参院選の滋賀選挙区では、国土交通省近畿地方整備局が事業者となっている大戸川ダム(淀川水系)の是非が争点となっています。
大戸川ダムは半世紀以上前に立案された事業で、事業者みずからが2005年に中止方針を発表しました。しかし、ダム中止の議論を主導した滋賀県の嘉田知事が退任したのをきっかけに推進派が巻き返しを図り、最近では知事選で自民党の協力を得た三日月・滋賀県知事が大戸川ダムの復活を目指す動きを強めています。しかし、大戸川ダムは受益者とされる京都府と大阪府の同意がなければ進めることができないため、国交省は慎重な姿勢を示しています。
今回の参院選では、嘉田由紀子・前知事が野党統一候補として立候補しており、激戦を繰り広げています。
〈参考〉国土交通省近畿地方整備局 大戸川ダム工事事務所ホームページ
https://www.kkr.mlit.go.jp/daido/
◆2019年7月19日 毎日新聞滋賀版
https://mainichi.jp/articles/20190719/ddl/k25/010/415000c
ー参院選2019 主な候補者アンケート/4 ダムと治水 /滋賀ー
(届け出順)
Q 国が計画し、建設が凍結されている大戸川(だいどがわ)ダムを巡り、三日月大造知事は建設を容認する方針を表明しました。ダムや治水対策の在り方について、どう考えますか。
悪影響の検討不十分 嘉田由紀子氏(69)=無新
A 大戸川ダムが必要と知事の判断根拠となった勉強会では、治水や琵琶湖全閉操作のマイナス面も報告されているが、知事判断では完全に無視されている。かつダム建設に伴う財政負担と、大構造物を造ることによる環境破壊の影響・堆砂(たいさ)の悪影響の検討も、不十分である。また、最大の問題点はダム建設の負担をする大阪府・京都府との合意なく今回の決定がされている点で、合意なしではダムは進捗(しんちょく)せず、政策のかじ取りとして不適切。
インフラ整備推進へ 二之湯武史氏(42)=自現(1)
A 異常気象が常態化している中で「コンクリートから人へ」、「もったいない」というキャッチコピーでは国民の生命・財産は守れません。ダムに限らず、真に必要なインフラ整備を推進し国土強じん化を図り、県民や滋賀を訪れる方々が安心安全でいられるよう早急に整備する必要があるため県と連携してまいりたい。
環境先進県、模索続く
国が計画し、建設が凍結されている大戸川ダム(大津市)を巡り、三日月大造知事は4月、建設を容認する方針を表明した。1968年に国が予備計画調査に着手したが、2008年に国土交通省近畿地方整備局の諮問機関が「効果が限定的」と建設見直しを提言。当時知事だった嘉田氏は京都、大阪、三重各府県知事と共に建設の凍結を求める共同見解を発表し、国は09年に事業凍結を決めていた。
その後、近畿地整は16年2月、治水対策としてダム建設が有利とする評価案を公表。県も全国で豪雨が相次いでいることなどを踏まえて独自の勉強会を設置し、今年3月にはダムの治水効果を認める報告を勉強会がまとめていた。三日月知事は「一定の治水効果があることが分かった。近年、全国で発生した豪雨でも、備えの重要性が認識されている」と方針転換の理由を説明する。
ダムや治水対策の在り方を嘉田、二之湯両氏に尋ねると、対照的な回答が寄せられた。
嘉田氏は「勉強会ではマイナス面も報告されたが、完全に無視されている」と批判。環境への影響などが十分に検討されておらず、大阪、京都両府との合意もないなどと指摘する。一方、二之湯氏は「異常気象が常態化する中、『もったいない』で国民の生命・財産は守れない」と主張。真に必要なインフラ整備を推進し「県と連携したい」としている。
全国各地で水害が多発する中、環境先進県・滋賀の治水はどうあるべきなのか、模索が続く。【成松秋穂】
◆2019年7月17日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47441930X10C19A7LKA000/
ー大戸川ダム着工に慎重、近畿地方整備局長が就任会見 ー
国土交通省近畿地方整備局長に就任した井上智夫氏(55)は17日、就任記者会見を開いた。焦点になっている大戸川ダム(大津市)の本体着工時期を決める淀川水系河川整備計画の改定について「見直しのタイミングには至っていない。関係自治体がどう考えるかが重要なので、意見交換をしたい」と慎重姿勢を示した。
井上局長は同ダムの本体工事凍結を決めた現行の淀川水系河川整備計画策定に同局河川調査官として関わった。
いのうえ・ともお 89年(平1年)京大院修了、建設省(現国交省)入省。07年近畿地方整備局河川調査官、16年同河川部長、18年水管理・国土保全局治水課長。大阪府出身。