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荒瀬ダム跡 調査見学会 薄れる撤去効果

 熊本県の球磨川では、電源開発が建設した発電目的の荒瀬ダムが2018年3月に撤去されました。
 熊本県では、球磨川支流の川辺川ダム反対運動もあり、本来の恵みの川を取り戻したいとの流域住民の運動と前知事の潮谷義子知事の決断が日本では唯一の本格的なダム撤去に繋がりました。荒瀬ダム撤去後、球磨川の自然がかなり蘇ってきましたが、上流約8キロにある瀬戸石ダム(電源開発)があるため、荒瀬ダムの撤去効果はピークを過ぎつつあるとのことです。

 ダム先進国である米国では、1990年代に河川行政が大きな転機を迎え、「ダム建設の時代は終わった」としてダム撤去が進められるようになりました。しかし、わが国では、荒瀬ダムに続くダム撤去がありません。
 球磨川流域では、瀬戸石ダムの撤去を求めて、粘り強い住民運動が続けられています。

〈参考ページ
 ★瀬戸石ダム撤去運動のフェイスブック

 ★パタゴニア公式サイトより
  「瀬戸石ダムの撤去の実現に向けて~人が動けば、川も流れだす~」 つる詳子

◆2019年8月8日 毎日新聞熊本版
https://mainichi.jp/articles/20190808/ddl/k43/040/406000c
ー荒瀬ダム跡 調査見学会 薄れる撤去効果 アユの産卵場、河原の小石減る 八代 /熊本ー

 国内初の本格的なダム撤去作業が昨年3月に終わった熊本県八代市坂本町の荒瀬ダム跡で、ダム撤去による河原の変化を体感する調査見学会があった。荒瀬ダム跡の上流約8キロにある瀬戸石ダムの影響で、撤去効果がピークを過ぎつつある実態を確認した。

 見学会は市民団体「瀬戸石ダムを撤去する会」が主催。自然観察指導員熊本県連絡会長で荒瀬ダムの撤去開始前から各地点の河原の状況を調べてきたつる詳子さん(70)が案内した。

 参加した13人は荒瀬ダム跡の下流1キロから上流へ8キロの区間で、河原6カ所の石の粒径を調査。瀬戸石ダムに近づくほど小石が減って大きな石ばかりになっていく様子を観察した。

 つるさんによると、1955年に荒瀬ダムが建設される前はアユがひれで動かせる3センチ程度の小石が多く、一帯はアユの絶好の産卵場だった。撤去開始後、ダム上流に堆積(たいせき)していた小石が下流に流れたため河原は短期間でダム建設前の状態に戻ったが、堆積した小石が底を突き、瀬戸石ダムで遮断された上流からは新たな小石が流れてこないため、大きな石ばかりになりつつあるという。【福岡賢正】

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 ■ことば

荒瀬ダム

 熊本県が1955年に建設した発電専用ダム。高さ25メートル、幅210・8メートル、総貯水量1013万7000立方メートル。かつては熊本県内の電力供給量の16%を賄っていたが2010年時点で1%を割っていた。環境悪化を訴える地元要請を受け、02年に潮谷義子前知事が撤去方針を決めた。コストを理由に蒲島郁夫知事がいったん方針撤回したが、球磨川漁協が水利権更新を認めず10年に再度撤去を決めた。ダム撤去は宮崎県都城市の轟(とどろ)ダムなど小規模ダムで先例があるが、河川法上のダム(高さ15メートル以上)では初。