多くの観光客が訪れる八ッ場ダム予定地についての地元紙の記事をYahoo!ニュースが取り上げています。
この記事によれば、昨年度は約34万人がダム予定地を訪れたとのことです。一見、八ッ場ダム建設をきっかけに一大観光地が出現したかのように見えますが、これはダム予定地が草津温泉など、東日本有数の観光地への周遊ルート上にあり、もともと多くの観光客が行きかう上、立ち寄るのに便利な道の駅ができ、国が無料の見学会を随時開催し、これをマスコミが大きく取り上げているためです。
八ッ場ダムの水没予定地にあった川原湯温泉は、ダム事業によって衰退する前の昭和40年代、年間の観光客数が25万人を超えていました。水没予定地を走っていた国道は、一日一万台の車が往来すると言われました。
”首都圏の水がめ”と言われる群馬県には多くのダムがありますが、ダム湖観光によってダム建設前より賑わいが生まれたところがあるとは言い難いのが実状です。
八ッ場ダムはこの記事にも書かれているように、秋ごろには試験湛水が始まる予定です。湛水による地すべりの危険性、ダムの水質、地域の人口減少、過剰なインフラの維持管理費など、八ッ場ダムにはマスコミがあまり取り上げない問題が山積しています。明るい話題だけ追いかけることができるのはいつまででしょう?
◆2019年3月29日 上毛新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190329-00010001-jomo-l10
ー国交省の「やんばツアーズ」 ダム完成控え人気ー
最後の“湖底見学”や住民語り部10プラン
2019年度の完成を予定する八ツ場ダム(群馬県長野原町)の工事現場を見学する国土交通省のインフラツーリズム「やんばツアーズ」の人気が、完成が近づくにつれて急上昇している。18年度(2月末現在)の参加者は約5万3000人で、前年度からほぼ倍増。同省八ツ場ダム工事事務所は28日、19年度上半期(4~9月)の見学プランを発表した。人気が高い一部ツアーは新たに繁忙期に予約制を取り入れ、可能な限り多くの人に見学してもらう方針だ。
19年度上半期 一部に予約制
同事務所によると、17年度のツアー客は約2万9千人だった。ダムの周辺にある道の駅「八ツ場ふるさと館」、「なるほど!やんば資料館」、展望台「やんば見放台」、行政視察を含めると18年度は延べ約34万人(2月末現在)が訪れた。
19年度上半期は、ダムの水がたまる湛水(たんすい)地バスツアーや地元住民が語り部となる見学会など計10プランを用意。先着順の個人向け「ぷらっと見学会」は参加希望者が集中し、用意したヘルメットが不足し参加を断ることもあったことから、需要が集中する大型連休やお盆前後、9月の祝日などは予約制とすることにした。
湛水地を巡るバスツアーは日曜限定で1日5回開催する。案内役となる「やんばコンシェルジュ」がかつての写真を示しながら旧川原湯温泉駅があった場所などを説明し、ダム本体を下から見上げる。バスから降りることはできないが、秋頃には試験湛水が開始されるため、湖底となる場所を眺められる最後のチャンスとなりそうだ。
プレミアム見学会と銘打った地元主体の有料ツアーも充実させた。地元ガイドの案内による見学会は、ダム周辺地域の活性化を目指す「チームやんば」(樋田省三代表)が開く。地元を熟知した住民が語り部となり、町の歴史や今後の思いを語る。6~9月に月1回のペースで行う予定だ。道の駅「八ツ場ふるさと館」による季節限定見学会は4月29日に開かれ、新緑の吾妻渓谷(東吾妻町)とダムを合わせて見学する。
同事務所の遠藤武志副所長は「工事終盤を迎え、多様なツアーを用意した。多くの人に参加してもらい、今しか見られない景色を目に焼き付けてほしい」と呼び掛けている。
28日に開かれた報道向けの現場見学会でプランを発表。ダム本体のコンクリート打設がほぼ完了し、完成の形に近づいていることなどが説明された。
【プレミアム】
▽季節限定見学会
▽地元在住ガイドご案内見学会
※ともに地元主催の有料ツアー
【個人向け】
▽湛水地内を巡るバスツアー
▽ぷらっと見学会
▽ファン倶楽部(くらぶ)見学会
▽ジオパーク見学会
【団体向け】
▽コンシェルジュ御案内ツアー
▽最先端技術見学ツアー
▽インバウンドツアー
▽やんばまるごと体験ツアー
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写真=名勝・吾妻峡とともに多くの観光客を集めた川原湯温泉は、ダム事業によってダム堤脇に造成された代替地へ移転。もともとの源泉(元の湯源泉)の湧出口はダムに水を貯めると沈むため、井筒で保護する工事が行われた。かつて共同湯・王湯があった場所。2019年3月12日撮影。
写真=共同湯・王湯跡周辺では、町道建設工事が行われ、水没しない川原湯神社も移転。
写真=多くの文人墨客が訪れた川原湯神社の本殿前にあった与謝野鉄幹の歌「川原湯の社のすだれ 古りたれど 入りて拝めば 片ふれて鳴る」の看板が打ち捨てられていた。