昨日26日、ダムの洪水調節機能強化に向けた関係省庁検討会議の初会合が首相官邸で開かれました。
この検討会議では、全国のダムで「事前放流」を検証していくことになりました。しかし、ダム集水域に降る雨を定量的に予測することは難しいところがあり、ダムの事前放流は空振りになることが多いので、事前放流といっても大量にできるものではありません。また、昨年7月の西日本豪雨では愛媛県・肱川の野村ダム・鹿野川ダムはそれなりの事前放流をしていましたが、それでも緊急放流を行う事態になり、ダム下流域を大氾濫させました。事前放流という話でダムの基本的な問題が解消されるわけではありません。
この検討会議は菅官房長官の主導で進められるようです。議長となる和泉洋人首相補佐官は国交省出身で菅長官側近ですから、菅氏には国交省の情報が直接届いているのでしょう。事前放流は洪水調節以外のダムの役割である発電や利水(都市用水や農業用水)の水利権と絡む問題ですから、ダムを担当する国交省だけでなく、経産省、農水省、厚労省との調整が必要です。
☆検討会議が開催される前の予告記事は、こちらにまとめています。
➡「緊急放流減らす」 既存ダム運用検証 官房長官
◆2019年11月26日19時3分 NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191126/k10012192171000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_011
ー全国のダムで「事前放流」検証へ 台風19号を教訓にー
台風19号による豪雨災害を教訓に、ダムの洪水調節機能を強化するため、政府は関係省庁の会議を開き、菅官房長官は全国のダムについて、事前に水を放流し、水位を下げておく「事前放流」を行えるかどうかなどを検証し、豪雨への体制を整えるよう指示しました。
台風19号による豪雨災害を受けて、政府は、ダムによる洪水調節機能を強化する必要があるとして、総理大臣官邸で関係省庁の局長級による会議の初会合を開き、菅官房長官も出席しました。
台風19号による豪雨では、関東や東北を中心とするダムで、下流に放流する水の量を抑制する「洪水調節」が行われましたが、広範囲で河川が氾濫するなどの被害が発生しました。
会議の中で、菅官房長官は、「わが国には、国土交通省が所管するおよそ560の多目的ダムのほか、電力や農業用などの利水ダムがおよそ900あるが、すべてのダムの貯水容量のうち、水害対策に使える『洪水調節容量』は3割にとどまっている」と指摘しました。
そのうえで、「近年の水害の激甚化を踏まえ、ダムの運用を検証し、洪水調節機能を早期に強化する」と述べ、全国のダムについて、洪水の危険が予想された場合、事前に水を放流し、水位を下げておく「事前放流」を行えるかどうかなどを検証し、豪雨への体制を整えるよう指示しました。
◆2019年11月26日 時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019112601007&g=eco
ーダム1460カ所の治水強化へ 来夏に運用開始―政府ー
政府は26日、台風19号などの大雨被害を受け、国内ダム計1460カ所の治水強化に向けた関係省庁の検討会議を首相官邸で開いた。菅義偉官房長官は「来年の夏には、既存ダムを最大限活用した新たな運用を開始する」と述べ、河川の水系ごとに治水強化の行程表を作るよう省庁に指示した。
対象は、電力や農業など利水用ダム約900カ所と、治水や利水など複数の機能を持つ多目的ダム約560カ所。菅氏は会議で「全ダムの貯水容量のうち、水害対策に使える容量は3割にとどまっている」と指摘。運用方法を見直し、ダムの種類にかかわらず、大雨の際には事前に放流し、雨水をためる量を増やす仕組みを早期に強化する方針を示した。
◆2019年11月26日 毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191126-00000075-mai-pol
ーダム活用した水害対策強化で初会合 政府ー
政府は26日、今年10月の台風19号で水害が多発したことを受けて、ダムの洪水調節機能強化に向けた関係省庁検討会議の初会合を首相官邸で開いた。緊急時には治水目的だけでなく、水道や発電など利水目的でダムにためた水も事前に放流することで、貯水容量を増やす方針を確認。政府は来年夏の運用開始を目指し、ダムを活用した水害対策強化を進める。
全国には治水機能のあるダムが562基、上下水道、発電、農業など利水目的のダムが898基ある。ダム全体の貯水容量のうち、治水目的に使用できるのは約3割にとどまる。菅義偉官房長官は26日の初会合で、利水目的の容量も洪水調節に活用する方針を示し、「近年の災害の激甚化を踏まえ、国内全体の治水機能を強化できるよう政府一体の取り組みをお願いしたい」と述べた。
台風19号による大雨では、6基のダムで貯水量が容量に近づき、新たにたまる分を下流にそのまま流す「緊急放流」を実施。一方、ためた水を事前に放流して水位を下げ、緊急放流を回避したダムもあった。
政府は洪水対策として、事前放流が有効だと判断。利水目的でためた水も事前に放流できるようにするため、電力会社や農業団体などの水利権者と協力関係を強化する。【秋山信一】
◆2019年11月26日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52626630W9A121C1EE8000/
ー発電・農業用ダム、洪水対策に活用 政府検討会議が初会合ー
政府は26日、頻発する豪雨災害に備えるためのダム機能強化に向けた検討会議の初会合を開いた。発電や農業用に水をためる利水ダムを活用し、事前放流によって雨をためておく容量を確保することが柱だ。年内に政策の基本的な方向性をまとめた上で、来年6月からの運用開始を目指す。
利水ダムの有効貯水容量は約70億立方メートルあり、洪水対策に使う治水ダムの約6割の規模がある。ダムの新設には多額の費用と長い建設期間が必要になるため、既存のダムを有効活用する。発電用のダムを管理する電力会社などと協議し、利水ダムで事前放流する際の手続きを定めていく。
会議に出席した菅義偉官房長官は「国内の全ダムの貯水容量のうち水害対策に使えるのは3割にとどまる」とした上で、本流や支流を合わせた水系ごとに利水容量の治水活用に向けた工程表の作成を指示した。会議は和泉洋人首相補佐官を議長に国土交通、経済産業、農林水産、厚生労働など各省幹部で構成する。
◆2019年11月26日 TBS
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3840902.html
ー政府、発電用ダムなども洪水対策利用を検討へー
台風19号など東日本を中心に大きな被害をもたらした豪雨災害を踏まえ、政府は発電用ダムなども洪水対策に利用出来るようにするための検討に入りました。
「近年の水害の激甚化を踏まえ、全てのダムの運用を検証し、洪水調整機能を早期に強化することとした」(菅義偉 官房長官)
現在、日本国内にはおよそ1460のダムがありますが、900は電力や農業用水用のダムで、水害対策として使用出来る容量は全体の3割にとどまっています。政府は今年、豪雨により河川の氾濫が相次いだことを受け、発電や農業用水の「利水ダム」についても洪水対策に利用出来るよう検討を始めました。
今後、来年夏に新たな運用を開始出来るよう検討を進め、「緊急放流を減らすことで下流での急激な水位の上昇を回避出来るよう取り組む」方針です。