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長崎石木ダム訴訟 国の事業認定取り消し認めず 原告敗訴 

 半世紀以上前からの長崎県のダム計画に13世帯の水没住民が団結して反対している石木ダム。
 治水においても利水においても不要であることが明らかな石木ダムですが、強制収用を可能とする事業認定に異議を唱えた原告住民らに対して、長崎地裁は原告敗訴の判決を言い渡しました。やはり、この国の司法は、まともにダム問題に向き合う気がないようです。

◆2018年7月9日 NHK長崎放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20180709/5030001292.html
ー石木ダム 原告の訴え退けるー

 長崎県と佐世保市が川棚町に建設を進めている石木ダムについて、建設に反対する地権者などが国に事業認定の取り消しを求めた裁判で、長崎地方裁判所は、「ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のための必要性がある」などと指摘し、原告側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

 石木ダムは、県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に285億円をかけて川棚町に建設を進めているダムで3年前、反対する地権者など100人余りが、「ふるさとが奪われる」などと国に事業認定の取り消しを求める訴えを起こしました。

 これまでの裁判で、地権者側が、必要性の根拠とされる水需要の予測は結論ありきで、地権者を強制的に排除してまで不要なダムを作るべきではないなどと主張したのに対し、国側は、水需要の予測や治水計画は適正で、ダムは必要かつ有効であり得られる公共の利益は大きいなどと主張していました。

 9日の判決で長崎地方裁判所の武田瑞佳裁判長は、「水需要の予測や治水計画に合理性がないとはいえない。石木ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のための必要性がある」と指摘しました。
 その上で、「ダム事業で得られる利益は水道用水の確保や洪水調整といった地元住民の生命の安全に関わるもので非常に大きい。これに対し原告らがその土地で培ってきた暮らしなど、失われる利益は大きいとは言えない」などとして原告側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20180709/5030001293.html
ー国は「主張認められた」と評価ー

 今回の判決についてダムの事業認定を行った国土交通省九州地方整備局は、「これまでの国の主張を認めていただいたものと評価している」とコメントしています。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20180709/5030001296.html
ー中村知事「公益性認められた」ー

 長崎県の中村知事は、「司法の場で、石木ダムの必要性や公益性が認められた。今後はダム事業の趣旨について地権者に理解してもらい、ご協力を得たい」と述べました。

その上で、ダム工事に必要な土地の強制収用については「いつまでも宙に浮かせたままではいけない。私の責務でもあるので任期中には方向性をしっかりとつけたい」と述べました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20180709/5030001297.html
ー地権者が県と話し合いー

 判決の後、原告の地権者などは県庁を訪れ、県の担当者との話し合いに臨みました。

 まず原告側の弁護士が「石木ダム計画が撤回されるまで闘うという決意はこの不当判決で何ら揺らぐものではない。居住者らの人権を守るためにこれまで以上に闘い続けることをここに宣言する」と声明文を読み上げました。

 判決を受けて、地権者から土地の強制収用を進めるのか、問われた県の担当者は、「必要な事業であると考えている。総合的に判断をしたい」と答えていました。

 地権者の1人の岩下和雄さんは、「たとえ事業が始まり、強制収用されたとしても生きている限り、そして私が死んでも子どもたちが私たちの主張が通るまで闘い続けていく」と訴えていました。

◆2018年7月9日
https://mainichi.jp/articles/20180710/k00/00m/040/100000c
ー長崎石木ダム訴訟 国の事業認定取り消し認めず 原告敗訴ー

  長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)で、水没予定地に住む地権者ら109人が、国の事業認定の取り消しを求めた訴訟で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は9日、請求を棄却し、一部を却下する判決を言い渡した。原告側は控訴する方針。

 石木ダムは、佐世保市への水道水供給や、川棚川流域の洪水防止を目的に1975年、建設事業に着手した。県などは未買収の事業用地を取得するため2009年11月、土地収用法に基づき国土交通省九州地方整備局に事業認定を申請。13年9月に認められ、強制収用が可能になった。地権者らは15年11月に提訴していた。

 原告側は弁論で、「水の需要予測が過大」などとして「利水、治水面共に事業計画の根拠がなく、ダムは必要ない」と主張していた。武田裁判長は判決で、「利水、治水共に事業計画は国の手引きや指針に基づいており、不合理ではない」と認定。「地権者らが移転することで失う利益よりも、地元住民の生命の安全などダム建設により得られる利益の方が大きい」と必要性を認め、土地収用の公益性も認めた。

 地権者の一人で、原告の岩下和雄さん(71)は「残念な結果に終わったが、控訴審でもダムは必要ないと訴えていく。今後も抗議を続けていく」と話した。国交省九州地方整備局は「これまでの主張を認めていただいたものと評価している」とコメントした。【浅野孝仁、綿貫洋】

◆2018年7月9日 日本経済新聞(共同通信配信)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3276821009072018ACYZ00/
ー国事業認定取り消し認めず 長崎・石木ダム ー

  長崎県川棚町に県などが計画している石木ダム建設を巡り、反対する地権者らが国の事業認定の取り消しを求めた訴訟の判決で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は9日、「国の判断は適法」として請求を棄却した。

 石木ダムは1962年、長崎県佐世保市の水不足解消や川棚町の治水を理由に県や同市が計画。一部の地元住民らが土地の買収に応じず、強制収用に向けた手続きの一環として、国が2013年に事業認定した。

 判決で武田裁判長は「ダム建設は水道用水の確保や洪水対策のために必要で、公共の利益が認められる」と指摘。一方、移転対象となる67戸については代替宅地が用意されるなど生活再建の措置がされており「失われる利益が大きいとは言えない」とし、土地収用法の要件を満たすとした国の判断は適法と結論付けた。

 原告は地権者と事業に反対するため一坪地主となった共有地権者ら約100人。判決は一部について「原告適格がない」として訴えを却下した。

 石木ダムを巡っては他に、住民や支援者ら計約600人が工事差し止めを求める訴訟を長崎地裁佐世保支部に起こしている。〔共同〕