消極的な中国が今回は欠席するため、どこまで実効性のある対策を打ち出せるかは見通せない。
ウナギの養殖
ウナギは完全養殖の技術が確立されておらず、国内で取ったり、輸入したりした稚魚「シラスウナギ」を育てる必要がある。養殖池に入れられたシラスウナギは半年から1年半ほど育てた上で出荷される。価格の高騰を受け、密漁や密輸も行われているとされる。一方、天然ウナギの漁獲量は年々減少し、2015年は国内流通量の0.001%にとどまる。
◆2018年6月8日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31549480Y8A600C1EA1000/
ーウナギ養殖量「削減」先送り 国際会議、中国欠席でー
減少が危惧されているニホンウナギの保護策を日本と韓国、台湾で協議する国際会議が8日、閉幕した。稚魚のシラスウナギを養殖池に入れる量の上限は現状を維持することを確認。上限を減らす案もあったが、中国の欠席や科学的な根拠による資源量の把握ができていないことを理由に見送られた。ウナギ資源を将来にわたって守れるかどうかは不透明なままだ。
ニホンウナギは日中韓台が2014年の会議で、シラスウナギを養殖池に入れる量を14年実績より2割少ない数量を上限とすることを決めた。日本の上限は21.7トンで、中国の36トンに次いで2番目に多い。
日本で育てるウナギの大半は、天然のシラスウナギをとった後に養殖池で育てて出荷される。今年はシラスウナギが不漁に見舞われ、4月末時点でシラスウナギを国内の養殖池に入れる量は14トンと、前年同期に比べて約3割減った。相場も1キロ300万円と前年の3倍に上昇した。
不漁の影響は店頭価格に波及している。親のウナギ相場も前年比4~6割高く、かば焼き専門店では、うな重1杯を500~千円値上げした店が多い。値上げで「消費量が前年比で3~4割落ちる可能性がある」(輸入商社)との予測もある。
今回の会議では資源管理の徹底に向けて上限を減らす意見も出た。ただ、養殖量の上限が最も多い中国の不在や科学的根拠が不明確なため議論は低調だった。そのため、科学的な根拠にもとづいて資源管理を議論するために専門家を集めた会議を9月にも開くことを決めた。
ニホンウナギをめぐっては19年5月にも開かれるワシントン条約締約国会議で資源状況について議論される可能性がある。資源管理の状況が不十分と判断されると、国際取引が厳しく制限される。ワシントン条約ではヨーロッパウナギがすでに国際取引の規制対象となっている。
日本はウナギ消費量のうち約6割を海外からの輸入に頼る。国内養殖も中国などからシラスウナギを輸入している。国際取引が制限されれば国内供給が大幅に減り、価格上昇の要因にもなる。
◆2018年6月8日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180608/k10011469441000.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter
ー減少深刻なウナギ 科学者会議立ち上げ回復図るー
漁獲の減少が深刻化しているニホンウナギの資源管理を議論する国際会議が閉幕し、今後の規制強化を視野にウナギの資源量などを分析する科学者による会議を立ち上げることで合意しました。
ニホンウナギの資源管理の在り方を毎年決めている国際会議は、日本と韓国や台湾の代表が出席して東京で7日から2日間の日程で行われました。
ニホンウナギをめぐっては、養殖に使う稚魚のシラスウナギが不漁で、水産庁によりますと、ことし4月までの半年間に国内の養殖池に入れられた量がこの時期としては2番目に少なく、ウナギの取引価格も高騰しているということです。
会議ではこれを踏まえて、資源を回復させるため現在の規制を強化する必要があるとの意見が出されましたが、「どこまで強化すれば効果があるのか科学的な根拠がない」などとの反対意見が出され、ことし秋からの来シーズンでの規制強化は見送られました。
その一方で、今後の規制強化を視野に、ウナギの資源量の状態や回復の見通しなどを分析する科学者による会議を立ち上げ、ことし9月をめどに会合を開くことで合意しました。
ただ今回の会議にはシラスウナギの漁獲量の多い中国が欠席し、合意が得られていないため、日本などが今後、中国に対して、科学者による会議への参加を呼びかけることにしています。
◆2018年6月9日 TBS
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20180609-00000005-jnn-bus_all
ーニホンウナギ稚魚、養殖使用数の上限変えずー
絶滅が危惧されているニホンウナギの資源管理に関する国際会議が2日間の日程を終え、 養殖に使う稚魚の数の上限を変えないことで一致しました。
7日から8日まで東京で開かれた国際会議では、今年11月から来年10月までの養殖に使うウナギの稚魚の数の上限について、話し合われました。
会議では、資源保護を促す意見も出ましたが、上限の設定に科学的な根拠がないことや、稚魚を最もとっているとされる中国が4年連続で欠席したことなどから、参加した日本、韓国、台湾は今年は上限を変えないことで一致しました。
また、これまで行っていなかった科学的な根拠に基づく管理の仕方を導入するため、今年の9月にも新たな会合を行う方向で調整するとしています。
ニホンウナギをめぐっては、養殖に使う稚魚の量がこの時期としては過去2番目に不漁となっていて、取引価格も高騰しています。
◆2018年6月9日 テレビ朝日
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000129062.html
ーウナギの国際会議 科学的根拠で資源管理を議論ー
絶滅が危惧されているニホンウナギの資源保護を巡る国際会議が都内で開かれ、今後、科学的な根拠に基づいて資源管理を議論していくことで一致しました。
会議には日本、韓国、台湾が参加し、規制強化を嫌う中国は4年連続で欠席しました。ニホンウナギの生態の把握は難しく、これまで科学的根拠に基づいての資源管理は話し合われてきませんでした。しかし、今年4月までの漁期でウナギの稚魚であるシラスウナギが過去2番目の不漁だったこともあり、各国から保護の強化を求める声が上がり、科学者が集まって検証する新たな会議を9月にも開くことになりました。その会議の結果を受け、早ければ来年の国際会議で新たな制限が提案されます。
◆2018年6月9日 産経新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180609-00000072-san-bus_all
ーウナギ、科学的に資源管理を 中国不在で議論ー
絶滅の恐れのあるニホンウナギの資源管理について話し合う日本と韓国、台湾の非公式協議が7、8の両日、東京都内で開かれ、科学的根拠に基づく資源管理措置の導入に向けた議論を始めることで一致した。ただ、規制強化に消極的な中国が4年連続で欠席。中国不在で進む資源管理は効果に疑問も出そうだ。
非公式協議では、ニホンウナギの稚魚「シラスウナギ」を養殖に回す上限数量について、日本は昨年に続き21・7トンとすることも決定した。シラスウナギは東アジア全域で不漁で、日本が前回漁期(昨年11月~今年4月)に養殖に使った量は14トンにとどまった。
ニホンウナギの生態は解明されていない部分が多い。このため「科学的根拠に基づいてシラスウナギを取る量を議論するべきだ」などの意見が出たという。9月下旬にも、データの扱いなどを議論する。
来年5~6月のワシントン条約締約国会議では、ニホンウナギの国際取引の制限が議論される可能性もある。日本はそうなる前に、中国を協議の場に引き戻し4カ国・地域が一体となって持続的な資源利用に努めている姿をみせたい考えだ。
ウナギの需要が高まる夏を前に、日本養鰻漁業協同組合連合会はウナギを通常の2倍近い大きさに育てて出荷する方針を決めた。「通常はウナギ1匹でうな重1人前のところを2人前にする作戦」(関係者)で、流通業界からはおおむね理解を得ているという。