国交省が秋田県由利本荘市に建設を計画している鳥海ダムについて、今月5日、損失補償の協定書調印式が開かれました。
鳥海ダムの建設目的は、「洪水調節」、「水道用水の確保」「発電」などです。秋田県では成瀬ダム(現在、ダム本体工事に向けた準備工事中)に続く国交省による大規模ダムになります。総貯水容量は成瀬ダム:9650万㎥、鳥海ダム:4700万㎥です。
完成予定は2028年度ですが、予備調査からすでに半世紀近くたっており、他の巨大ダム事業同様、完成はさらに遅れる可能性が高いのではないでしょうか。
人口減少が本格化する時代、新たなダムが必要とされる時代ではなくなっているのですが、ダム行政を維持するために将来世代に負担を強いる次なる事業が用意されました。
国交省東北地方整備局のホームページには、鳥海ダムの完成イメージ図が掲載されています。(右画像)
http://www.thr.mlit.go.jp/chokai/kansei/kansei_img.html
◆2019年9月5日 秋田魁新報
https://www.sakigake.jp/news/article/20190905AK0009/
ー鳥海ダム補償、地権者会と5日調印 移転の個別協議、本格化ー
鳥海ダムの建設に伴い、移転を迫られる秋田県由利本荘市鳥海町百宅(ももやけ)地区の地権者会と、国土交通省東北地方整備局による損失補償に関する協定書調印式が5日、同市鳥海町の市民俗芸能伝承館まいーれで開かれる。旧鳥海町にダム建設計画が浮上し、本格調査が始まって26年。両者の合意で、いよいよ住民の移転に向けた個別協議が本格化する。完成予定は2028年度。
地権者会は百宅地区の住民が主体の「百宅町内会水没地権者会」(佐藤一太郎会長、30世帯)、「百宅地区ダム地権者会」(村上一夫会長、8世帯)と、地区を離れた後も土地や建物を所有する関係者で構成する「鳥海ダム地権者会」(齊藤一榮会長、84世帯)の三つ。地権者は合わせて130人を超えるという。
合意したのは土地の標準的な取得価格や建物、工作物の移転料、立木類の補償など基本的な事項を定めた損失補償基準。国交省鳥海ダム工事事務所が今年6月、3地権者会に提示。7月中旬までにそれぞれから同意を得た。調印後は各地権者との協議に入る。
鳥海ダム工事事務所によると、ダムで水没する面積(貯水池面積)は約310ヘクタール。4月1日現在、移転に伴う補償対象家屋は37世帯が所有する約150棟で、今も百宅地区で暮らすのは24世帯47人(季節居住含む)。
調印式には各地権者会や行政関係者ら約60人が出席予定。佐竹敬久知事、長谷部誠市長の立ち会いの下、地権者会の代表3人と、佐藤克英東北地方整備局長が協定書にサインする。
鳥海ダムを巡っては、国が1993年に実施計画調査を開始。96年に調査地点が同町猿倉地区から百宅地区に変更された。2009年には当時の民主党政権がダム事業の見直しを表明。鳥海ダムも対象となったが、検証の結果、13年に事業継続が決まり、昨年12月には国が基本計画を告示した。
【鳥海ダム】
国交省が昨年12月に告示した基本計画によると、建設目的は▽子吉川の洪水調節▽流水の正常な機能の維持▽水道用水供給▽発電―の四つ。ダムは高さ81メートル、総貯水容量4680万立方メートルで、ともに県内4番目の規模(建設中の成瀬ダムを含む)になる。耐震安定性が高く、環境負荷の低減などが見込まれる「台形CSGダム」とする。工期は28年度までの予定で、総事業費は約1100億円。本年度末までの執行額は約160億円。
◆2019年9月5日 秋田テレビ
https://www.akt.co.jp/news?sel=20190905-00000005-AKT-1
ー鳥海ダム建設へ推進 “ダムに沈む地区”が補償協定結ぶ 秋田・由利本荘市ー
秋田県由利本荘市の鳥海ダム建設に伴い移転が迫られる地区の地権者が5日、国と補償の協定を交わした。今後、国は地権者と個別に協議していく。
鳥海ダムは、洪水の調節などを目的に由利本荘市鳥海町百宅(ももやけ)地区に建設を計画している多目的ダム。
調印式には、ダムの建設にともない水没する百宅地区の地権者で作る会のメンバーや行政の関係者など60人が出席した。
3つある地権者の会の代表と国との間で、それぞれ補償に関する協定書に署名が交わされた。
協定には、国が土地を買い取る標準的な価格や建物を移転する際の補償の考え方などが盛り込まれている。
百宅町内会水没地権者会の佐藤一太郎会長は「生活再建をしっかりしてもらうという約束のもとに、子吉川流域のみなさんの生活安定に協力しようというのが百宅町内会の考え方。(移転先に)溶け込んでいけるのか不安がある。行政にサポートしてほしい」と話していた。
国は今後、百宅地区に土地や建物などを持つすべての世帯と個別の協議を行って、2021年度中の終了を目指し、2028年度のダムの完成を目指す。
https://www.akt.co.jp/news?sel=20190905-00000008-AKT-1
-安全と活性の名のもと沈みゆく秋田県の集落 鳥海ダム計画の半世紀ー
国土交通省が秋田県由利本荘市に建設を計画している鳥海ダム。1970年の秋田県による予備調査が始まってから9月5日の補償の調印まで約半世紀、長い年月と多くの労力がかかっている。
2011年6月、秋田県内は大雨に見舞われ、由利本荘市を流れる子吉川流域は当時、観測史上最大と言われる洪水が発生した。子吉川は、川の全長が短いのに対し、上流と下流の標高差が大きく、ひとたび大雨となると氾濫する恐れがある。流域に住む人たちは生活を脅かされてきた。そのため国は、子吉川上流の旧鳥海町百宅地区に鳥海ダムの建設を計画した。
鳥海ダムは、子吉川流域の洪水調節に加え、水道用水の安定供給や発電などを加えた多目的ダム。堤の高さは81メートル。約310ヘクタールの地域がダムの底に沈む。総工費は1100億円で2028年度の完成が見込まれている。
県による予備調査は1970年に始まった。2010年には民主党政権の方針により一時事業の見直しが行われたが、2013年に事業の継続が決定。2015年、国は鳥海ダム工事事務所を設置し、調査から建設に向け本格的に舵を切った。
一方、ダムの底に沈む百宅地区の文化を後世に伝えていこうと、国は歴史や民俗地質などの専門家で構成する記録保存委員会を立ち上げ、地区の映像や写真、農具などを集めてきた。去年開かれた委員会で、委員のひとりは「当時百宅地区に在職した先生方がいる。その人たちへの聞き取り、さらには地域を離れた人からも話を聞きたい」と話した。
予備調査から49年。鳥海ダムの計画は大きな山場を越え、住民による協定の調印で、建設に向けた動きは一層加速した。
◆2019年9月6日 毎日新聞秋田版
https://mainichi.jp/articles/20190906/ddl/k05/010/134000c
ー鳥海ダム、損失補償協定 国、地権者と個別協議へー
由利本荘市で計画が進む鳥海ダムの建設に伴う損失補償に関する協定が5日、国と住民らにより結ばれた。協定は基準となる土地の取得単価などで合意したもの。国は今後、地権者との個別協議に入る。
協定の調印式は同日、同市民俗芸能伝承館「まいーれ」であり、ダム湖に沈む同市鳥海町の百宅地区の住民など計60人が集まった。協定には地権者会3団体の各会長と、佐藤克英・東北地方整備局長が署名。佐竹敬久知事と長谷部誠同市長が立会人を…(以下略)