国交省、ダムの発電容量を洪水対策に活用検討

 ダムは「利水」のためにはダム湖に水を貯めなければならず、「治水」のためには洪水に備えて水位を下げなければなりません。逆の運用を必要とする「利水」と「治水」を一つのダムでこなすことは本来、無理があるのですが、ダムの事業費は複数の目的を持っている方が高額になるため、多くのダムが多目的ダムです。
 容量が小さいわが国のダムでは、豪雨のさなかにダム湖が短時間で満杯になり、緊急放流が実施されることが多くなっていますが、緊急放流はダム下流の水害を激化させる危険性があります。
 このため、国土交通省はダムの緊急放流を回避するための検討を行っているようです。
 以下の記事では、発電容量を洪水対策(治水)に活用する検討が取り上げられています。ダムの発電能力は発電容量だけではなく、有効落差によっても変わりますから、発電容量を他のダムに付け替えることは簡単ではないと思いますが、情報として紹介します。

◆2020年1月5日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54047350V00C20A1NN1000/
ー発電容量、別のダムに付け替え 洪水対策を強化ならー

 国土交通省は電力会社などが水力発電用として確保しているダムの容量を減らして洪水対策向けを増やした場合に、減らした分の発電容量を別のダムに付け替えることができる仕組みをつくる。電力会社の収益力を落とさずにダムの治水能力を強化する新たな制度によって、頻発する大雨災害に備える。

 全国のダムには洪水対策に使う治水や発電、農業向けの水をためるといった目的があるが、複数の用途を兼ねた多目的型が多い。ダムの建設には多くの予算と長い建設期間が必要で、建設に適した場所も限られる。そのため政府は既存のダムを有効活用して大雨への備えを強化する検討を進めている。

 発電の容量を減らして治水用に振り替える方法が大雨対策の有力な手段だが、課題がある。国が力を入れる再生エネルギーである水力発電の能力減少につながりかねないほか、電力会社の収益力の低下に直結する。

 治水用に振り向けた場合に金銭で補償する仕組みはあるが、電力会社にとっては金銭補償よりも発電容量を確保できるほうが長期的な収益機会の確保につながる。このため国交省は洪水対策で減らしたダムの発電容量を他のダムに付け替えることで「現物補償」する仕組みを検討する。

 具体的には電力会社などがAダムで発電容量を減らして治水用に振り向けた場合、かさ上げなどで貯水容量の拡大を計画しているBダムに同等の発電容量を付け替えられるようにする。水系が異なるダム同士での付け替えも認める。

 法令上は現在も不可能ではないが、具体的な手続きが明確ではなく実施例はなかった。国交省はガイドラインを定めて制度化し、利用を希望する事業者と協議を進める。