国土交通省は既設ダムの定期検査を行っています。検査は、3 年に 1 回以上の頻度で実施することを基本としています。
ダム定期検査の手引きはこちらです。
(国土交通省HP 水管理・国土保全局のページより、ダム定期検査の手引き「河川管理施設のダム版」)
日本軽金属の雨畑ダム(富士川水系、山梨県早川町)の堆砂が進行し、上流の水害や下流の駿河湾のサクラエビ不漁が問題になっていることから、このほど当会の嶋津暉之さんが国交省関東地方整備局への情報公開請求で入手した、日本軽金属・雨畑ダムの定期検査結果と嶋津さんによる開示資料の解説を紹介します。
雨畑ダムの定期検査結果(2019年5月)
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2019/09/e41fa6c1d910b33ac4a2919dd4f2f8c0.pdf
(上記の文字列をクリックすると開示資料がご覧いただけます。)
ダム定期検査では、総合判定として、
A 直ちに改善の措置が必要である。
B 一部問題はあるが、全体的な問題はない。
C 全体的に問題はない。
の判定が行われるのですが、開示資料を見ると、判定をするだけというのが実態のようです。
雨畑ダムは総貯水容量の93~95%が土砂で埋まっており、末期的な状況にあります。この凄まじい堆砂によってダム上流域に氾濫地帯がつくられ、一方で、ダム下流の早川・富士川の濁りが進行しています。
しかし、雨畑ダムの定期検査結果を見ると、下記の指摘・判定があるだけで、抜本的な改善をいつまでに実施することを求めるというものではありません。
雨畑ダムの定期検査結果(2019年5月30日)
○指摘事項(a判定の場合)
貯水池の堆砂の状態:a
堆砂により上流部の河床が上昇しており、洪水被害が発生していることから、前回に引き続きa判定とする。抜本的な解決に向け、堆砂対策の計画をとりまとめ、計画的に取組をすすめること。
また、変形(変位)等の計測結果に異常は見られなかったものの、堆砂量が堆砂容量を超過しているため、安定計算等によりダム堤体への影響や放流設備の機能について検討すること。
総合判定
A :ダムの安全性及び機能への影響が認められ、直ちに措置を講じる必要がある。
(a判定とした検査箇所がある。)
国土交通省は定期検査結果で「直ちに措置を講じる必要がある」と指摘していますが、改善措置をただちに取らなくてもペナルティはないようです。毎回、指摘を受けながら、堆砂問題が深刻化するままズルズルときたものが、下流の駿河湾でのサクラエビ不漁をきっかけに静岡県から原因を追求する行政や報道の働きかけが次第に強まり、今年になってようやく問題が顕在化してきたということのようです。
ちなみに国交省関東地方整備局は、8月9日付で日本軽金属に雨畑ダムの堆砂の現状を抜本的に解決するよう、文書で行政指導を行いました。この行政指導によって、ようやく国交省は抜本的な対策について日本軽金属に「計画をとりまとめ報告を求めること」を求めたのです。
既設ダムの定期検査は、現状を把握するだけで、問題解決の役には立っていないことがわかります。