2015年9月の関東・東北豪雨で750棟の家屋が全・半壊し、床上・床下浸水も667棟に上った栃木県小山市では、新潟県が先進的に取り組んでいる「田んぼダム」の整備が広がり始めていると報道されています。
以下の記事によれば、土地改良区が導入した田んぼダムの水害抑制効果に栃木県や小山市も注目しているとのことです。
◆2018年7月14日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20180713-OYT1T50047.html
ー「田んぼダム」で豪雨に備え…水ためる間に避難ー
西日本を記録的豪雨が襲い、気象庁が九州から近畿までの広い範囲で「大雨特別警報」を出してから、13日で1週間。過去に大きな水害を経験した栃木県内でも「明日は我が身」(福田知事)として、被害低減に向けた対策が進んでいる。間もなく発生から3年となる関東・東北豪雨で750棟の家屋が全・半壊し、床上・床下浸水も667棟に上った小山市では、水田の貯水能力に目をつけた「田んぼダム」の整備が広がり始めている。
「水田に水をためている間に、避難する時間的な余裕が得られる」。小山市などで約2200ヘクタールの田畑を管理する思川西部土地改良区の平本隆幸事業係長(48)は、田んぼダムの有効性について、そう説明する。
同改良区では、関東・東北豪雨で水路から水があふれ、約1週間にわたって田畑が浸水した。最もひどい時で、約100ヘクタールの田畑が、約1メートルの高さまで水につかった。
この水害をきっかけに、同改良区は対策を検討。新潟県で先進的に取り組みが進む、田んぼダムの県内初導入を始めた。
豪雨時には、川などからあふれた水が一気に宅地や道路に押し寄せ、洪水が起こる。田んぼダムは、水田に一時的にためた雨水を、排水口に取り付けた「落水升」で調整しながら少しずつ水路に流し、洪水被害を軽減する。落水升は直径4センチの小さい穴の開いた板で仕切られており、排水時も一気に水が出ていかない構造になっている。
同改良区が宇都宮大の研究者に依頼し、2016年に約4ヘクタールの水田に落水升を8基設置して実施した調査では、「20年に1度」の規模の大雨でも、貯水能力を発揮するとの結果が出た。
これを受けて同改良区は、17年度からの5年間に、改良区の南側部分約1200ヘクタールで、計3500基の落水升の設置を計画。まずは昨年11月から今年3月までに、560基を設置した。完成時の貯水能力は約35万トンで、東京ドーム(124万立方メートル)の4分の1以上の水をためられることになる。総費用は約5000万円で、国や県、同市の補助金を活用している。
田んぼダムの水害抑制効果には、県や小山市も注目しており、小山市内では同改良区以外にも、落水升を設置する地区が出てきた。
平本さんは「最大のメリットは、維持管理の手間がほとんどかからないこと。水害対策に水田を利用していきたい」としている。
◆関東・東北豪雨=2015年9月9~11日、台風18号から変わった低気圧と台風17号の影響で、関東、東北地方は記録的な大雨となった。栃木県では、死者3人、負傷者6人、家屋全壊24棟、半壊967棟、床上・床下浸水5106棟などの被害が出た。