長崎県は石木ダムを建設するため、ダム予定地に暮らしている13世帯の住民の土地と家屋の強制収用を行おうとしています。
長崎県の強引な手法には批判の声が高まっており、このほど「「石木ダム・強制収用を許さない県民ネットワーク」が立ち上げられました。
八ッ場ダムを含む全国のダム予定地では、ダム計画が発表された当初は、大半の住民がダムに反対しましたが、時間の経過とともに疲れ果て、ダム事業を受け入れてきました。いくら反対しても、最後は行政が強制収用を行う権利が、土地収用法で認められているためです。ダム行政を守る強制収用の仕組みは、これまで幾多のダム予定地の悲劇を生み出してきましたが、ダムの「公共性」という大義名分のために見て見ぬふりをされてきました。
しかし、八ッ場ダムと同様、石木ダムが治水(洪水調節)や利水(都市用水の開発)のために必要だというダム事業者の説明は事実ではありません。
半世紀ものダム計画の重圧の中で、暮らしを守ってきた石木ダム予定地で同じ過ちが繰り返されることのないよう、住民支援の輪が広がることを群馬県より願っています。
ネットワーク参加呼び掛け文とともに、関連記事をお伝えします。
参加方法については、以下のページの呼び掛け文をご覧ください。
http://www.kawabegawa.jp/ishiki/KENMINNETMOSHIKOMI.pdf
2019 年 8 月 10 日
長崎県民の皆さまへ
「石木ダム・強制収用を許さない県民ネットワーク」参加の呼びかけ
長崎県と佐世保市は、私たちの税金 538 億円を投じて「石木ダム」を建設しようとしています。地元住民がこの計画を知ったのは 1962 年。それから 57 年の歳月が経ちましたが、未だダムは造られていません。
しかし、今年 5 月 21 日、長崎県収用委員会は、建設予定地とする土地をすべて、9~11 月までに残らず明け渡すよう命じる裁決を、そこで暮らす 13 世帯の人々に対して下しました。
これに従わなければ、人々が代々受け継いできた土地は「強制収用」されてしまいます。そのための手段として、暮らしの土台である家も、生活に必要なすべての物も、そして人間も、実力で排除する「行政代執行」も可能になってしまいます。起業者である長崎県と佐世保市がそれを請求すれば、中村法道知事の判断によっては、実施に向けた手続きが開始されることになります。
長崎県は、1972 年に自ら主導して地元総代と交わした覚書で、住民の同意を得なければ建設に着手しないと約束しました。その約束は破られ続け、今日も、ダム本体の建設に向けて付替え道路工事が進められています。こうばる地区の 13 世帯、およそ 60 名の人々は、ふるさとを水没させるダムの建設には、同意していません。にもかかわらず、あと数か月の間に、祖先から受け継いだ土地を失くすだけでなく、これまで長い時間をかけて培ってきた暮らしそのものをも奪われてしまうかもしれません。
【日本国憲法 第十一条】
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
「強制収用」は、社会活動の基本である財産権を否定し、基本的人権を侵す行為です。
その「強制収用」を許すことは、私たち自身が、自らの手で、自らの憲法を無力化することに等しいのではないでしょうか。前例をひとつつくれば、子どもたち、孫たち、ひ孫たちの時代にも、同じことが引き起こされるかもしれません。取り返しのつかない失敗をしてしまう前に、私たち長崎県民は、みんなで手をつなぐべきではないでしょうか。
「石木ダム・強制収用を許さない県民ネットワーク」に、ぜひご参加ください。県民そろって、中村法道知事に対し、強制収用のための行政代執行を行わず、石木ダム建設事業を見直すようはたらきかけましょう。参加いただける方は、別紙の参加申込書をお送りください。年会費は 1000 円です。
(以下略)
◆2019年8月11日 長崎新聞
https://this.kiji.is/532940427541857377?c=39546741839462401
ー石木ダム・強制収用許さない 反対派がネットワーク設立 集会やパレードなど展開ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、建設に反対する有志が10日、「石木ダム・強制収用を許さない県民ネットワーク」を設立した。今後、集会やパレードなどを展開し、強制収用反対を訴えるという。
石木ダムを巡っては、家屋を含む土地の明け渡しを地権者に求める県収用委員会の裁決が出ている。9~11月の期限までに応じなければ、県と佐世保市は家屋の撤去や住民の排除といった行政代執行を知事に請求でき、知事が対応を判断することになる。同ネットワークは既存の団体の枠を超え、これまで運動に関わっていなくても強制収用すべきでないと考えている幅広い市民に参加してもらおうと設立した。事務局はダム問題について考える市民団体「いしきを学ぶ会実行委員会」。県民以外も参加できる。
同実行委は同日、長崎市内で集会を開催。米国出身で広島県在住の詩人、アーサー・ビナードさん(52)とダム建設予定地の川原(こうばる)地区の住民3人が対談した。3人は子どもの頃に石木川で遊んだ思い出や地元への思いを語り、「普通に生活しているだけ。何か悪いことをしたのだろうか」などと憤りを示した。
ビナードさんは故郷の米ミシガン州と川原地区の風景が似ていると明かし、自然を守るため同ネットワークにも名を連ねた。「取り返しがつかない問題がたくさんある中、石木ダム建設はまだ止めることができる。石木川の豊かな自然を生かした経済政策への転換もできるのでは」と語った。