2015年9月の鬼怒川水害から3年近く経ちました。茨城県常総市では市の面積の約3分の1に当たる約40平方キロが浸水し、5千棟以上が全半壊しました。
この鬼怒川水害は、堤防決壊危険箇所と無堤防地区を放置してきた国土交通省の責任が重大ですので、被災者が国に損害賠償を求めて8月7日に提訴します。
国は鬼怒川上流に、五十里ダム、川俣ダム、川治ダム、湯西川ダムを建設してきました。一番新しい湯西川ダムは2012年に完成しています。ダムの上にダムをつくる、屋上屋を架すようなダム建設で、これら4ダムの治水容量は1億2530万㎥(八ッ場ダムの治水容量6500万㎥の約2倍)もありますが、ダムの下流で降った大雨に対しては無力でした。しかし、鬼怒川では湯西川ダムの建設に巨額の予算が投じられる一方で、河川改修の予算は年間10億円程度にとどめられ、河川改修がなおざりにされてきました。このため、下流部の河川改修は遅々として進まず、下流部の茨城県側では堤防整備率はわずか約17%という状態でした。
鬼怒川水害における国土交通省の責任について、「鬼怒川水害訴訟を支援する会」が作成したパンフレットの一部を右に掲載しています。パンフレット全体は以下のページをクリックすると表示されます。
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2018/06/bdb0fb188450ee97a63cf1439be497e4.pdf
「鬼怒川水害訴訟を支援する会」共同代表の石崎勝義さんは建設省土木研究所でかつて次長を務めた方です。石崎んさんによれば、建設省の土木技術者らは水害から住民を守るために堤防強化工法の研究に熱心に取り組んだ結果、耐越水工法を確立し、兵庫県の加古川で具体化したといいます。1988年には、建設省土木研究所、河川部河川研究室、機械施工部土質研究室によって「加古川堤防質的強化対策調査報告書」が出されました。
石崎さんは、ダム事業をスムーズに進めるために堤防強化工法をお蔵入りしてしまった河川行政の現状を問題だとしています。鬼怒川水害についての石崎さんの解説を以下のページに掲載しています。(下の図も以下のページに掲載しています。)
⇒ 「鬼怒川の堤防決壊はなぜ起きたのか」(石崎勝義氏による緊急報告)
さる7月16日、常総市内で原告団の結成集会が開かれました。関連記事をお伝えします。
◆2018年7月16日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018071601001287.html
ー15年常総水害、8月7日提訴へ 被災者らが原告団結成ー
2015年9月の関東・東北豪雨で浸水被害が起きたのは国の河川管理に不備があったためだとして、国に損害賠償を求めて提訴する被災者らが16日、茨城県常総市で原告団結成集会を開き、8月7日に提訴する方針を確認した。
集会には原告となる予定の13世帯と支援者ら計約30人が参加。支援者の1人は「みんなで心を合わせて国の間違いを訴えていきたい」と声を上げた。
弁護団によると、原告は常総市民を中心に約20世帯、請求額は1億円を超える見込み。
関東・東北豪雨では鬼怒川の決壊などにより市の面積の約3分の1に当たる約40平方キロが浸水。5千棟以上が全半壊した。
◆2018年7月16日 毎日新聞社会面
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180716-00000087-mai-soci
ー<関東・東北豪雨>「国の河川管理に不備」常総住民ら提訴へー
2015年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川が氾濫し浸水被害が発生したのは国の河川管理に不備があったとして、被災した茨城県常総市などの住民約20世帯が来月7日、損害賠償を求めて水戸地裁下妻支部に提訴する方針を決めた。16日、同市内で原告団の結成集会があった。家屋、家財の被害や事業の休業などによる損害賠償と慰謝料を請求し、総額は1億円を超える見込み。
鬼怒川は利根川水系で、国が管理する1級河川。豪雨の際、同市若宮戸で越水したほか、同市三坂町で堤防が決壊した。
原告側弁護団によると、越水現場付近は私有地で、人工堤防がなく砂丘が自然の堤防になっていたが、国は土地の掘削などに許可が必要な河川区域に指定せず、民間業者が14年春、ソーラーパネルを設置するため砂丘を掘削するのを止められなかった。また堤防の決壊地点は、必要な高さがないよもかかわらず、改修工事を怠った、としている。
この豪雨で、同市は市域の3分の1に当たる約40平方キロが浸水。市内の住宅被害は全壊53軒、大規模半壊と半壊は計約5000軒に上り、災害関連死の12人を含め14人が死亡した。【宮田哲】
◆2018年7月17日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13590215.html?iref=pc_ss_date
ー常総水害、被災者が国提訴へ 20世帯「河川管理に問題」ー
2015年9月の豪雨で鬼怒川があふれ、茨城県常総市などで被害が発生した水害は、国の河川管理に問題があったためだとして、常総市などの被災者が16日、集会を開き、国家賠償を求めて提訴すると決めた。弁護団によると、原告団には約20世帯が参加し、請求総額は1億円超になる見込みという。8月7日に水戸地裁下妻支部に提訴する方針。
15年9月10日早朝、常総市では自然堤防から水があふれ、昼ごろに別の地区で堤防が決壊。市内の3分の1が浸水した。原告団は、土地の改変を行う際に国の許可が必要となる「河川区域」の指定を国が怠ったため、民間業者が自然堤防だった場所の一部を掘削し、水があふれたなどと主張している。
◆2018年7月14日 茨城新聞
http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15314909520724&sai=1
ー常総水害で国賠提訴へ 8月7日にも 住民ら「河川管理不備」ー
2015年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川の堤防決壊などにより水害に遭ったのは国の河川管理に不備があったためとして、常総市の住民らが国家賠償を求め、8月7日にも水戸地裁下妻支部に訴えを起こす方針を固めたことが13日ヽ関係者への取材で分かった。
関係者によると、原告には20世帯前後が参加する見通し。16日に同市内で原告団の結成集会を開く。水害による家財や建物、農地の損害のほか、慰謝料などを加えた総額1億円以上を請求する方向で調整しているという、
市によると豪雨の際、鬼怒川は、常総市若宮戸で大規模に水があふれたほか、同市三坂町で堤防が決壊。市の総面積の約3分の1に当たる約40平方牛口が浸水し、5千棟以上が全半壊、市内で2人が死亡した。
住民側は、もともと堤防のなかった若宮戸地区で砂丘が自然の堤防になっていたと指摘。掘削や建物を建築する際に河川管理者の許可を必要とする「河川区域」に国が指定していなかった点を重視し、豪雨前に太陽光発電事業で掘削された砂丘の治水対策が不十分だったと訴える方針だ。
堤防決壊については、周辺の堤防に比べて低い箇所だったのに、国がかさ上げなどの改修を急がなかったと主張するという。
鬼怒川を管理する国土交通省下館河川事務所は「現時点では何もコメントできない」としている。