八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム今年度末に完成とのNHKニュースに関して

 昨日の夕方から夜にかけて、NHKが流したニュースをお知らせします。
 年末に発表された来年度の政府予算案に八ッ場ダムが入っていなかった時点で、予定通り八ッ場ダムが今年度末に完成となることは明らかでしたから、ニュースとして目新しい情報は特にありません。

 記事のタイトルと本文冒頭で繰り返し使われている「政権交代で建設が一時中断」という表現は、事実ではありません。2009年の政権交代の時点では、八ッ場ダムの建設は始まっておらず、ダム本体工事の入札段階でした。入札は凍結されたものの、ダム関連工事はしっかりと進められていました。本体工事現場を走るJRの付替え工事(関連工事の一つ)が完了したのは2014年秋、準備が整って八ッ場ダムの建設が始まったのは2015年です。

 八ッ場ダム事業の経過を辿れば、政権交代がダム事業を遅らせたわけではないことは明白です。3年余りの民主党政権にすべての責任を転嫁することで、八ッ場ダムの問題は今も有耶無耶にされたままです。
 八ッ場ダムの完成は、当初計画では2000年度の予定でした。19年間の遅れは事業の肥大化が原因です。国道とJRが通る交通の要衝に、470世帯の住民を移転させ、川原湯温泉の泉源を沈めて建設した八ッ場ダムは、事業費の9割以上が関連事業に費消されてきました。
 八ッ場ダムの事業費は全国のダム事業の中で断然トップです。そのため、ダムの規模が特別に大きいと誤解され、効果も高いと期待されますが、事業費の大きさはダムの規模や効果とは無関係です。社会条件、自然条件ともに不向きな土地に”首都圏の水がめ”との名目で、金に飽かせてダム事業を推進した結果です。
 
 NHKの記事では「総工費は国内のダムとしては過去最高の5320億円にまで膨れ上がり」とあります。5320億円にはダム建設費よりはるかに多額の道路等の工事費をはじめ、用地買収費、発掘調査費、環境影響調査費用などが含まれています。(参照ページ➡「八ッ場ダム事業の予算」

◆2020年1月6日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200105/k10012235921000.html
ー八ッ場ダム この春完成へ 政権交代で建設が一時中断ー

 政権交代で建設が一時中断するなどした群馬県長野原町の「八ッ場(やんば)ダム」が構想からおよそ70年を経てこの春、完成する見通しです。

「八ッ場ダム」は昭和22年のカスリーン台風で利根川の堤防が決壊し、およそ1100人が犠牲となったことから、東京や千葉、埼玉など1都5県の治水などの目的で国が建設を進めています。

昭和27年に建設構想が伝えられると、地元の長野原町では建設の是非をめぐって町を二分する対立が起こり、平成21年には当時の民主党政権が「コンクリートから人へ」をスローガンに建設を一時中断するなど、混乱が続きました。

この間、総工費は国内のダムとしては過去最高の5320億円にまで膨れ上がり、水没地域の住民の移住や鉄道や道路の付け替えなど「生活再建事業」も行われていますが、移住対象の住民470世帯のうち町内の代替地に残ったのはわずか96世帯で、かつて20軒余りあった地元の川原湯温泉の旅館も代替地で営業を再開したのは5軒にとどまっています。

国土交通省によりますと、ダムはことし3月に完成し、4月から運用が開始される見通しですが、住民の生活再建や町の活性化をどう進めるかが大きな課題となっています。

国土交通省八ッ場ダム工事事務所は「ダムの安全性の確認を最後まで気を抜かずに実施し、住民の生活再建事業もしっかり進めていきたい」としています。