昨年10月の台風19号以来、政府はダムの緊急放流を回避するため、洪水に備えて効率的に事前放流を行う方策を検討してきました。
一昨年の西日本豪雨では、愛媛県を流れる肱川上流の二つの国管理のダムが緊急放流を開始した後、8人の流域住民が犠牲となりました。台風19号では各地のダムが緊急放流を開始した直後に雨足が衰えたため、大事には至りませんでしたが、豪雨が長く続けば同じような災害が起こる可能性がありました。
今日のNHKニュースによれば、都市用水の供給や発電を目的としてダムに貯水する利水目的のダムでも事前放流を行い、利水の関係者に損失が出る場合は国土交通省が費用の一部を補填する制度を設けるとのことです。
事前放流は気象予報に基づいて行うことになりますが、気象予報の技術が発達してきたとはいえ、完全に予測することは不可能です。予報が空振りになることも多く、事前放流後に大雨が降らず、水位が戻らないたびに損失の費用を補填するとなると、かなりの金額になると思います。実際にどこまで可能なのでしょうか。
◆2020年1月6日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200106/k10012236091000.html
ー利水ダムでも事前放流 損失を国が一部補填へー
水害を防ごうと、洪水の調節機能が無いダムでも大雨の前に放流してもらい、貯水容量を増やそうという新たな取り組みです。発電や飲み水などに利用するためのダムは、水の量が戻らないと損失が出ることから、国土交通省は費用の一部を補填(ほてん)する制度を設けることにしています。
去年の台風19号を教訓に、国土交通省は大雨が予想された場合に、ダムにたまっている水の量を「事前放流」で減らし、その後に流れ込む水を受け止めて洪水を防ぐ対策を進めています。
「事前放流」は主に「多目的ダム」といわれる洪水調節の機能があるダムで行われていますが、水害が相次ぐ中、国土交通省は本来はこうした機能を持たない「利水ダム」でも進めることになりました。
発電や飲み水などへの利用が目的の「利水ダム」は全国に898ありますが、「事前放流」をしたあとに水量が戻らなかった場合、停電や断水につながって損失が出る可能性もあり、去年の10月現在で7つのダムでしか実施体制は整っていません。
このため、国土交通省は来年度から、損失が出た場合にかかる費用の一部を補填する制度を設けることになりました。
さらに構造的に事前放流できない「利水ダム」については、放流管の設置やゲートの改修にかかる費用の一部を補助する制度も設けることにしています。
国土交通省では今後も大規模な水害が予想される中、「利水ダム」を活用した洪水対策を進めていきたいとしています。