昨日の読売新聞全国版に八ッ場ダム予定地についての記事が載っていました。
三年前の前回参院選(2010年)では、前年に民主党政権が発足し、八ッ場ダム中止を政策に掲げたことから、それに反対する自民党が苦悩するダム予定地に関心を集める作戦をとり、”政争の具”として利用されましたが、今回の参院選では打ち捨てられています。
ダム予定地はダム反対運動が盛んだった1960~70年代も自民党支持者が多い地域で、現在もその状況は変わりません。
■2013年7月18日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2013/news2/20130717-OYT1T00072.htm
ー「八ッ場」論戦、影潜め…ダム建設予定地の今ー
民主党政権下で建設中止問題に揺れた八ッ場ダムの地元・群馬県長野原町。
自民党政権は5月に本体関連工事費の執行を決め、ダム建設事業は大きく前進した。だが、完成時期は依然不透明で、先行きに不安を抱く住民は多い。参院選の論戦が続く中、建設中止の余波が今なお残る、ダム建設予定地周辺を歩いてみた。
「今回は全然、選挙カーからの訴えを聞かないねえ。3年前は熱かったのになあ」。参院選中盤の12日、八ッ場ダムの完成後に水没する川原湯温泉で、旅館経営者がつぶやいた。
前回2010年の参院選は、09年の衆院選で政権を握った民主党がダム建設の中止を表明して以降、初めて行われた本格的な国政選挙だった。中止を掲げる民主党候補に対し、自民党候補は建設推進を訴えて全面対決。公示日に同温泉街で出陣式を開くなど、八ッ場ダム問題が大きな争点の一つと位置づけられた。
あれから3年。民主党は「予断なき検証」の結果、11年12月に建設継続に方針を転換。昨年12月には自民党が政権を奪還し、今年度当初予算に盛り込んだダム本体関連工事費の執行を決断した。移転先である代替地では、「やまた旅館」や土産物店「お福」が既に営業を始め、「山木館」など他の旅館や飲食店も移転の動きを加速させている。
◇「再建、ダム湖あってこそ」
前回参院選で自民党候補が出陣式の会場として使った老舗旅館「柏屋」があった場所は、建物が取り壊され、今は道路になっている。参院選直前の10年3月に「先行きが不透明になった」と宿泊営業を休止。移転先の代替地の造成が遅れ、営業再開の時期は未定という。豊田幹雄社長(46)は「いらだちもあるが、焦っても仕方ない」と言葉少なだ。
昨年3月、「客足が減った温泉街では商売ができない」と、食堂「旬」を閉めた水出耕一さん(58)は4月から、吾妻川の対岸の「道の駅 八ッ場ふるさと館」の食堂で働いている。
今後、代替地に自宅兼店舗を再建する予定だが、新たな温泉街と少し離れたところにあるため、多くの観光客に訪れてもらうには、ダムが完成し、ダム湖を見渡せる景観がカギになる。水出さんは「早く商売を再開して軌道に乗せたい」と熱望する。
10日には川原湯地区の代替地で、毎年1月に開かれる奇祭「湯かけ祭り」の会場になる共同浴場「王湯」の移転に向けた安全祈願祭が行われた。地域伝統の祭りも今後、代替地で受け継がれていく。祈願祭に出席した高山欣也町長は「川原湯温泉の本当の再建はダム湖あってこそ」と話した。
◇候補遊説ゼロ「忘れられた」の声
市民団体「八ッ場あしたの会」が今回の参院選の公示前に実施した候補者アンケートでは、民主党新人の加賀谷富士子氏と、共産党新人の店橋世津子氏が、ともに「建設するべきでない」と回答。諸派新人で幸福実現党員の安永陽氏は「建設するべきだ」とした。
自民党現職の山本一太氏は市民団体のアンケートに回答しなかったが、読売新聞のアンケートに「現政権で八ッ場ダム完成に向けて本体着工への流れを確かなものにする必要がある」と回答している。
だが、公示日から16日までに、長野原町で候補者本人が遊説した陣営はなく、八ッ場ダムを巡る論戦は活発とは言えない。
現温泉街で唯一営業を続けている飲食店「吾八寿司」の清水英之さん(67)は、新しい飲食店兼民宿を代替地に11月頃完成させる。だが、国道145号バイパスの開通で交通量が増えた対岸とを結ぶ「湖面1号橋」も建設途中で、「すぐに客が来るかどうか分からない」と不安げだ。ダム完成時期の見通しも立たない中、「どこの陣営の選挙カーも温泉街を通らない。『(八ッ場が)忘れられた』なんて話も出ている」と話す。(2013年7月18日10時24分 読売新聞)