雨畑ダムは堆砂量が総貯水容量に近づいており、ダム上流の水害を引き起こすとともに、ダム下流の河川環境、駿河湾の濁りの原因として指摘されています。
国土交通省は今年8月、雨畑ダムを管理する(株)日本軽金属に抜本的な解決を求める行政指導を行い、地元住民も解決を求めていますが、堆砂対策はその後進んでいないようです。
雨畑ダムの堆砂問題は、駿河湾のサクラエビ漁への影響という観点から静岡新聞の取材が始まり、クローズアップされてきましたが、この間の報道を見る限り、日本軽金属が抜本的な対策に取り組もうという姿勢は見られません。
国土交通省は最新データとして平成29年度末時点での全国のダムの堆砂状況を情報開示しています。このデータによれば、雨畑ダムの総貯水容量は1365万㎥、堆砂量は1244.2万㎥です。
◆2019年11月24日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/special/sakura_ebi/008/708409.html
ー雨畑ダム、堆砂対策足踏み 駿河湾奥の濁り続くー
駿河湾奥の濁りの原因の一つとして指摘され、ほとんどが土砂で埋まる雨畑ダム(山梨県早川町)の対策を話し合うため日本軽金属(東京都)が9月に設置した協議会の第2回会合が開かれないままとなっている。国は8月に抜本解決を行政指導したが、具体策は見えない。サクラエビの産卵場の駿河湾奥の濁りは続いている。
協議会は雨畑地区土砂対策検討会で同県や国土交通省に参加を求めた。同県の担当者によれば、9月上旬に初会合が開かれた際、同社から「年内に方向性をまとめたい」との話があったという。だがその後、開催通知はない。台風19号でダム上流が孤立するなど大規模に被災したことから、「いまはやれる状況ではない」との相談が同県にあった。
サクラエビの産卵場として、生態にとって最も重要な海域の駿河湾奥の濁りは強いまま。同社蒲原製造所(静岡市清水区蒲原)の放水路から工業用水を取水する静岡県企業局によれば、2011年度から強い濁りが改善せず、ことし4月以降も同様の状況。放水路の濁水は雨畑ダムにも由来し導水管を経て海に注がれている。
協議会の第2回開催時期について同製造所は23日までに「現時点では決まっていない」と述べた。
◆2019年11月6日 静岡新聞
https://www.at-s.com/sp/news/article/special/sakura_ebi/008/701993.html
ー雨畑ダム、対策費盛らず 日軽金HD、堆砂陳謝 決算会見ー
駿河湾産サクラエビの不漁を契機に焦点が当たる雨畑ダム(山梨県早川町)の堆砂問題で、日本軽金属ホールディングスの高橋晴彦執行役員は5日、都内で開いた2019年9月中間連結決算の発表記者会見で、国から行政指導された抜本対策について「金額を答えられるレベルでない」と説明。20年3月期通期業績予想に具体策を盛り込まなかった。
公表した決算短信には、堆砂率が9割を超え、周辺地域に水害を頻発させ、下流の濁りの原因とされるダム湖内のヘドロについて「計画が確定した時点で適切な会計処理を行う」と記した。
高橋執行役員は会見で、台風10号、19号による浸水被害を陳謝した上で「今後対応を進めていく、という内容を書かせてもらった」と述べた。広報・IR担当者が「計画策定に向けて動いている。金額は答えられる計画のレベルにはなっていない」と補足した。
同社によると、20年3月期のグループ全体の純利益は前回7月に下方修正した通期業績予想時よりさらに30億円減の150億円程度とした。19年9月中間期の純利益も前年同期比2割以上減少。同社は「米中貿易摩擦の長期化などの影響」と説明している。