八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

長野原町、YouTubeに「ふるさと、八ッ場」公開

 八ッ場ダムの地元自治体である長野原町が本日公開した動画を関連記事とともに紹介します。
 ダム完成を3月に控え、転換期にある地元では、まだ語れないことも沢山あるでしょう。ダム予定地とは離れた浅間山麓の北軽井沢の住民が動画の制作に関わったようです。

 フルバージョンだけでなく、短縮版にも使われている「縄文時代から続く豊かな森」と美しい沢の映像は、ダム堤の右岸側から注ぐ大栃沢周辺(川原湯地区)の自然景観を映し出しています。
写真右=大栃沢の森に棲むニホンカモシカ。
 温泉のある川原湯地区と対岸の川原畑地区の住民は、名勝・吾妻峡の自然との繋がりの中で昔から暮らしを営んできました。ダム堤によって分断されてしまった吾妻渓谷と川原湯温泉の移転代替地(打越代替地)を繋ぐ遊歩道は、すでに何年も前に出来上がっています。遊歩道が早くに開放され、代替地と渓谷を往来できるようになるといいと思います。

★YouTubeながのはらチャンネルより

★「ふるさと、八ッ場」(フルバージョン) 14分23秒
  

★「ふるさと、八ッ場」(短縮版) 3分3秒
  

◆2019年12月29日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASMDW5VJPMDWUHNB00T.html
ー沈む「ふるさと」の姿を捉えた動画制作ー

 八ツ場ダム(群馬県長野原町)の来春の完成を控え、町が地元のPR動画を制作した。題名は「ふるさと、八ツ場」。ダムに翻弄(ほんろう)され大きく変わった地元の姿を通じ、「ふるさととは何か」を静かに問いかける内容になっている。動画は来年1月6日から動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開予定だ。

 動画は約14分。約3分の短縮版もつくった。今年1月、町民ら4人でつくる動画制作チームに町が依頼。26日に完成した。ダム建設に伴って高台の造成地に移った川原湯地区を中心に、住民らへのインタビューや暮らしの様子、過去の写真などで構成されている。

 川原湯出身で、ダム対策課の降籏(ふるはた)大輝主任(34)は「町として、ダムができて万歳というだけの動画にはしたくなかった。多くの人々が悲しみや葛藤を抱える中で頑張っていることを伝えないと、見た人の心に刺さるものがない。ダム完成後に地元は忘れ去られてしまう」と趣旨を説明する。

 ダムの計画が浮上したのは1952年。ダムへの賛否をめぐって住民同士の対立が約30年続き、補償や地域振興策などを条件に地元がダム建設を受け入れた後も、工事の遅延や中断が相次いだ。特にこの20年で住民の転出が加速。高齢化も進み、地域のコミュニティーは衰退していった。

 制作チームは撮影や議論を重ね、次第に動画の内容を固めた。チームの1人で、北軽井沢地区でキャンプ場を営む福嶋誠さん(68)は「ふるさとをテーマに、ダムで失われたもの、残っているもの、残っていてほしいものは何か、という視点で撮影した」。

 動画では、400年前に始まったとされ、今も続く「湯かけ祭り」などの催事や、住民たちの暮らしの様子が入り混ざる。住民の対立や地域の衰退といった歴史も淡々と描かれる。川原湯で旅館を営む豊田拓司さん(68)が、ダムへと注ぐ沢の源流の森へと入っていく様子は、昔から変わらない地域の姿を象徴する場面だという。

 福嶋さんは「ダムで問題なのは地域のコミュニティーがずたずたになったこと。それをうまく復活させるのはとても難しいが、この動画が町内外の人々を結びつけるきっかけになればうれしい」と話す。

 動画の終盤、歌手の奇妙礼太郎さんがこの動画のために歌った童謡「故郷(ふるさと)」が流れる。「いつの日にか帰らん 山は青き故郷 水は清き故郷」。ダム対策課の降籏さんは「動画を見て、出て行った人たちが『戻ってきたい』と思ってくれたらいいですね」。(丹野宗丈)

◆2019年12月30日 上毛新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191230-00010001-jomo-l10
ー水没の古里に思い刻む 長野原町が映像作品「ふるさと、八ッ場」 YouTubeで6日から公開ー

 八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設に伴い移転を余儀なくされた人や地元住民に水没した古里を心に刻んでもらおうと、同町はダムの歴史や住民の思いをまとめた映像作品「ふるさと、八ッ場」を制作した。来年3月にダムの完成を控え、70年近くにも及んだダムと地域との歩みをたどる内容。町の委託を受けた制作チームが1年ほど前から構成や撮影、編集などの作業を進めてきた。6日昼ごろから、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開する。

◎ダムに翻弄された70年近い町の歴史 古里を記録に残す
 これまでの歩みを記録として後世に残すと同時に、地域再生へと動きだした八ツ場地域の今を伝える。複雑な思いを抱えながら町外に移転せざるを得なかった人たちに、古里に思いをはせてもらう狙いもある。

 八ツ場ダムの建設計画はカスリーン台風を契機に1952年に発表され、建設を巡り地元は70年近く翻弄(ほんろう)されてきた。住民が「絶対反対」「条件付き賛成」「中立」の立場に分かれ、地域社会は分断。長年の闘争の末に地元は受け入れを決めたが、2001年の用地補償基準調印を契機に水没地域の多くの住民が古里を去った。

 作品は、今年10月の台風19号で一夜にして満水近くまで水がたまったダムの姿から始まる。映像や写真で歴史を振り返り、ダム建設によって470世帯が移転を余儀なくされ、そのうちの半数以上が古里を去ったことを説明している。

 インタビューでは、移転者の「生活がどうなるだろうという不安が強かった」というコメントとともに、「過去の負の遺産よりも移った所を何とかしようと歩き出している」という地元に残った人たちの声を伝える。川原湯温泉の老舗旅館で働く若旦那、ダム見学会で案内する住民など、地域を盛り上げようと汗をかく人々の姿を取り上げ、山林や沢など今も残る自然の美しさを捉えた映像も盛り込んだ。

 使用する楽曲は、数々のCM曲で知られるシンガー・ソングライターの奇妙礼太郎さんに童謡「故郷(ふるさと)」のレコーディングを依頼。終盤の場面で流れ、地域の伝統行事や夏祭りなどのスライド写真とともに郷愁を誘う歌声が響く。

 写真家でクリエーティブディレクターの田淵章三さん(68)=嬬恋村=をはじめ、フリーライターや映像作家ら4人が制作に参加。田淵さんらは「長い歴史の中で、ダムを巡り多くの人の思いが行き交ってきた。さまざまな人の思いを、映像の力を借りてフラットな視点でつなぐことを心掛けた」と話している。

 ユーチューブの「ながのはらチャンネル」で公開する。14分半の動画と、約3分の短縮版がある。

◆2020年1月20日 NHK 
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200120/k10012251591000.html
ー八ッ場ダム 建設を記録した動画を公開 群馬 長野原町ー

 群馬県長野原町でこの春、八ッ場ダムが完成するのを前に、町は、ダム建設のこれまでの経緯や、現在の地元の様子を記録した動画を制作しました。

 この動画は長野原町が八ッ場ダムの完成を前に、水没したかつての町並みや現在の住民の暮らしぶりなどを後世に残そうと制作しました。

 動画には、ダムの建設のきっかけとなる昭和22年のカスリーン台風から町を二分する反対運動を経て、建設が始まるまでの経緯のほか建設中の様子などおよそ70年の歴史が収められています。

 また、代替地で営業を再開した川原湯温泉など現在のダム周辺の様子も盛り込まれていて、住民のインタビューとともに振り返ることができます。

 長野原町の萩原睦男町長は「ダム建設に翻弄された町の歴史を全国の人に知ってもらうとともに、私たちが、この地でこれからも頑張っていくということを発信していきたいです」と話していました。

 この動画は動画投稿サイト「YouTube」などで公開されています。