10月に関東地方を直撃した台風19号の豪雨水害では、本流に限らず支流でも多発しました。
八ッ場ダムは利根川本流の洪水調節を目的として建設されました。利根川の本流は国の管理ですが、支流は県の管理です。本流の治水対策という名目で国と流域都県の公金が投じられた八ッ場ダム事業ですが、事業費の9割はダム建設以外の関連事業に費消されています。一方で、支流を管理する県は治水予算が足りず、思うように支流の治水対策が実施できていません。
昨年9月の群馬県議会では、伊藤祐司議員の質問により、県管理の河川改修率が30%台であり、年進捗率が1%未満であることが県当局の答弁で明らかになりました。
以下の茨城新聞では、台風19号による水害被害の9割は県管理に集中していたとし、河川管理や復旧をめぐる国と県の“壁”も露呈したことを伝えています。
◆2019年11月21日 茨城新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191121-00000004-ibaraki-l08
ー《台風19号検証》河川管理、国と県で溝 予算、整備に差 「水系一貫」望む声ー
「国管理、県管理と分かれ過ぎている」「支流への配慮がない」「県だけでは手に負えない」-。台風19号上陸から1カ月が過ぎて開かれた「久慈川・那珂川流域減災対策協議会」の会議では、地方から国への不満が噴出し、水系一貫で抜本的な河川整備を望む声が相次いだ。河川管理や復旧を巡る国と県の“壁”が、本流に限らず支流でも多発した氾濫によって露呈した。
■被害9割が地方
「国管理、県管理をまとめ、水系一貫として議論していただきたい」
常陸大宮市役所で13日、茨城、栃木両県の久慈川、那珂川の流域市町村の首長や担当者らが集まった協議会会合で、伊藤高県土木部長は国の担当者に訴えた。
県災害対策本部によると、台風19号による河川の被害状況は、国管理が6河川14カ所に対し、県管理は59河川、2砂防施設、3海岸、1ダムの計135カ所と断然多い。被害箇所の数だけを比べると、約9割が県など地方自治体の管理に集中する。
県管理の中小河川では、本流から支流に逆流するバックウオーター現象が氾濫の引き金を引いた箇所があった。国管理の本流に比べ、地方が管理する中小河川は水位監視カメラの整備が進んでおらず、目の届きづらさも表面化した。
■「手に負えない」
河川法に基づき、特に重要な全国109の水系を国土交通大臣が「一級水系」に指定。その中で本流など主要区間を「一級河川」として国が直接管理し、ほかの部分は都道府県などが管理している。
国管理と県管理の河川では、河川改修や堤防強化の予算や、治水の設備、人員で差があり、被害箇所の復旧にも管理者の違いによってスピード感や整備内容に差が生まれかねない。
例えば、上流だけ早いなど局所的な河川整備が進めば、上・下流や本・支流でバランスを欠く不安定な治水となり、下流で大きな水害を招く恐れがある。
台風19号で堤防決壊が相次いだ久慈川の本県区間では、国管理は河口から辰ノ口堰(常陸大宮市)までの27・6キロ。同堰の上流は、大規模な浸水被害やJRの鉄橋流失があった大子町を含め県管理だった。
伊藤部長は「復興的な新たな河川改修に入っていく場合、県だけでは手に負えない」と語った。
■抜本的な治水を
協議会の席上では、河川管理者の“壁”に対し流域市町村から異論の声が多く上がった。
今回の台風19号を踏まえ国側は協議会規約の改正を提案。しかし、従来通り協議する対象を国管理の本流に限る改正案に、高橋靖水戸市長は「那珂川本体でなく、特に支流で大きな被害があった。支流も対象にすべき。ないがしろにしないでほしい」と声を上げた。
久慈川、那珂川上・下流と三つの部会を設置する内容にも、大久保太一常陸太田市長が久慈川流域部会の構成員に「今回大きな被害のあった大子町が入っていない」と異議を唱えた。同町の久慈川に国管理区間がないことが“外された”理由だが、大久保市長は「一本の川として防災対策をどうするんだという見方からも加えるべき」と訴えた。
規約改正案はこの日、原案通り承認されたが、国交省の担当者は、首長らから出た意見を再改正案に盛り込み、次回会合で示す方針を示した。
19日の県議会臨時会で大井川和彦知事は「本川の流下能力の大幅な向上が図られるよう、抜本的な河川整備の推進を引き続き国に強く要望していく」と答弁。同じ日、常陸太田、常陸大宮、那珂、大子の4市町の首長らは国交省を訪ね、抜本的な治水対策を強く求める要望書を提出した。(三次豪)