愛媛県では、7月7日の西日本豪雨で国直轄の野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流により、肱川が氾濫して8名の死者が出ました。水害から2か月以上たちましたが、鹿野川ダムの緊急放流についての住民説明会がようやく開かれました。説明会は大洲市の三地区で3日間にわたって開催され、のべ約780人が参加したとのことです。
野村ダムについては、国土交通省はすでに8月9日にダム直下の西予市で住民説明会を開催しています。西予市議会では、野村ダムの緊急放流問題について委員会質疑が行われました。
両ダムの緊急放流について、地元自治体は住民に対して情報伝達の遅れなどを陳謝していますが、国交省からは謝罪の言葉がありません。国土交通省四国地方整備局は、肱川流域で野村ダム、鹿野川ダムに次ぐ第三の巨大ダムとして、山鳥坂ダムを建設すべく事業を進めています。甚大な水害の原因となった肱川流域の河道整備の遅れは、ダム事業偏重の河川行政が元凶です。
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◆2018年9月18日 共同通信
https://jp.reuters.com/article/idJP2018091801002628
ー愛媛・大洲でダム放流説明会ー
西日本豪雨で愛媛県の肱川にある鹿野川ダム(大洲市)が大量放流し大規模な浸水被害が出た問題で、大洲市とダムを管理する国土交通省四国地方整備局などが18日、市内で住民説明会を開いた。国交省や自治体の説明に対し、住民からは「どうして柔軟に対応できなかったのか」との声が上がり、やじや怒号も飛んだ。
会場の小学校体育館には住民ら約260人が集まり、冒頭で犠牲者を悼み黙とうした。四国地方整備局山鳥坂ダム工事事務所の小長井彰祐所長は「情報共有、周知の在り方にさまざまな意見があることは承知している。誠心誠意説明したい」と話した。
◆2018年9月22日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201809220025
ー愛媛豪雨災害 大洲市長、鹿野川ダム住民説明会で避難未放送を陳謝ー
【情報発令、問題視次々】
西日本豪雨で7月7日、鹿野川ダム(大洲市)からの大量放流で市内が浸水し3人が死亡したことを受け、ダムを管理する国土交通省山鳥坂ダム工事事務所と市は21日夜、ダム操作や避難指示に関する住民説明会をダム直下の肱川地域で開いた。二宮隆久市長はあいさつで、光ケーブル断線で防災行政無線による避難指示が肱川地域で放送できなかった問題に触れ「誠に申し訳ない」と陳謝した。
説明会は市内では3回目で、最終回。住民ら約170人が出席し、14人が質問や発言。小長井彰祐所長とのホットラインで「鹿野川ダム毎秒6千トンの放流見込み」との情報が入った段階で避難指示を出さなかった二宮市長の判断を問題視する意見が相次いだ。
発令は異常洪水時防災操作開始5分前。地元男性は「話半分でも3千トン。人や家が流されると思わないのか。せめて避難勧告ぐらい出せば車の一台でも避難できた。断線で放送できなかったのは、避難情報発令が遅いからだ」と指摘し、住民に寄り添った行動を強く求めた。
大洲地域の男性が責任の所在を追及したのに対し、二宮市長は「災害対策本部で情報共有し、判断した」、小長井所長は「判断しかねる」と回答。男性は「そういう態度では同じことが起きる」と訴えた。
ダムの洪水調節能力を疑問視する声も複数出た。ダムがない場合の河川水位などのシミュレーションを求める要望に、小長井所長は「鋭意試算し、年内には出す」と応じた。
「国交省は人災ではなく天災というが、間違いないか」とただす質問には、小長井所長は「異常洪水時防災操作時でもダム湖に入る以上の水量は放流はしておらず、被害は助長させていない」と主張し、天災との認識を強調した。
「まちを元通りにして」など生活再建の支援充実を求める訴えも複数あった。
◆2018年9月23日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/ehime/news/20180922-OYTNT50106.html
ー 住民意見 検証委に反映へー
◇大洲 ダム放流 説明会終える
西日本豪雨で、国が管理する大洲市の鹿野川ダムが緊急放流後、肱川が氾濫して死者が出たことを受け、国土交通省などが21日、大洲市肱川地区で住民を対象にした説明会を開き、3日間の日程を終了した。参加した住民は3会場で延べ約780人に達し、出された意見は国交省が今後の対策を検証する委員会の議論に反映させるほか、ダムの操作規則の改正にも生かす。
肱川地区の説明会では、二宮隆久市長が、豪雨による土砂崩れで防災行政無線の光ケーブルが切れ、避難指示の情報が放送できなかったことを陳謝した。
住民からは、市が避難指示を出す判断が遅かったとの意見が相次いだ。国交省には、人災か天災かを問う質問も出され、鹿野川ダムを管理する山鳥坂ダム工事事務所の小長井彰祐所長は「緊急放流中も放流量は流入量より少なく、被害を助長していない」と強調した。
また、住民からは自宅修復費が家計を圧迫する事情を訴え、住宅にかかる費用の全額補償を訴える意見もあった。小長井所長は「一つ一つの意見は非常に重く、肝に銘じて今後も努力したい」と言い、二宮市長は「今後、治水安全度を高めるための取り組みを市民の皆さんに見ていただきたい」と述べた。
◆2018年9月22日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201809220018
ー愛媛豪雨災害 避難基準にダム放流量 西予市議会委で態勢報告ー
西予市議会の地域防災体制特別委員会が21日にあり、国土交通省野村ダム管理所の川西浩二所長が西日本豪雨時のダム操作や、防災対策の進展状況を説明した。ダムの放流に合わせ市が避難勧告などを出す態勢を構築したと報告。降雨予測に基づき、柔軟にダムを操作するべきだとの専門家らの提言には「現段階では課題が多い」として困難との見方を示した。
市は、ダム放流量を避難情報発令の基準にしていなかったが、ダム管理所と連携して発令の目安とする。具体的には、放流量を毎秒300トンから400トンに増加するとの通知が管理所からあった段階で、市が野村地区に避難勧告を発令。流入量とほぼ同量を緊急放流する異常洪水時防災操作は、管理所が操作開始の3時間前に市へ通知し、市が野村地区に避難指示を出す。
川西所長はダムの操作規則について、本年度中に完成予定の鹿野川ダムの洪水吐(ばき)トンネルや、2023年度までの5年間で実施する緊急事業などで下流の整備が進めば、大きな洪水に備える形に変更可能と述べた。一方、降雨予測に基づくダム操作の実現可能性について「的確な予測が難しい」と否定的な考えを示した。
委員が「被災家屋の再建場所や、野村学校給食センター、乙亥会館の移転の是非が課題となっている。事業は5年計画だが、来年以降に同規模の豪雨があれば同様の浸水になるのか」と質問。
川西所長は「明確に答えるのが難しい。時間をいただきたい」と述べた。豪雨災害でかんがい用送水管が破損しているため、10月15日までは利水者の協力を得て利水容量150万トンを暫定的に治水容量としており、従来の治水容量などと合わせて最大750万トンを治水用に確保していると語った。