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石木ダムに必要な全用地、強制収用認める裁決 地権者ら反発(新聞記事)

 長崎県の収用委員会が今月21日、石木ダム建設に必要な全用地の強制収用を可能とする裁決を行ったことが明らかになりました。
 21日のテレビ速報に続き、長崎新聞をはじめ各紙が詳しい記事を発信しています。新聞の論調は総じて、強制収用に否定的です。

◆2019年5月23日 長崎新聞
https://this.kiji.is/504116677071504481?c=174761113988793844
ー石木ダム全用地収用裁決 反対地権者宅地も 明け渡し求める 長崎県委員会ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地計約12万平方メートルについて、県収用委員会(梶村龍太会長)が、土地を明け渡すように地権者に求める裁決を出したことが22日、分かった。ダム建設に必要な全ての用地を強制的に収用することが可能になった。地権者側は反発を強めている。

 長崎県は土地収用法に基づき、地権者の同意が得られないなどの理由で買収できなかった用地計約12万6千平方メートルについて、2014~2016年に3回に分けて、県収用委に明け渡し裁決を申請。最初に申請した農地計約5500平方メートルは既に明け渡し裁決され、2015年8月までに収用されたが、事実上地権者らが占有している。

 今回新たに裁決されたのは、2015年7月と2016年5月にそれぞれ申請した計約12万平方メートルで、計画ではダム本体や貯水池などになる。13世帯が現住する宅地や公民館などの共有地を含む。

 関係者によると21日に長崎市内で収用委があり、裁決した。2017年8月までに複数回開いた審理に反対地権者の出席はなく、長崎県の立ち入り調査も拒否されていた。

 建設予定地では現在、ダムに水没する県道の付け替え道路の工事が進むが、反対地権者が連日現場で抗議運動を続けている。長崎県の本年度当初予算案には本体工事費が初めて盛り込まれた。中村法道知事は取材に「(収用委の)結果を知らず、コメントできない」と前置きしつつ、「(反対地権者の)理解を得る努力は継続して重ねていく」とした。

 事業を巡っては、反対地権者らが国に事業認定取り消しを求めた訴訟が福岡高裁で係争中。一審長崎地裁判決はダムの必要性を認め、原告の訴えを退けた。他に反対地権者らが長崎県と佐世保市に工事差し止めを求めた訴訟も長崎地裁佐世保支部で争っている。

https://this.kiji.is/504110624413238369?c=0
ー「まるで強盗」「権力の脅しには屈しない」 反対地権者 不信感募らせるー

  石木ダム建設事業を巡り、長崎県収用委員会が、宅地を含む約12万平方メートルの明け渡しを地権者に求めた裁決。反対地権者13世帯が暮らす宅地の強制的な収用が一層現実味を帯びた。「権力の脅しには屈しない」。住民らは古里を守る決意を口にし、行政側にいら立ちと不信感を募らせた。

 建設予定地では、ダムに水没する県道の付け替え道路の工事を進めたい長崎県側と、連日現場に座り込んで抗議する反対住民らのにらみ合いが続く。22日も住民や支援者らが朝から作業道に座り、長崎県職員らが様子をうかがっていた。

 昼すぎ、“裁決”の情報が現場に伝わると、地権者の岩下和雄さん(72)は「これで県との話し合いの糸口はなくなった」と言い切った。同じく地権者の岩本宏之さん(74)は「売りたくないと言えば、無理やりにでも土地を奪い取る。まるで強盗だ」。かつて収用委員の1人が反対地権者らの抗議活動に「阻止されたらどんどんブルドーザーを突っ込んで」と発言したのを踏まえ「独立機関と言いながらも結局は県の下部組織。そんな収用委の裁決は無効だ」と吐き捨てた。

 地権者の石丸勇さん(70)は自身の農地で田植えの準備をしていた。2015年に農地の一部を収用されたが、変わらず耕作を続ける。「(一部の土地だけ先に収用したのは)住民を分断する意図があったかもしれないが、古里を守る決意が揺らぐことはなかった。今回も変わらないよ」と落ち着いた様子で汗をぬぐった。

 実家の鉄工所で働く住民の松本好央さん(44)は「報道で知った」と少し驚いた表情。まだ小学生だった1982年、長崎県が機動隊を導入した強制測量では大人に交じって抗議に参加した。現在はこの土地で父となり、子どもたちを守る立場。「ここで暮らす人たちを差し置いて大事なことを決めてしまう。一体俺たちって何やろうね」とぽつりとつぶやいた。

 地権者で川棚町議の炭谷猛さん(68)は「県は手続きさえ進めれば、どうにかなると本気で思っているのか」と眉をひそめた。収用に向けた手続きが着々と進む中、反対住民が置き去りにされる状況に危機感を覚え、4月の町議選に初めて立候補。ダム反対を正面から訴え、トップ当選した。「このまま強引に進めれば世論は必ず反発する」と語気を強めた。

https://this.kiji.is/504112772873241697
ー石木ダム全用地収用採決 迫る知事判断 地権者引かずー

 今回の裁決で、石木ダム建設事業は大きな局面を迎えた。土地収用法では、明け渡し期限までに地権者が応じなければ、起業者(石木ダムの場合は長崎県と佐世保市)は知事に行政代執行の請求が可能。請求を踏まえ、知事が対応を判断することになる。長崎県は「まずは円満に協力いただきたい」と強調するが、地権者は一歩も引かない構えだ。

 付け替え県道迂回(うかい)路部の用地(約5500平方メートル)は2015年6月に裁決が出て、同8月までに収用されたが、現在も地権者による耕作が続いている。長崎県河川課は「工事の工程上、今すぐ(立ち退かせるなどの)代執行をする必要はない」として説得に当たっている。

 一方、今回裁決が出たダム本体(約3万平方メートル)と貯水池(約9万平方メートル)の用地は家屋13世帯を含むため、交渉はさらに難航必至だ。長崎県が掲げるダムの完成目標年度は2022年度。このまま住民が住み続ければ、中村法道・長崎県知事はいずれ行政代執行の判断を迫られることになる。

 長崎県用地課によると、1998年度から昨年度までに県の事業計81件について、県収用委員会に裁決申請したが、このうち行政代執行に至ったのは2例だけ。1例は立木の伐採で、もう1例は2007年、佐世保市内の県道を整備する際に住居1世帯を立ち退かせたという。いずれにせよ、石木ダムで行政代執行されれば、長崎県にとって前例のない規模となる。

 ダム反対運動に詳しい呉工業高等専門学校(広島県)の木原滋哉教授は「(実際に行政代執行をすれば)聞いたことがない規模。居住者がいていろいろな意見がある中で代執行をすれば反発を招くだけだ」と懸念を示した。

https://this.kiji.is/504114297260557409
ー石木ダム全用地収容採決 追い詰められたのは長崎県ー

 県収用委員会の裁決で、長崎県は石木ダムの実現に必要な未買収地の全てを、地権者の意思にかかわらず収用することが可能になった。国の事業採択(1975年)から40年以上がたつが、人口減少による水需要の低下や大型公共事業への疑問を背景に、反対派の疑念はむしろ深まっている。

 水没予定地の東彼川棚町川原地区では高齢者や子どもを含む13世帯約60人が暮らしている。長崎県と佐世保市はダムの必要性や土地収用法に基づいた手続きの正当性を強調するが、事業を巡っては、長崎県が1982年に機動隊を使って住民らを排除しながら強制測量に踏み切った経緯もある。住民側の頑強な反対運動は、この時の怒りと不信感によるところが大きい。

 長崎県側は「(建設予定地の地権者の)8割以上の協力を得た」と繰り返す。だが、そもそも理解を得られなかった「2割」は、強権的な手段もやむを得ないとするほど過小評価していいものなのか。4月の川棚町議選で反対地権者の候補が、最多得票で当選したのも、強引な進め方に疑問を感じる地元の声の表れともいえる。

 建設予定地に暮らす反対地権者らが立ち退かない限り、ダムの完成は不可能。このまま理解が得られなければ、実力行使で家屋を撤去し、住民を排除する行政代執行に踏み切るしかないが、そうなれば県政史上類を見ない“汚点”になるとの批判は免れない。裁決で、真に追い詰められたのは「古里に住み続けたい」と訴える反対住民というより、むしろ長崎県側に思える。

https://this.kiji.is/504111431488963681?c=39546741839462401
ー石木ダム全用地収用採決 推進派「当然の流れ」ー

  石木ダム建設問題で県収用委員会が反対地権者に土地の明け渡しを求める裁決を出したことについて、推進派団体は「予想した展開」と冷静に受け止めつつも、関係者からは長崎県などに対し、強制的な収用の事態が避けられるよう、反対地権者の説得を求める声も上がった。

 元地権者の推進派でつくる石木ダム対策協議会の山田義弘会長(82)は「このまま反対地権者が住み続ければ、強制収用はやむをえない」と指摘。反対地権者らに対し、「強制収用まで頑張り続けるのはよくない。誰も責める人はいないから、拳を降ろしてほしい」と求めた。

 「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の嬉野憲二会長(72)は「裁決は当然の流れで予想していた。驚きはない」とする一方、「強制的な土地の収用は望まない。長崎県は反対地権者との話し合いを進めてほしい」と求めた。

 東彼川棚町の山口文夫町長と佐世保市水道局はともに「裁決したという事実確認ができておらず、コメントできない」とした。

 

◆2019年5月23日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20190523/k00/00m/010/297000c
ー長崎県、石木ダム用地明け渡し命じる 地権者「住民を置き去り」ー

 長崎県と佐世保市が同県川棚町に建設を計画している石木ダムについて、県収用委員会が予定地内の約12万平方メートルを明け渡すよう計画に反対する地権者に命じる裁決を出したことが関係者への取材で判明した。

 裁決は21日付。今回の裁決で、ダム事業に必要な全ての土地を県が強制的に収用することが可能となり、地権者らが反発を強めている。

 予定地を巡っては約5500平方メートルが2015年8月までに県に収用され、県は13世帯約60人が暮らす住宅などがあるダム本体用地など残り約12万平方メートルについても収用の裁決を申請していた。明け渡し期限後も住民が立ち退かない場合、行政代執行が可能になる。

 現地では反対住民らが座り込みなどの抗議活動を続けており、地権者の炭谷猛さん(68)は「住民を置き去りにして、手続きだけを進めていくことに世論は納得しないだろう。ダムはいらないということを変わらず訴えていく」と話した。

 石木ダムは1962年、川棚町に隣接する佐世保市の水不足解消などを目的に県と佐世保市が計画した。【浅野翔太郎、綿貫洋】

◆2019年5月24日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20190524/ddl/k42/010/278000c
ー石木ダム 用地、初めて宅地が収用対象に 地権者ら「今後も反対訴えていく」 県と佐世保市が川棚町に計画ー

  県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダムを巡り、13世帯約60人の宅地を含む約12万平方メートルについて明け渡しを命じた県収用委員会の裁決。初めて宅地が収用の対象になる事態に、反対地権者らは「今後もダム反対を訴えていく」と反発し、対決姿勢をさらに強めている。【浅野翔太郎、綿貫洋】

 用地の収用をめぐり県は2014~16年、3回に分けて収用委に裁決を申請していた。既に収用された約5500平方メートルは農地などだったが、住宅などが初めて対象になった。裁決により、明け渡し期限までに住民が立ち退かない場合、強制的に立ち退かせる行政代執行が可能になる。

 23日に記者団の取材に応じた中村法道知事は「(裁決について)聞いておらず、今の段階でコメントは差し・・・(以下略)

◆2019年5月23日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/512370/
ー石木ダム全用地取得へ 長崎県、強制収用可能にー

 長崎県と同県佐世保市が進める石木ダム(同県川棚町)建設事業の予定地について、県収用委員会が21日付で反対地権者に土地の明け渡しを命じる裁決を出したことが分かった。土地収用法に基づき、事業主体の県による強制収用が可能となる。明け渡し期限や補償額を記した裁決書は、近く地権者らに通知される。

 1975年に国から事業採択された石木ダムは一部地権者が建設に反対してきた。県は協議を重ねてきたがまとまらず、強制収用を選択肢の一つとして委員会に裁決を申請していた。

 委員会は2015年10月から17年8月、ダム本体の建設地の一部と、ダム中上流部に当たる約12万平方メートル(家屋13軒などを含む)の補償額の妥当性などについて審理を進め、21日に裁決。県は定められた期日までに地権者に補償金を支払う。明け渡し期限後は、家屋を含む建物を強制的に撤去、土地を収用する「行政代執行」が可能となる。

 石木ダムは慢性的な水不足が指摘された佐世保市の利水と、川棚町の水害を防ぐ治水を目的としているが、予定地で暮らす地権者の一部が必要性を疑問視し反対してきた。事業採択から7年後の82年、県が機動隊を投入して強制的に測量に踏み切ったこともあり住民らは強く反発。これまでに県が買収した土地は全体の81・1%で、残りが収用委の審理対象になっていた。

 裁決について反対地権者13世帯の一人、「石木ダム建設に反対する川棚町民の会」代表で町議の炭谷猛さん(68)は「町民の中にも反対意見が多く、誤った判断だ。土地を明け渡すつもりはない」と憤る。取材に対し同県の中村法道知事は「これまで通り、地権者に理解してもらう努力を重ねる」と述べるにとどめた。

◆2019年5月23日 朝日新聞長崎版
https://digital.asahi.com/articles/ASM5Q4S3CM5QTOLB005.html?iref=pc_ss_date
ー石木ダム用地 強制収用認める裁決 地権者ら反発ー

 石木ダム(川棚町)の建設予定地に暮らす住民の土地を、県が強制収用できるようになった。地権者に土地明け渡しを命じる県収用委員会の21日の裁決。建設に反対する住民は「ここまでして事を運ぶ必要があるのか」と反発し、推進派も「強制収用は最後の手段」として、慎重に対応を進めるよう行政側に求めた。

 「冷静な政治的判断が必要。世論の反発で県は窮地に陥るだろう」。ダム予定地に暮らす「石木ダム建設に反対する川棚町民の会」代表の炭谷猛さん(68)は農作業の手を休めて、こう話した。炭谷さんは4月の町議選で計画反対を訴えてトップ当選したばかり。自身の当選に対する県の焦りが背景にあるのではないか、との見方も示した。

 一方、佐世保市議会の石木ダム建設促進特別委員長を務めた長野孝道市議(72)は、裁決について「企業誘致などに多量の水が必要。推進派としてはよかった」と受け止めた。「40年以上も膠着(こうちゃく)が続く状況は好ましくない」としつつ、強制収用は「最後の手段」と捉え、まずは地権者らとの話し合いを慎重に進めていくことを県側に求めた。

 川棚町議会の石木ダム対策調査特別委員長を務めた田口一信町議(70)も「裁決前に移転に応じてもらうのが一番円満な方法だと思ったが……。法にのっとった手続きなので仕方ない」と語った。「町民の安全のためのダムだとの理解が進んでいない」として町に更なる説明を求めていく考えだ。事業主体の県と佐世保市の担当者は「裁決書が届いていないのでコメントできない」と話した。(原口晋也、森本類)

◆2019年5月23日 日本経済新聞(共同通信)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45186410T20C19A5ACYZ00/
ー石木ダムの全用地取得へ 長崎、収用委が明け渡し裁決ー

 長崎県川棚町に計画されている石木ダム建設で、県収用委員会が反対地権者に対し土地の明け渡しを命じる裁決を出していたことが23日、分かった。ダム建設側が用地を全て取得できるようになり、反対地権者は反発している。

 関係者によると、計約12万平方メートルの土地の明け渡しを命じる裁決を21日付で出した。県は地権者に補償金を支払い、定められた期日までに住民が立ち退かない場合、行政代執行が可能になる。

 石木ダムは1962年、同県佐世保市の水不足解消や川棚町の治水を理由に県などが計画。一部の地元住民らが土地の買収に応じていない。〔共同〕

◆2019年5月24日 長崎新聞
https://this.kiji.is/504459558680167521
ー石木ダム用地 収用裁決 「本当の闘いはこれから」反対地権者ら抗議続行ー

  長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対地権者13世帯の宅地を含む土地の明け渡しを求める県収用委員会の裁決が明らかになって一夜明けた23日、反対地権者ら約30人は長崎県が進める付け替え道路工事現場での抗議の座り込みを続けた。

 反対地権者らは2017年夏から作業道に座り込むなどして抗議。裁決の報道を受け、同日は激励に訪れる支援者の姿も見られた。地権者の岩下秀男さん(71)は「裁決が出ても、こちらは何の変わりもない。行政代執行までやるつもりなのか。本当の闘いはこれから」と唇を結んだ。

 県収用委は21日、地権者の宅地を含む未買収地計約12万平方メートルの明け渡しを裁決。ダム建設に必要な全ての用地を強制的に収用することが可能になった。関係者によると、明け渡し期限は建物がない土地が9月19日、建物がある土地が11月18日。期限までに明け渡しに応じなければ、家屋の取り壊しや住民の排除などの行政代執行が可能になる。裁決書は5月末に地権者に発送される予定。