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石木ダム予定地住民描くドキュメンタリー、九州各地で先行上映

 長崎県の石木ダム予定地、川原(こうばる)地区に暮らす住民の暮らしを取り上げたドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」の上映が九州各地で始まり、各紙の地方版が大きく取り上げています。
 関東地方では東京・渋谷のユーロスペースで7月7日(土)から上映されます。

 関連記事では、映画が”水没住民”と呼ばれる人々が半世紀のダム計画に屈することなく、美しい里山で明るく楽しく生きているさまを活写していること、博報堂のCMプランナーだった山田監督が作品に込める思いなどを詳しく伝えています。

★劇場情報
http://kamanaka.com/news/8140/

◆2018年6月5日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13527454.html?iref=pc_ss_date
ーホタルの里、ダム建設に翻弄される人々 ドキュメンタリー映画、順次全国公開ー

 長崎県と佐世保市が川棚町に建設を計画している石木ダム。夏にはホタルが舞う建設予定地の川原(こうばる)地区に住む人々の暮らしを撮影したドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」が、順次公開される。

ダム建設に翻弄(ほんろう)されながらも暮らす13世帯54人の姿を描いている。

 鹿児島市で9日から、熊本市では23日から先行上映される。

全国上映は東京・渋谷で7月7日から始まり、その後、順次全国展開を予定している。前売り券は、ペアチケットで送料込み2600円。公式サイト(http://hotaruriver.net/別ウインドウで開きます)で購入できる。

◆2018年6月8日 毎日新聞福岡版
https://mainichi.jp/articles/20180608/ddl/k40/200/340000c
ー「ほたるの川のまもりびと」 長崎・石木ダム水没予定地の住民ドキュメンタリー 来月「東田シネマ」で上映ー

里山や人柄の良さ発信

 長崎県と佐世保市が同県川棚町に計画する石木ダムで、水没予定の川原(こうばる)地区に暮らす住民を追ったドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」(2017年)が7月27~29日、八幡東区東田の北九州市環境ミュージアムで上映される。山田英治監督(49)が北九州入りし、作品に込めた思いを語った。【長谷川容子】

 山田監督は博報堂の元CMプランナー。東日本大震災を機に、企業より社会の課題解決に目が向き始め、50年近く議論になっている石木ダム事業のことを知ったという。「現地に足を運ぶと、家の中にホタルが飛び込んでくる豊かな自然環境と大家族のような社会があった。未来のヒントになる地域が失われるのは不条理だと思った」。会社員との二足のわらじで、休みのたびに現地へ足を運び、1年かけて撮影。製作費はインターネットを通じて資金を募るクラウドファンディングで集めた。

 カメラは地区の13世帯の生活を淡々と映し出す。「ダム問題を糾弾する視点で描く方法もあるが、ぼくは里山の良さやそこにある暮らしのすてきさ、住民の人柄を前面に出す方が共感を得られるのではないかと思った」と山田監督。バリケード前の座り込みなど、暮らしを守るための闘いもあるが、人々の明るい表情が印象的だ。「お母さんたちは『つらいよ』と言いながらも、みな元気でエネルギッシュ。前向きに楽しくやらないと続かないと奮い立たせているんだと思う」と語る。

 3月末に退職し、株式会社「社会の広告社」を設立した。「僕の発想の軸足は今も広告戦略にある。世の中が目を背けがちな社会的な課題を、より軽やかな楽しい方法で誰もが語れるよう問題提起していきたい」と話す。

 上映は、館内のドームシアターを利用する「東田シネマ」の月例会で、各日(1)午前10時半(2)午後1時(3)同3時半(4)同6時--の4回。連携する北九州市立大の「北方シネマ」でも8月10日午後6時半に上映する。〔北九州版〕

◆2018年6月10日 朝日新聞佐賀版
https://digital.asahi.com/articles/ASL5Y619ZL5YTTHB00B.html?iref=pc_ss_date
ーダム予定地描いた映画上映 反対集落、笑顔の日常ー

 佐賀県に接する長崎県川棚町で、同県と佐世保市が計画する石木ダム。水没予定地の同町川原(こうばる)地区で生きる人たちの日常を切り取ったドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」(2017年制作)が22日から、佐賀市松原2丁目のミニシアター「シアターシエマ」で上映される。

 石木ダムは建設が決まって40年以上たつが、まだできていない。今も建設に反対する地元住民と、ダムを造りたい行政側との対立が続く。

 86分の映画が描くのは、水没予定地に暮らす13世帯約50人の住民たちの暮らしぶりだ。

 山田英治監督(49)らは2015年秋から1年かけ、稲作や手作りの祭りの風景、キャッチボールをする親子や川遊びをする子どもらを追った。「人が主役」と、登場する住民には一人ひとり名前の字幕をつけた。

 山田監督は「ダム反対というと過激な人たちというイメージがあったが、たまたまそこに暮らす人。すてきだな、いいなと思ったことを撮った」と話す。座り込みの現場で赤ちゃんと触れ合い笑顔を見せる女性、建設予定地に建てた小屋で番をしながらお茶を飲むおばあちゃんたち――。反対の言葉がにぎにぎしい看板の前景は緑豊かな農地だ。

 山田監督によると、完成した映画を川原地区で上映すると、改まった「映画」というより、地域の人たちの素朴な日常が映ったホームビデオを見ているような、和気あいあいとした反応だったという。

 上映は28日まで。料金は一般1700円、大学・高校生1500円、小・中学生千円、幼児900円、シニア1100円。

山田監督に聞く
 佐賀での上映にあたり、山田監督はシアターシエマを訪れ、記者会見をした。

 石木ダムとの関わりは、自身がつくったNPO法人の活動仲間に「行ってみないか」と現地行きを誘われたのがきっかけだ。

 訪れた川原地区は、小川や棚田の風景が広がっていた。出会う子どもたちはのびのびしていて、いたずら好き。隣に誰が住んでいるか分からない都会より輝いて見えた。

 見せてもらった1枚の写真に、涙が止まらなくなった。

 1982年の強制測量の様子だった。機動隊が投入されるなか、子どもがはちまきをしめて、反対を叫んでいた。「子どもまで前面に出ないといけないことって、何なんだ」。不条理さに悔しさがこみ上げた。

 帰りの飛行機で企画書を書き上げた。クラウドファンディングサイトで制作費を集めながら、勤めていた大手広告会社では有給休暇を使い、NPO活動として撮り始めた。集落の民家に泊まり込んでの撮影は「癒やされにいくみたいな感じだった」と振り返る。

 かつては仕事で大手企業のCMなどを手がけ、原発推進のキャンペーンに関わったこともある。「エコな原発は正義と思っていたのかもしれない」。反対運動をしている人をどこか「変わった人」という目線で見ていた。

 そんな自身に転機が訪れる。2011年の東日本大震災。原発事故も重なり甚大な被害を受けた福島県は両親の出身地で、ふるさとと思ってきた。二十数年やってきた商業広告の仕事を受けるのをやめ、社会的なテーマを扱うようになった。

 そんななかで出会った石木ダム計画は、苦難を受けたふるさとに重なるようにも感じた。“広告屋”として「どうやったら広く伝わるか」を考え、ドキュメンタリーという手法を選んだ。対立を前面に出さないのは、多くの人に見てもらいたいという戦略でもある。

 「反対から議論は生まれない。対立ではなく、その間を大事にしたい」と語る山田監督。伝えることで世の中を良くできると信じている。(杉浦奈実)
     ◇
 石木ダム 長崎県と佐世保市が川棚町の石木川に計画する、高さ55・4メートル、長さ234メートル、有効貯水量518万トンのダム。治水・利水が目的といい、総事業費は285億円。1975年に国が事業を採択。82年には県が機動隊を動員して強制測量を実施し、建設に反対する住民らと衝突した。2013年になり、国は土地収用法に基づく事業認定を告示し、強制収用の道を開いた。これに対し、反対する地権者らは「水源は足りている」などとして、国に事業認定の取り消しを求める行政訴訟を長崎地裁に起こしている。

◆2018年6月9日 毎日新聞熊本版
https://mainichi.jp/articles/20180609/ddl/k43/040/455000c
ードキュメンタリー映画 石木ダム水没予定地(長崎)の日常 山田監督「住民の思い伝えたい」ー

鹿児島(9~15日)、熊本(23~29日)で上映へ

 長崎県と同県佐世保市が進める石木ダム事業(同県川棚町)に反対する水没予定地の住民13世帯の日常を撮ったドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」が鹿児島、熊本両県で上映される。メガホンを執った山田英治監督(49)=東京都=は「豊かな自然に囲まれた里山の春夏秋冬を通して、美しい古里を守ろうとする住民の思いを知ってほしい」と呼びかける。【田中韻】

 石木ダム事業は長崎県が1972年に予備調査を始め、82年に機動隊を動員して強制測量したことから地権者との対立が深刻化した。現在は水没予定地の川原(こうばる)地区に13世帯が住む。

 山田監督は今春まで大手広告代理店のCMプランナーを務め、過去には原発をPRする東京電力のキャンペーン広告なども手がけた。

しかし、2011年の東日本大震災や東電福島第1原発の事故に衝撃を受け、社会問題に取り組むNPO法人「Better than today(ベター・ザン・トゥデイ)」を設立した。

 知人の紹介で川原を訪れたのは15年春。その年の秋から1年かけて川原に通い、13世帯約50人の暮らしや子供たちの成長、花鳥風月などを撮影した。

 当初はダム建設に反対する住民らを「過激で怖い人たちかも」と身構えていたという山田監督。しかし、会ってみると誰もが温和で朗らかで、たちまち魅了された。「この人たちの暮らしを知ってほしい」。東京に帰る機中で一気に映画の企画書を仕上げた。

 撮影中、老いた住民が「人生のほとんどがダム反対運動だった。いつまで続けなくてはいけないのか」と漏らした一言が胸に刺さった。ダム計画のために地域は分断され、多くの住民が古里を去らなければならなかった。

 山田監督は今春、広告代理店を退職。これからのクリエーター人生を通じて社会問題を啓発していきたいという。「川原の人たちは不条理に古里を奪われようとしている。そのことを伝えるのは自分の役目です」

 上映は鹿児島市のガーデンズシネマ(099・222・8746)で9~15日、熊本市中央区のDenkikan(096・352・2121)で23日~29日。

 ■ことば
石木ダム
 洪水対策や長崎県佐世保市への水道用水供給が目的。総貯水量約548万トン。水没予定地には13世帯が住んでおり、農地や宅地など約15万平方メートルが未買収。建設差し止め訴訟で地権者側は「ダムは治水・利水面ともに必要ない」と主張している。県は土地を強制収用するため、県収用委員会に裁決申請し審理中。

◆2018年6月15日 佐賀新聞
http://www.saga-s.co.jp/articles/-/230720
ー石木ダムの必要性問う シエマで上映会
 映画「ほたるの川のまもりびと」 住民の穏やかな日常描くー

 長崎県と佐世保市によるダム建設予定地・川棚町川原(こうばる)地区(長崎)の人々の生活を撮影したドキュメンタリー「ほたるの川のまもりびと」が22日から佐賀市松原のシアター・シエマで上映される。長崎県佐世保市の水不足を背景に始まった石木ダム建設。「ただ普通の暮らしをしたい」―。映画監督の山田英治さん(49)は、川原地区で反対運動をする住民たちの穏やかな日常に迫り、ダムの必要性を問い直している。

 石木ダムは1975年に事業が開始した。川原地区での暮らしや家を守りたい地元住民とダム建設を推進する行政側の間で衝突している。地区を立ち退いていった住民もいて、現在は13世帯54人が暮らす。

 製作のきっかけになったのは3年前の春、知人から川棚町を案内されたことだった。川や棚田に囲まれた風景、川で泳ぐわんぱくな子どもたち。自然豊かな町にひかれた。そして、色あせた一枚の写真が山田さんを突き動かした。

 1982年にあった強制測量で、子どもたちが「帰れ!」と声高に叫んでいる。「子どもたちが反対運動で前面に出ていかないといけないのはなんだろうって。この不条理はほんと悔しいと思った」。止めどない涙があふれてきた。

 ただ、映画で描かれるのは淡々とした町の日常だ。てらてらと明かりがともる地区の祭り、キャッチボールをする父親と娘、建設予定地に構えた番小屋でおしゃべりするおばあちゃんたち。山田さんは「反対運動する人は過激な人。そんな先入観だった。反対運動を中心に描くんじゃなくて、自分がいいと思うものを描きたかった」という。

 山田さんは大手広告会社に勤め、CMプランナーとして企業の広告制作を担当していた。転機になったのは2011年の東日本大震災。それまでは、原発を推進する側としてCMを打っていた。「原発はエコだし、正義と思い込んでいた」。20年ほどやってきた商業広告の仕事を受けないと決め、現在は社会問題を中心にした制作に取り組む。

 反対運動を直接的に表現しないのは、戦略的な部分もある。「『反対』ってことから分断は生まれても、議論は生まれない。個人だけで表現した小さい世界じゃなく、『広告屋』としてより広く伝えていきたい」と語る。