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国交省が被災地の説明会で謝罪、愛媛豪雨災害

 西日本豪雨において野村ダム直下では、緊急放流により肱川が大規模な氾濫となり、5人の住民が犠牲になりました。被災地の愛媛県西予市野村地域では、昨日、国交省、愛媛県、西予市の共催による住民説明会がありました。
 報道によれば、国交省の野村ダム管理所長は水害から半年たってようやく被災者に謝罪したとのことです。
 愛媛新聞によれば、野村ダム管理所長は「3月末に肱川下流の鹿野川ダム(大洲市)が改造により治水容量が740万トン増えるとし、野村ダム治水容量(350万トン)の2個分に当たり、肱川流域の安全に活用すると説明した」とのことですが、鹿野川ダムは野村地域の下流にありますので、野村地域には関係ありません。
右図=国土交通省四国地方整備局野村ダム管理所「野村ダムについて」より

 国交省四国地方整備局はさらに肱川水系に三基目の巨大ダムを建設すべく、山鳥坂ダム事業を進めています。山鳥坂ダムは必要性がないことから、2000年に自民・公明・保守の与党が中止を勧告したものの、加計学園問題で有名になった加戸守行愛媛県知事らの働きで継続が決まったという、曰くつきの事業です。山鳥坂ダムも野村地域とは関係ありません。

 地元紙は、会場からダム行政の在り方そのものを問う声があがったことを伝えていますが、ダムに偏重した河川行政が改まる気配はありません。

◆2019年1月22日 愛媛新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190122-23001901-ehime-l38
ー国交省が西予で説明会「ダムの使命果たせず」愛媛豪雨災害ー

  西日本豪雨による愛媛県西予市野村地域の大規模氾濫を受け、上流の野村ダム操作や避難情報提供などの検証結果について住民説明会が22日、同市野村町野村の野村小学校であった。住民からのダム操作批判に対し、国土交通省野村ダム管理所の川西浩二所長は「皆さまを守ることがダムの使命であり、お守りできなかったことは大変申し訳ない」と住民の期待に応えられなかったと認め、ダム流入量に応じた放流を早期に行い、流下能力(ダム放流量約千トン)に近い水準まで増やすなどの操作改定を進めるとした。

 川西所長は「ダムでは、野村から(肱川河口の)大洲市長浜まで守らなければならないものがたくさんある」と理解を求めた。操作見直しについて、3月末に肱川下流の鹿野川ダム(大洲市)が改造により治水容量が740万トン増えるとし「野村ダム治水容量(350万トン)の2個分に当たり、肱川流域の安全に活用する」と説明した。

 現行操作では、野村ダムは流入量が毎秒300トンを超えると放流量を300トンに維持し、貯留を開始。豪雨では放流量が急激に増える異常洪水時防災操作直前まで川の水位が上がらず、住民の避難が遅れたとの指摘がある。川西所長は「なるべく流入量に合わせた放流量にしていく」と考えを示し、放流量が増加して川の流下能力に近づけば定量放流に移行し、洪水を防ぐよう努めるとした。

 市は、避難指示発令基準見直しや今後の情報周知を説明。県は、野村ダムから下流の県管理区間の河床掘削などを進めるとした。
 昨年7月の豪雨後、ダムの操作や情報伝達などについて国は県や市、学識者による検証の場を設置。同年12月、情報提供見直しや、大規模洪水でも被害が軽減できるよう操作規則を改定するなどの取りまとめを公表した。会合には住民ら約160人が出席した。
 質疑応答で出席者からは「取りまとめでは住民が避難情報を生かせなかった、住民が悪いと言わんばかりで許せない」と指摘があり、川西所長は「情報周知で至らなかった部分を改善するため、検証の場で取りまとめた」と釈明。会場からは「ダム自体の在り方を検討するべきだ」との意見や、5年後をめどとしている河川整備の前倒し、利水容量見直しの要望もあった。

◆2019年1月23日 日本テレビ NNNニュース
http://www.news24.jp/nnn/news16401633.html
ーダム緊急放流問題 野村ダム所長が謝罪ー

 去年7月の西日本豪雨でダムの放流後肱川が氾濫し5人が死亡した西予市で22日夜、住民説明会が開かれ野村ダムの所長は「住民を守るダムの使命が果たせなかった」と謝罪した。

 野村ダムと西予市、それに愛媛県が開いた説明会で住民からは治水対策が不十分なままダムが運用されてきたとして河川改修を早急に求める意見などが出た。<  また、甚大な被害が出たことに対し謝罪を求める声も上がった。これに対し野村ダム管理所の川西浩二所長は「野村ダムは皆さまを守るのが職務、使命でありその点については大変申し訳なく思っている。」などと謝罪した。  そして、川西所長は今後、治水対策を進めてダムへの流入量に応じて早い段階から放流量を増やすなどダムの操作規則を変更していく方針を示した。  また、愛媛県は5月をめどに洪水浸水想定区域図を作成することなどを説明していた。

◆2019年1月24日 毎日新聞愛媛版
https://mainichi.jp/articles/20190124/ddl/k38/040/444000c
ー西日本豪雨 肱川が氾濫 改善策「住民を無視」 ダム問題説明会で批判が相次ぐ 西予で国交省 /愛媛ー

 昨年7月の西日本豪雨で野村ダムの緊急放流後に肱川が氾濫し、5人が死亡した西予市野村町地区で22日夜、国土交通省四国地方整備局がダムの操作に関する検証会議でまとめた改善策などについて住民説明会を開いた。
住民からは改善策について「全く役に立たない」「下流住民を無視したものだ」と批判が相次いだ。豪雨から半年が過ぎても住民の安心は得られておらず、被害の深刻さが改めて浮き彫りになった。【木島諒子】

 国、県、西予市のそれぞれ担当者が出席し、住民ら約160人が集まった。気象予測を活用して早期に放流する柔軟なダム操作の採用を見送ったことなどについて住民らは「気象庁もあてにならないのか」「ダムを造ったこと自体に問題があるのではないか」と疑問を呈し、ダム操作ではなく「ダム全体のあり方」について検証の場を求める意見も出た。

 当時のダム操作の是非やその周知についても「(情報の)受け取り手の意識が足りないとし、無知な住民が悪いといったとりまとめは許せない」などと批判や質問が次々と上がり、説明会は2時間の予定が3時間半に及んだ。ダム側はこれまで「規則通り」との説明を繰り返すばかりだったが、この日は同整備局野村ダム管理所の川西浩二所長が「ダムはみなさまを守るのが使命。守れなかったことは申し訳ない」と一部謝罪する場面もあった。

 川西所長は説明会後、報道陣の取材に「住民の声は身にしみた。限られた時間で精いっぱい説明した」と話し、「難しい話もあり、十分に伝えるためには今後も説明の場を設けていかないと、と考えている」と話した。