昨年7月の西日本豪雨では、肱川流域の愛媛県西予市が野村ダムの緊急放流により凄まじい被害を受けました。
西予市が当時の対応を検証した報告書をまとめ、ホームページに公表しました。
西予市の報告書は次のURLで見ることができます。
「平成30年7月豪雨における西予市災害対応に関する検討報告書の作成について」
https://www.city.seiyo.ehime.jp/kakuka/soumu_kikaku/kiki_kanri/bousaikeikaku/7147.html
関連記事を転載します。
◆2019年12月21日 朝日新聞愛媛版
https://digital.asahi.com/articles/ASMDF6QRXMDFPFIB01C.html
ー西日本豪雨の検証、西予市がHPで公表 改善策もー
昨年7月の西日本豪雨で6人(災害関連死1人を含む)の犠牲者が出るなど大きな被害を受けた愛媛県西予市が20日、当時の対応を検証した報告書をまとめ、ホームページで公表した。7月7日早朝の野村ダムの緊急放流で肱川の水位が急上昇し、下流の野村地区一帯に濁流が流れ込んだ前後の動き、被災後の避難所運営など2カ月半に及ぶ対応の記録だ。今後の防災や災害対応の参考になるようにそれぞれに詳細な「改善事項」も指摘した。(亀岡龍太)
「市の災害対応の記録及び今後の防災対策のあり方と改善の方向」と題した報告書は、A4判で約230ページに及ぶ。
被災当時、西予市の職員には本格的な災害対応の経験がほとんどなかった。今回の経験を今後の防災に反映することが必須だとし、職員アンケートや担当班別のヒアリングを実施。情報収集や指揮のあり方、被災者への対応などで多くの課題が浮かび上がり、反省点も多かったという。
そうした被災前後の対応を有識者ら12人でつくる災害対策本部運用改善検討会(委員長・宗正弘副市長)で議論し、アンケート結果などとともにまとめた。公表は予定していなかったが、検討会で「他の自治体も参考になる」と有識者から促され、公表を決めた。
報告書を受け、管家一夫市長は11月末の防災会議で「昨年のような豪雨や南海トラフ地震など今後想定される大規模な災害に向けて具体的な防災施策につなげたい」と話し、来春全面的に見直す地域防災計画に反映させる考えを示した。
30項目の「改善事項」載せる
報告書では、西予市の全体的な被災状況や時系列での対応を記述。災害発生前後の情報収集や避難誘導、被災後の避難所運営や仮設住宅対策、被災者支援、ボランティアの受け入れなど22の対応について、活動と課題を詳細に記した章を設け、約150ページを割いた。さらに、それぞれの活動を踏まえ、30項目にわたる「改善事項」を載せた。
改善事項では、避難に関する意思決定の過程で記録的短時間大雨情報が活用されていなかったとし、「災害との関連性が高い情報を活用できるよう避難判断方法の改善が必要」と指摘。災害時優先電話が災害対策本部の総括指令室内になかったため「確保すべき」、病院と市の間で「電話が使えない場合の通信手段の確保が必要」とした。
また、16%の職員が自宅や家族の被災、消防団活動などで当日中に参集できなかったとアンケートに回答した。市側が全職員に参集を求める一斉メールを送ったのは当日午前8時2分。この時点で野村地区には避難指示が発令され、すでに肱川は氾濫(はんらん)。職員の一部は団員として救助活動などに追われていた。これについて報告書では、参集要請を受けて「どちらを優先すべきか迷った人がいた」とし、「消防団との兼務職員の参集ルールの確認、周知が必要」と改善を求めた。
また、避難所となった野村小学校では最後まで住民らによる運営組織ができず、市職員が運営した。市職員は災害対応業務で忙殺されるため、「避難者が中心となった避難所運営に移行できるよう体制を整えることが必要」と指摘した。
みなし仮設住宅をめぐっては、入居条件が二転三転して窓口で被災者が戸惑った例もあり、実施主体の県に対して「入居条件をあらかじめ設定」するよう要請している。
具体的で参考になる
検討会の委員で愛媛大学防災情報研究センター副センター長の二神透・准教授の話 災害に関する自治体の報告書は事実を淡々と記す例が多いが、西予市の報告書は職員への詳細なヒアリングやアンケートに基づいて改善事項や有効だった点を具体的に示し、幅広い課題を指摘する内容になっている。被災対応に追われる自治体や、今後災害への対応を余儀なくされる自治体の参考になり得る。