今夏の西日本豪雨において、広島県営の野呂川ダムでは、洪水ピーク時に大量放流が行われ、下流の氾濫を拡大させてしまいました。西日本豪雨の際、野呂川ダムの周辺では土砂災害で道路が寸断されてダムに辿り着けない職員がおり、上流の土砂災害により、野呂川ダムにも13万立方メートルもの大量の土砂が流入したということです。
広島県は西日本豪雨による水害についての有識者会議を設置し、検証を行ってきました。
野呂川ダムについて検証する「河川・ダム部会」では19日、三度目の会議を開き、豪雨が頻発する現状を踏まえて、野呂川ダムの嵩上げ、放流設備の増強、ダム下流の河川改修などの可能性を探ることが明らかになりました。
写真右=広島県公式サイト「野呂川ダム」
★広島県河川課ホームページ
「平成30年7月豪雨災害を踏まえた今後の水害・土砂災害対策のあり方検討会」を設置しています。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/99/arikatakento.html
関連記事を転載します。
◆2018年12月19日 NHK広島放送局
https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20181219/0003221.html
ー呉の野呂川ダム改修案など議論ー
7月の豪雨災害を検証するため県が設置した有識者の検討会が19日に開かれ、緊急放流が行われた呉市の野呂川ダムについて、豪雨に備えるため緊急時の貯水容量を増やす工事を検討する案などが議論されました。
県が設置した有識者検討会の3回目の河川・ダム部会が広島市内で開かれ、豪雨災害を教訓に県が今後の対策案を示しました。
このなかで緊急放流が行われた呉市安浦町上流の野呂川ダムについて、今後5年をめどに復旧作業を行ったうえで、豪雨に備えた中長期的な対策としてダムの緊急時の貯水容量を増やす工事や、下流の川の拡幅工事を検討する案が示されました。
また、今回の豪雨では無線以外の通信機器が使えなくなったほか、応援の職員がダムにたどりつけず、少ない人員で対応せざるをえなかった点をふまえ、衛星携帯電話などの導入やより迅速に緊急態勢を構築する案なども示されました。
これに対し、有識者からは「ダムの管理事務所までの道路整備も含めて検討すべきだ」といった意見が出されました。部会長を務める広島大学大学院の河原能久教授は「一時的な対策にとどまらず、長年にわたり維持管理できる仕組みをどう作るかなど、住民が安心できる対策の方針を示したい」と話していました。
◆2018年12月20日 中国新聞
https://this.kiji.is/448200945337123937?c=220450040231249399
ー野呂川ダム、かさ上げなど検討 広島県、豪雨頻発で対策ー
西日本豪雨で下流域が広く水に漬かった野呂川ダム(呉市)について、管理する広島県は19日、ダム本体か下流の河川で大がかりなハード対策に乗り出すと決めた。水をためる容量を増やすための堤のかさ上げなどを候補に、費用対効果を探る。具体的な対策の絞り込みを進め、2023年度までの事業着手を目指す。
野呂川ダムは西日本豪雨でほぼ満水となり、流入量と放流量を同じにする初の緊急放流をした。このため県はまず、既存の堤をかさ上げして貯水容量を増やす方策を検討する。県営12ダムでは実績がなく、費用も巨額になる見通しだが、豪雨が頻発する現状を踏まえて実現の可能性を探る。
大雨の前にあらかじめ水位を下げられるよう、ダムの放流設備を増強する方策も練る。現在の放流用バルブ(直径60センチ)は毎秒3トンまでしか水を流せず、事前放流で洪水を防ぐ機能を高める効果が限定的なためという。ダム下流のハード対策は、川幅を広げたり、掘り下げたりして流量を増やす手法が有力とする。
西日本豪雨の被害を検証するために県が設けた有識者検討会の「河川・ダム部会」が広島市中区で開いた最終会合に示し、了承された。放流設備の増強は、同じように下流が広く浸水した椋梨ダム(東広島市)でも採用できるか探る。
県河川課の木村成弘課長は「いずれも事業費は高額だが、次に豪雨が来ても被害を最小限に抑えられる対策を練りたい」と述べた。
今回の豪雨では、下流の野呂川と支流の中畑川の流域で広い範囲が浸水したが、県は中畑川の決壊が主な原因とし、緊急放流による影響は限定的と結論付けた。
◆2018年12月19日 広島ホームテレビ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181219-00010002-hometvv-l34
ー広島・豪雨災害で規定に反する緊急放流・野呂川ダム「操作ルール改善」を提案ー
7月豪雨の改善策を話し合う検討会。規定に反する緊急放流が行われた野呂川ダムについては操作ルールを改善することが提案されました。
河川とダムに関する3回目の会議では、浸水被害の要因や検証結果を踏まえた治水対策について報告がありました。その中で、県の規定に反する緊急放流が行われた野呂川ダムについては、効果的な事前放流が可能となる改修の必要性などを指摘。専門家からは下流へ流せる量を調べた上でダムの操作ルールを改善したり、住民にダムの効果や役割を周知することが重要といった意見が出されました。砂防関連を含めた全体の検討会は、年内に提言の最終取りまとめを行う予定です。