三日月大造滋賀県知事が今年4月に大戸川ダム建設を凍結から推進へ、方針転換したことについて、滋賀県議会や滋賀県内の市長らから疑問や不満の声が挙がっていることが報道されています。
三日月知事の方針転換の背景には、昨年の知事選で自民党の支援を受けるためであったとも報道されていますが、知事の方針転換を有権者はどう見ているのでしょうか? 三日月氏を後継として推した前知事の嘉田由紀子氏は、2008年に淀川水系の四府県知事が大戸川ダム建設の凍結を求める際には主導的な役割を果たしました。嘉田氏は7月の参院選で滋賀県選挙区の野党統一候補として立候補することになっていますが、三日月氏の方針転換に強く反発しています。
三日月知事の方針転換のニュースはこちらです。➡https://yamba-net.org/wp/46641/
◆2019年5月25日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20190525000081
ーダム建設「凍結」から一転「早期整備」滋賀県内の市長ら疑問の声ー
滋賀県内の19市町でつくる県河港・砂防協会の定期総会が24日、大津市の県危機管理センターであった。大戸川ダム(同市)の早期整備などを国に要望する決議を採択した一方、出席した県内の市町長からは、ダムについて県が従来方針を転じた経緯や根拠を疑問視する声が相次いだ。
「凍結」となっている大戸川ダムの整備について、三日月大造知事が早期整備を国に求める方針を表明して以降、県側が市町長に説明するのは初めて。担当者は、専門家を交えた勉強会がダムの有効性を一定認める結果をまとめたことを挙げ、それを踏まえた方針転換だと報告した。
これに対し、谷畑英吾湖南市長は「県の政策転換の度に自治体は振り回されてきた。ダムは必要だと申し上げてきた中で、かたくなに拒んできた県がいつの間にか
ゴーサインを出した」と不快感を示した。さらに「勉強会の報告が出たから、というものではない」とも述べ、方針転換の根拠に疑問を投げかけた。
藤井勇治長浜市長は、国が建設中止を決めた丹生ダム(同市余呉町)に触れ「集団移転した皆さんが犠牲になった。大戸川ダムをなぜ造るのか根拠が薄っぺらい。もう少し科学的な根拠が必要では」と指摘。山仲善彰野洲市長は県の方針を支持するとした上で「政策転換を歓迎する人にも、なぜ知事が急に変わったのかよく分からない。知事と首長の齟齬(そご)が埋まるよう慎重にやってほしい」と注文した。
西嶋栄治副知事は「関係自治体には丁寧に説明し、責任を果たしたい」と理解を求めた。
◆2019年5月28日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20190528000016
ーダム建設の方針転換「ルールから逸脱」滋賀県議会から不満続々ー
滋賀県が大戸川ダム(大津市)の早期整備を国に求めていく方針を4月16日に示して以降、ダム問題を審議する初めての県議会委員会が27日、開かれた。県議からは、議会を経ないまま知事が従来方針の転換を表明したとして、不満や不信の声が相次いだ。
土木交通・警察・企業常任委員会で、松本利寛県議(共産党)は「(ダム整備「凍結」の)従来方針を大きく転換した県側が、県民にきっちり理由を説明する必要がある」と指摘。議会への明確な説明がないまま、三日月大造知事が記者会見で方針転換を表明したことを「二重三重にルールから逸脱している」と批判した。
今江政彦県議(チームしが)も、4月の改選で「新しくなった県議会の各委員会や本会議での十分な議論を経ておらず、議会に対する配慮に欠ける」と不満を述べた。
県土木交通部の川浦雅彦部長は説明不足を陳謝した上で、大戸川ダムの治水効果を一定認めた県の勉強会の結果については随時公表してきたとし、「透明性を高め、しっかりした説明に努める」と述べた。
流域の京都、大阪両府への事前説明がなかったのは連携不足ではないかとの県議の質問に対しては「合意形成を今後図る」とした。
◆2019年5月15日 毎日新聞滋賀版
https://mainichi.jp/articles/20190515/ddl/k25/070/498000c
ーなるほドリ 大戸川ダム建設されるの?/滋賀ー
滋賀県治水の効果認め、知事方向転換 県より重い費用負担、2府の同調が鍵
なるほドリ 三日月大造知事が凍結中の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)の建設を容認する方針を表明したって記事で読んだよ。
記者 4月16日の記者会見で三日月知事が建設を容認し、計画の凍結解除を求める方針を表明しました。大戸川ダムは国が建設を計画し、1968年に予備計画調査に着手しましたが、2008年に国土交通省近畿地方整備局の諮問機関「淀川水系流域委員会」が「効果が限定的」として建設見直しを提言。同年、当時の嘉田由紀子知事が京都、大阪、三重各府県知事とともに「施策の優先順位が低い」として建設の凍結を求める共同見解を発表し、国は09年に事業凍結を決めていました。
しかし、近畿地整は16年、治水対策としてダム建設が有利とする評価案を公表。滋賀県も知事合意から10年が経過し、下流の河川整備が進み、全国で豪雨が相次いでいることを踏まえ、昨年、専門家を交えた独自の勉強会を設置しました。3回開かれた勉強会が今年3月、ダムの治水効果を認める報告をまとめたことを引き合いに、三日月知事は「一定の治水効果があることが分かった」と方針転換の理由を説明しました。
Q 表明はどう受け止められているのかな?
A 三日月知事を後継として引退した嘉田前知事は会見を開き、「ダムに一定の治水効果があることは、以前から分かっている。ダムは副作用もたくさんあり、必要性は費用や環境への影響、維持管理のあり方などを含めて総合的に判断すべきだ」と、疑問を呈しました。17年に県議会で知事合意の撤回を求める決議を賛成多数で可決させた最大会派の自民党や、地元住民らでつくる大戸川ダム対策協議会は歓迎しています。
Q これから建設が進むの?
A これからの焦点は京都、大阪両府が県に同調するかですが、両府とも慎重な姿勢です。政治情勢は建設反対で一枚岩となった08年当時とは異なりますが、ダム建設には重い費用負担があるからです。1000億円以上の本体工事費の3割を県と両府が負担することになっていますが、下流にダムの恩恵が及ぶという考えから、両府の負担は県より重くなります。三日月知事の表明を受け、大阪府の吉村洋文知事は独自の検証委員会を発足させることを表明しました。三日月知事は関係府県に県の立場を説明する方針です。<回答・成松秋穂(大津支局)>