7月の西日本豪雨では、愛媛県の肱川流域で国交省が管理する二基のダムによる緊急放流後の氾濫で8名の犠牲者が出ました。ダムの怖さが広く知られることになった愛媛県では、地元紙が県内の主要ダムについて調べたところ、10ダムのうち8ダムで、地元自治体がダム緊急放流による下流域の被害を想定せずに避難対策を策定していたことが判明した、と報道されています。
愛媛県以外の他の都道府県では、こうした問題はまだクローズアップされていませんが、はたしてダムの緊急放流による被害は想定されているのでしょうか?
◆2018年9月9日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201809090030
ー愛媛豪雨災害 県内8ダム 地元6市 緊急放流 被害想定せず 下流域避難に不備ー
西日本豪雨で野村ダム(西予市)、鹿野川ダム(大洲市)の緊急放流後の大規模な浸水被害で計8人が死亡した問題で、ほかの県内主要10ダムのうち8ダムで、地元自治体が大量放流後の下流域の被害を想定せずに避難対策を策定していたことが8日、愛媛新聞の調べで分かった。西日本豪雨災害を受け、複数の自治体が緊急放流時の避難対策を盛り込み地域防災計画を改訂する方針を示している。
8ダムは石手川(松山市)=国管理▽鹿森(新居浜市)▽黒瀬(西条市)▽玉川(今治市)▽台(同)▽山財(宇和島市)=以上、県管理▽新宮(四国中央市)▽富郷(同)=以上、水資源機構管理。
8ダムの下流は国や県の洪水浸水想定区域に指定されていなかったり、一部指定されていない地域があったりするほか、未指定地域では住民避難の基礎情報となる洪水ハザードマップがほとんど作成されていないことも判明した。
8ダムがある6市のうち、四国中央、新居浜、西条、今治、松山の5市は地域防災計画などの中で「ダムの緊急放流の被害は想定していない」と回答した。宇和島市は須賀川ダムについては緊急放流を想定した避難勧告の発令基準などを策定しているが、山財ダムでは盛り込んでいない。
各ダム管理者によると、台ダムはゲートがないため操作による緊急放流はないが、自然放流後に浸水被害の出る可能性がゼロではない。富郷ダムは、柳瀬ダム(四国中央市)までの下流にある人家に被害は出ないが、キャンプ場が一部浸水する恐れがある。柳瀬ダムは、新宮ダムまでの間の下流に浸水する民家や道路はない。
宇和島市は本年度の地域防災計画の改訂作業をいったん停止。西日本豪雨を検証し、緊急放流対策なども含めた改訂作業を行うとしている。今治市は、避難情報発令を判断する基準に、緊急放流に関する規定を加えて本年度末にも地域防災計画を改訂する考えを示している。
西日本豪雨では、野村、鹿野川の両ダムで水位が満水近くまで上昇。管理する国土交通省は、流入量とほぼ同量を緊急放流する異常洪水時防災操作を行った。国交省は自治体など関係機関に緊急放流を予告していたが、西予市で5人が、大洲市では3人が浸水で死亡した。両市とも地域防災計画に緊急放流時の避難に関する規定はなく、住民の一部から国交省と自治体の事前の備えの在り方や当時の対応の妥当性を問う声が出ている。