来年度の国土交通省予算要求に、利根川上流の藤原ダムと奈良俣ダムを再編するダム再生事業が入っていますので、この事業についての情報をお知らせします。
藤原・奈良俣再編ダム再生事業は今年8月8日の国土交通省・社会資本審議会の事業評価小委員会で採択されました。
★国土交通省ホームページより
社会資本整備審議会>河川分科会>事業評価小委員会>第11回 事業評価小委員会
事業内容の説明資料は、以下の文字列をクリックすると表示されます。
「藤原・奈良俣再編ダム再生事業 ダム事業の新規事業採択時評価 説明資料」
この事業は、利根川本川上流(群馬県みなかみ町藤原、奥利根地方)の上越国境の二つのダムー藤原ダムの洪水調節容量239万立方メートルと奈良俣ダム(1991年竣工)の利水容量239万立方メートルを振り替える(藤原ダムの利水容量を減らして治水容量を増やし、奈良俣ダムの治水容量を減らして利水容量を増やす)事業です。事業費17億円ですから、大きな事業ではありません。
奈良俣ダムは藤原ダムのすぐ上流に流入する利根川支流の楢俣川にあります。国交省の計算によれば、藤原ダムは奈良俣ダムよりも下流に位置することから、藤原ダムの洪水調節容量を増大させることにより、洪水調節効果を発揮できます。しかし、利根川の治水基準点「八斗島」(やったじま、群馬県伊勢崎市)との距離は、両ダムともそれほど変わりませんので、この再編事業の洪水調節効果がそれほどあるわけではありません。あくまで計算上、多少の効果があるということです。
この再編事業は、2013年5月に策定された利根川水系河川整備計画にすでに盛り込まれていましたが、国交省の事業評価小委員会で採択という手続きを踏んだことで、来年度から実施されることになりました。
利根川のダム再編事業は、2006年12月の利根川水系河川整備計画素案では、利根川支流の神流川の下久保ダム(写真右)も含めた、規模の大きい事業でした。
群馬県藤岡市にある下久保ダムは、群馬県と埼玉県の県境を流れる神流川に1968年につくられました。下久保ダムは谷川岳の麓の豪雪地帯にある藤原ダム、奈良俣ダムと異なり、冬季の降雪があまりないため、利水の貯水量が少なくなる傾向がある一方で、利根川の八斗島に近いので、八斗島への治水効果が利根川最上流のダムより大きいことが期待されます。そこで、利根川本川最上流のダム群と下久保ダムの治水容量と利水容量を振り替える計画案がつくられました。
しかし、下久保ダムを抱える地元が、治水容量を増やすとダム湖の水位が大きく下がるので観光に悪影響を与えるということで強く反対し、この計画案は流れました。
その結果、利根川のダム再編は奥利根だけの小規模なダム再生事業になりました。
藤原ダムは1952年に建設が始まり、1958年、利根川上流ダム群の中で最初に完成したダムです。藤原ダムもかつてはダム湖観光を目ざし、観光客向けのホテルや飲食店がダム湖のまわりにあったのですが、今は残された建物が廃墟になっています。
写真右=藤原ダム完成を機に建てられたホテル跡に残る看板。創業者は藤原ダム建設対策期成同盟委員長、町議、観光協会長も務めた。参考:衆議院会議録(昭和29年8月12日)
参考人:林賢二氏(藤原ダム対策期成同盟委員長)
◆上記資料12ページに掲載されている「ダム再編イメージ図」