八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

千葉県議会に八ッ場ダムの地すべり対策等についての意見書提出

 市民ネットワーク千葉県より、県議会に八ッ場ダムに関する意見書を提出するとのお知らせをいただきました。
 今秋に予定されている八ッ場ダムの試験湛水を前に、ダム湖周辺の地すべり等を防ぐために万全の安全対策を求める内容です。

 八ッ場ダムは多くの住民の居住地である吾妻川の中流域に計画されたため、ダム湖は水没住民の移転代替地を含め、多くの宅地に取り囲まれることになります。ダム湖周辺の安全確保は、八ッ場ダム事業の最も重要な課題であると同時に、現地住民にとっては生活の基盤を揺るがしかねない問題です。

 以下の意見書を市民ネットワーク千葉県の伊藤とし子議員と秋葉就一議員(リベラル民主)、加藤英雄議員(共産)、みわ由美議員(共産)が共同で提出するとのことです。

6/19追記 本日、新たに「千葉民主の会」の賛同が決まったとのことです。千葉民主の会の所属議員は9名(田中信行議員、竹内圭司議員、天野行雄議員、礒部裕和議員、松戸隆政議員、入江晶子議員、野田剛彦議員、鈴木陽介議員、平田悦子議員)です。

 八ッ場ダムの試験湛水を始める前に、地すべり対策等万全な安全対策を講じることを求める意見書

 67年も前に計画され、不要不急の大型公共事業と指摘されながら国土交通省が工事を推し進めてきた八ッ場ダムは、ダム本体のコンクリート打設が完了し、今年10月には試験湛水が開始される。八ッ場ダム予定地は、浅間山の噴火による火山灰や岩屑(がんせつ)が流れ出て堆積した脆弱な地層であり、古来から地すべりが多発してきた。このような場所にダムを造ること自体が危険極まりない。

 しかるに、水没地域の住民のための住宅や施設は、ダム貯水池を取り囲むように30メートルの高さに盛り土造成された代替地にあることから、湛水前に、地すべり防止のため万全の安全対策を講じなければならない。

 しかし、国交省によるこれまでの地質調査と地すべり対策工事では、到底安全性は確保できないと、千葉大学名誉教授の伊藤谷生氏ら複数の専門家が指摘している。

 2011年の八ッ場ダムの検証で、10カ所の地すべり危険箇所と5カ所の代替地で約150億円をかけて対策工事を行う方針が示された。ところがその後、経費節減のため、対策箇所が次第に減らされ、地すべり危険箇所は5か所に、代替地は3か所に縮小された。対策工法も、代替地は鋼管杭工法から安価なソイルセメントを使った押さえ盛土工法に変えられた。国交省は変更後の対策工事費の公表を避けているが、大幅な経費削減であったことは確実である。

 吾妻川は中和対策がされているものの弱酸性であり、また、ダム貯水池周辺に分布する熱水変質層から酸性地下水が浸出することも考えると、酸性水により,セメント成分が溶け出して,押さえ盛り土に使ったソイルセメントが劣化する危険性が大きい。

 このままでは、ダムに湛水した場合、酸性水の影響や水位の変動で地すべりが起きる可能性が高く、地震が起きれば脆弱な地盤はひとたまりもない。

 国においては住民の命と財産を守るため、試験湛水を行う前に、万全なる地すべり防止対策を講じることを強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

                                                                         2019年6月28日
                         千葉県議会

 内閣総理大臣
 国土交通大臣  宛て
 衆議院議長
 参議院議長

—転載終わり—

写真下=八ッ場ダムの水没予定地には、吾妻川を挟んで左岸側から地すべり対策、右岸側から水没住民の移転代替地の安全対策の押さえ盛土がせり出している。右岸側の押さえ盛土と吾妻川の渓畔林の間には、2014年まで川原湯温泉駅があり、JR吾妻線の線路が吾妻川と並行して走っていた。2019年5月22日撮影。