朝日新聞が2月18日付の記事で、石木ダムの水源が必要だとしている佐世保市水道の2019年度の一日最大給水量が73,690㎥/日にとどまる見通しであると伝えています。
佐世保市の2018年度の一日最大給水量は77,968㎥/日でした。佐世保市は安定水源が77,000㎥/日しかないとして、石木ダムが必要だと主張し続けているのですが、2019年度の一日最大給水量はその77,000㎥/日の範囲に収まる見通しだということです。正しくは浄水場でのロスを考慮しなければなりませんが、そのロス率として実績値の5%分の水量を加えても約77000㎥/日になり、市が言う安定水源の範囲にほぼ収まります。
実際には市が不安定水源としている28,500㎥/日のうち、23,500㎥/日は安定水源であって、近年の渇水年である2007年度の渇水期間中も市が言う安定水源と同程度の取水の安定性がありました。これからは人口の減少に伴って、佐世保市水道の給水量がさらに減少していくことは確実です。給水量の減少で石木ダムの必要性がますます希薄になってきています。
◆2020年2月18日 朝日新聞西部本社
ー石木ダムなくても水足りる? 佐世保市、今年度は安定水源の範囲で確保へ 市「安定供給必要」 反対派「人口減考慮を」ー
長崎県川棚町に計画中の石木ダムで水不足を解消しようとしている同県佐世保市で2019年度、最も水が使われた日の水量(1日最大給水量)が、市が安定して確保できる水量内に収まる見通しになった。
人口減などの影響で水需要が減っているためで、国がダム事業を採択した1975年以降初めて。ダム反対派は「ダムをつくらなくても水は足りる」と訴えている。
市が1年を通じて確保できる水源(安定水源)は、六つのダムと近隣の三つの川からの計7万7千トン(1日あたり)。足りない分は、ほかの小さな川からと湧き水による水源(不安定水源)で補ってきた。最大で2万8500トン取水できるものの、季節で取水量にばらつきもでる。
市は、市民1人あたりの水使用量の増加や、造船企業の水使用量の振れ幅の大きさなどを折り込み、備えておくべき給水量を計11万7千トンとし、安定水源で不足する4万トンを石木ダムで確保する計画を立てた。
だが、20年ほど前は10万トン前後で推移していた1日最大給水量は、寒波による水道管破裂で大規模な漏水が生じた15年度を除くと、近年は減少傾向にある。
今年度は1月中旬までで給水量が最大だったのは、昨年8月1日の7万3690トン(速報値)。過去5年の1日最大給水量は、夏場か年末年始に集中しており、今年度末までにこれを上回る日はない見込みとなった。
1日あたりの平均給水量はさらに少な<、近年は7万トン前後で推移している。
こうした状況について佐世保市の担当者は、浄水場を経て給水する過程で水量が目減りする点を挙げ、「7万7千トン分がそのまま給水できるわけではない」と説明。
既存ダムの老朽化や大口企業の水需要の変動、地下水で異常が生じた時のリスクなどに対応するには、石木ダムの新設は不可欠との立場だ。市の担当者は「将来予測される水需要に対し、行政は安定供給する責任がある」と話す。
中村法道知事は「石木ダムは佐世保市の水不足対策として欠かせない。近年自然災害が頻発する中、治水面からも、県民の安全安心を確保するのは行政の使命だ」と訴える。
佐世保市の人口は約24万6千人だが、国の推計では20年後に20万人を割り込む見通し。水需要(料金徴収分)全体の6割は市民が使う生活用水が占めている。ダム反対派は「人口が減ればダムがなくても水は足りる。必要性を改めて検討し直すべきだ」と主張する。
長崎県が石木ダムの完成目標時期を3年先延ばししたことを受け、市は1月23日からダム事業について、水不足対策面からの再評価を始めた。3月末をめどに結論を出すことをめざしている。(小川直樹)