丹生ダム事業は水源開発を目的として国が1988年に事業を開始しましたが、2016年に中止が決定しています。水源開発を目的とした(独)水資源機構のダム事業でありながら、事業に参画していた淀川流域の京都府、大阪府などが水需要の低迷を理由に事業から撤退し、利水目的が失われたためです。
しかし、滋賀県長浜町のダム予定地では、すでに水資源機構が用地を取得しています。以下の記事によれば、滋賀県は用地買収の可能性を年内に判断するとのことです。
ダム事業では、水没予定地などの用地買収が進むと、たとえ事業が中止されても、土地が自由に使えません。ダム事業には道路建設などの関連事業も多く、道路等の整備を望む地元では、これも問題となります。
2009年の民主党政権下で八ッ場ダム事業の中止が取り沙汰された時も、地元ではこれらの問題が深刻だと言われました。
◆2019年10月14日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/25619
ー建設中止のダム予定地、県による用地取得可能性検討へー
建設中止となった旧丹生(にう)ダム予定地(滋賀県長浜市)の買収用地の在り方について、滋賀県は10月上旬の県議会一般質問で、県による用地取得の可能性を年度内に判断する方針を明らかにした。用地を所有する事業主体の独立行政法人水資源機構(さいたま市)は売却を検討しており、地元は森林保全の観点から公的機関が引き継ぐよう求めている。
機構はダムや周辺道路の整備のために一帯の土地約350ヘクタールを買収したが、国のダム建設中止に伴って事業目的を失い、売却などによる処分を迫られている。県は地元住民らの要望を受け、用地を取得するかどうかを検討している。
川浦雅彦土木交通部長は、柴田清行県議(自民党県議団)の質問に対し「地元の要望に応える方向で処分することは、全国的にも前例がなく難しい課題。本年度の早い時期に県の考え方を示し、地元や関係機関と議論したい」と述べた。
水没予定地を通る県道の付け替え道路も工事が中止されたままになっている。地元では工事の継続を望む声が出ているが、川浦部長は「県道の機能を有しておらず、保有・管理することは難しい」と難色を示した。
県は水没予定だったため通行止めとなった県道について2026年度までの使用再開を目指しており、機構と連携し修復作業を急いでいる。
◆2019年10月14日 京都新聞
https://this.kiji.is/556439166174250081?c=39546741839462401
ー丹生ダムとは 治水や利水目的も2016年に中止決定ー
丹生ダムとは 高時川、姉川の治水や利水を目的に国土交通省近畿地方整備局が1960年代から整備を進めてきたが、2016年に中止が決まった。事業費は1080億円。建設予定地の買収や道路工事に約570億円を費やした。
中止決定後、地元住民と同整備局、滋賀県、長浜市、水資源機構の5者が地域整備協議会を立ち上げ、予定地周辺で林道整備や高時川の改良工事など地域振興のための事業を進めている。
◆2019年10月14日 毎日新聞滋賀版
https://mainichi.jp/articles/20181020/ddl/k25/010/427000c
ー丹生ダム 道路工事進捗 整備協、初の現地視察 長浜ー
丹生ダムの予定地だった長浜市余呉町の高時川上流の地域整備を進める「丹生ダム建設事業の中止に伴う地域整備協議会」が19日、道路整備工事などの進捗(しんちょく)状況を確認するため、初めて現地視察を実施した。
地元住民でつくる丹生ダム対策委員会(湯本聡委員長)と国交省近畿地方整備局、県、長浜市、水資源機(以下略)