新潟県の奥胎内ダムは9月25日から試験湛水を始めましたが、下流への放流をゼロにしたことにより、魚が大量死したことが報道されています
奥胎内ダムは新潟県営の補助ダム(総貯水容量1000万㎥、集水面積37㎢)で、胎内川の最上流に建設された多目的ダムです。http://www.pref.niigata.lg.jp/shibata_seibi/okutainai_dam.html
報道発表資料〈胎内川における無水区間の発生について〉(2018年10月4日)
1 事案概要
本日、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)において、ダム直下流にて魚がへい死している旨の投稿を覚知しました。このため、職員が現地調査を行ったところ、魚のへい死を確認しました。
奥胎内ダムの試験湛水の実施により、下記期間、ダム下流への河川水の供給を停止しており、無水区間発生の原因と考えられます。
(ダム下流への河川水の供給停止期間)9月25日午後1時頃から9月28日午後6時頃
なお、ダム建設を担当している当部の奥胎内分所には、一般の方から川に水が流れていない旨の問い合わせが10月2日にありましたが、「試験湛水のため、やむを得ない措置です」と回答していることを確認しました。
2 対応
胎内川漁協等関係者様へ謝罪するとともに、詳細な調査結果が分かり次第、順次、お知らせします。
報道発表資料を読むと、ダム事業者(新潟県)は問題発生後の対応も含めて実にお粗末ですが、お粗末なのはダム事業そのものです。
奥胎内ダムは2002年に本体工事に入った後、長々と工事が進められてきました。
新潟県の公式サイトによれば、基礎掘削が2010年度まで行われ、コンクリート打設が2016年度にようやく完了、今年度中にダムが完成する予定です。本体工事の進捗状況を見ても、必要性の希薄さが伝わってくるようです。不要なダムを長々と建設している中で、職員の緊張感も薄れていたのでしょうか。
◆新潟県公式ホームページより 「奥胎内ダムの建設手順」
http://www.pref.niigata.lg.jp/shibata_seibi/1206291684034.html
このダムをめぐっては、「奥胎内ダムを考える会」がダム建設によって失われる貴重な植物群落やダムの不要性の問題を指摘してきましたが、代表を務められた三橋允子さんはすでに亡くなっています。三橋さんは国土交通省が新潟県で進めていた清津川ダム事業(2002年中止)の反対運動でも活躍されました。
http://www.pref.niigata.lg.jp/kasenseibi/1205774139031.html
新潟県は10月7日、今回の問題について同県ホームページに以下の報告を掲載しています。
★「胎内川における無水区間の発生について(第4報:最終報)」
「今回の事案発生の問題点」という項目には、「解決が必要な期限のある課題について、組織全体でしっかりと情報収集して検討することが必要であったが、組織の一部での検討に留まり、有効な対策を見いだせないまま、試験湛水を実施しようとしたこと。」とあります。これは、今年度中に奥胎内ダムを完成させなければならず、残り半年間で試験湛水を完了させることは難しいという認識があったため、組織の一部の判断で、ダムからの放流を一切行わなかったことを意味するのでしょうか?
新潟県では現在、4つの県営ダム事業(奥胎内ダム、儀明川ダム、鵜川ダム、新保川ダム)が進められています。
http://www.pref.niigata.lg.jp/kasenseibi/1201539619177.html
関連記事を転載します。
◆2018年10月5日 NHK新潟放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20181005/1030005306.html?tw
ー県職員がルールに反して放流せずー
先月下旬、県が胎内市で建設中のダムに試験的に水をためた際、ダムの下流のおよそ1キロの区間で水がない状態となり魚が死ぬ被害が出た問題で、県は、事前に定められたルールに反して、水を一切放流していなかったことがわかりました。
県によりますと今月2日、新発田地域振興局に「胎内川に水が流れていない」という通報があったほか、ツイッター上にも胎内川で魚が死んでいるという情報が投稿されました。
県によりますと、現在、胎内川の上流に建設を進めている「奥胎内ダム」に水を試験的にためるため、先月25日から28日までの4日間、ダムの水門を閉めたことから、下流のおよそ1キロにわたり水がなくなったいうことです。
これを受けて県が被害状況を調べたところ、カジカやイワナあわせて1000匹あまりが死んでいたことがわかったということです。
また、県の「試験湛水計画」や「工事中のダム操作に関する要領」では、放流の際、「下流の魚類に影響を与えないよう必要な流量を確保する」と定めているにもかかわらず、職員が守っていなかったことがわかりました。
県はルールどおりに放流が行われなかった経緯について詳しく調べています。
県河川整備課の原田亮課長補佐は「事前の計画どおりに放流せず申し訳ない。原因の究明をはかるとともに再発防止に努めたい」と話しています。
◆2018年10月5日 新潟テレビ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181005-00010005-niigatatvv-l15
ー奥胎内ダム誤ってゲート閉鎖 胎内川上流に水がなく魚大量死ー
胎内市で建設中の奥胎内ダムが、試験的に水をためた際に誤って完全に水をせき止め、下流の胎内川の一部で水がなくなり魚が大量に死んでいたことが分かりました。
これは例年の胎内川上流の様子。釣り人が訪れるスポットですが、先月28日は全く水がありません。
県新発田地域振興局によりますと、奥胎内ダムは先月25日から4日間にわたって、試験的に水をためていました。
本来はその間も毎秒200リットル程度は流すはずでしたが、誤って完全にゲートを閉鎖。
胎内川は別の川との合流地点までのおよそ1キロにわたって、水がなくなり多くの魚が死んでしまったということです。
新発田地域振興局はその間、問い合わせがあったもののダムに水がたまるまでやむを得ないと説明。4日になってSNS上の写真で、事態を知ったということです。
流域の漁業関係者に謝罪し、魚の被害やゲートを閉鎖した原因を調べています。
◆2018年10月6日 新潟日報
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20181006423989.html
ー胎内川の魚大量死、3日間ダム放流せず 新潟県、計画に反し謝罪ー
建設中の奥胎内ダム(新潟県胎内市)の工事に伴い、9月下旬に下流の胎内川約1キロで水がない状態になり、魚が死んだことについて、県新発田地域振興局は5日、計画に反して魚の生息に必要な流量を放流していなかったと発表した。
県新発田地域振興局は同日、現場の調査を行い、イワナ、カジカの約1千匹が死んだと確認した。同日に漁協関係者に謝罪し、状況を説明した。
振興局によると、ダムに水をためて強度を調べる試験湛水(たんすい)を行うため、9月25日午後1時ごろから28日午後6時ごろまで、ダム下流への水の供給を停止していた。計画では、魚の生息に必要な毎秒0・223トンの水を流すことになっていたが、全く流れていなかった。
また、10月2日には振興局地域整備部奥胎内分所に、「胎内川の水が流れていない」との問い合わせがあったが、職員が「試験湛水のため、やむを得ない措置」と回答していたとし、「回答は適切ではなく、明らかに誤り」と訂正した。
新発田振興局地域整備部は、放流されなかった原因については確認中とし、「漁協関係者に多大な迷惑、心配をお掛けした。2度と起きないよう対策を強化したい」とした。
◆2018年10月6日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/eco/20181006-OYT1T50038.html
ーダム放流せず、川に水が流れず魚1031匹死ぬー
新潟県は5日、胎内川上流に建設中の奥胎内ダム(胎内市)で試験的に貯水した際に計画を守らず、放流を止めていたと発表した。ダムの下流1キロ先まで水がない状態となり、同日の調査でカジカやイワナ計1031匹の死骸が確認された。
県新発田地域振興局によると、9月25日午後1時頃から28日午後6時頃までの間、ダムの水門を試験的に閉めた。計画では、下流の生態系に影響が出ないように必要な流量の維持を定めていたが、一切放流をしていなかったという。
2日に同振興局に「川に水が流れていない」と問い合わせがあったが、「やむを得ない措置」と回答。ツイッターに魚が死んでいるとの投稿もあり、同振興局は4日から調査していた。
同振興局は、計画を守っていなかった原因などを調べている。同振興局は「関係者にご迷惑をかけ申し訳ない」としている。